ジュニアからプロを見据えて、17歳で迎えた転機。「ケミストリーを起こしましょう」木下晴結【テニス】
木下晴結(WTAランキング807位、ITFジュニアランキング75位、大会時、以下同)は、17歳でジュニア選手だが、2024年オーストラリアンオープンジュニアをもって、ジュニア大会でのプレーを最後とし、現在はプロ選手が出場するITF(国際テニス連盟)主催の一般大会でのプレーに専念して、世界ランキングの上昇を目指している。
そんな中、3月下旬に、東京・日の出で開催されたITFサーキットの一つ、W15日の出大会(亜細亜大学国際テニストーナメント)の本戦にジュニア枠(ITFジュニアランキング100位以内に入っているジュニア選手は、W15大会の本戦でプレーする機会が得られる)で出場し、1回戦で、第7シードの西郷里奈(WTA426位)に1-6、0-6で敗れた。世界ランキング上昇に必要なWTAポイントを稼ぐには、今回のように得られる機会を確実に勝利につなげていかなければならない。一旦テニスコートに入ってしまえば、ジュニアだから、10代だから、そしてまだプロではないからという言い訳は全く通用しない勝負の世界なのだから……。
――まず、西郷さんとの1回戦を振り返ってみてどうですか。
木下: (第1セット自分のサービスゲームの)1ゲーム目は取れて、第2ゲームと第3ゲームですごく長いデュースがあって、そこを取りきれなかった。そこで流れが一気に変わってしまったかな。(西郷から)最初の3ゲームにフォアとバックをうまいこと散りばめられ、バックを狙われ出して、私がちょっと単調になってしまった。低い弾道のボールになって、(西郷が)上手にボールを配給してきて、自分の流れに持っていくことができなくて、ポイントは取れても、ゲームは取りきれない展開になった。
――今後、こういうW15大会(W15は、ITFサーキットで一番下のグレードの大会)の本戦のチャンスは、勝利に結び付けていかないといけないですよね。
木下: そうですね。今日(日の出)の1回戦の最初の3ゲームを私が取れていれば、違う展開になっていたかもしれません。そういう競った展開やポイントが多くなってくると思うので、自分のペースで頑張っていきたい。
――確認なのですが、昨シーズンに木下さんを悩ませた左ひざの状態は大丈夫ですか。
木下: はい。
――この春に木下さんは、練習拠点を、奥田裕介コーチのLYNX Tennis Academy(京都・京田辺)から、神尾米コーチと比嘉ジャイミー幸男コーチらがいるTeam Rise(東京・狛江、神奈川・海老名)に移すという大きな転機を迎えました。どうして環境を変える決断をしたのでしょうか。
木下: 半年ぐらい前から新しい環境や拠点を探すというか、考えていました。ここからグランドスラムで戦っていける選手になるために、そしてステップアップしていくために、新しい意見だったり、コーチングだったり、練習環境だったりを変えるタイミングなのかなと思い変えました。探していることを、(日本テニス協会)ナショナルのネクストジェン担当だった古庄(大二郎)さんに相談したんですけど、「米さんの所があるよ」と教えていただいて、2月14日から4日間トライアウトして決めました。
――決め手は何だったんですか。
木下: 米さんのアドバイスや言葉がすごく良かったですね。グランドスラムに向けてボワッと考えて、そこに向けて何をするべきか理解しているつもりだったんですけど、それがもっと明確になったというか、課題がいっぱい見えてきた。今まで奥田コーチとやっていた時よりも、技術的にも、メンタル面でも、試合への気持ちでもいっぱいあった。それで、まだまだ自分には伸びしろがいっぱいあるなって感じることができて、ここで教わりたいと思いました。
――神尾コーチは、元プロテニス選手で、世界ランキング最高24位、1995年には、オーストラリアンオープン、ウィンブルドン、USオープンで3回戦まで進みました。そういった実体験を持つ神尾コーチから、プロ転向を考えている木下さんは何を一番吸収したいのでしょうか。
木下:(現役時代の)米さんと私のプレースタイルは、結構違うと思うんですけど、米さんのプレーから学べることがいっぱいあると思う。選手としてグランドスラムで戦った人なので、選手目線ですごくアドバイスをしてくださる。あと、ジャイミーさんは、戦術のアドバイスがすごくて、私のプレーをすごく理解してくれている。お2人のアドバイスがすごい心強い。
――もともと木下さんは、センスが良いので、厳しいボールを難なく打ち返せる反面、最適打点に入る直前に必要な細かく素早いフットワークや、インパクト時にボールへ余すところ無くパワーを伝えるためのひざの曲げなど、基本的な動作が疎かになりがちです。もちろん試合ではいつも同じ体勢で打てるわけではありませんが、一球一球ショットのクオリティを高めて、それを維持し続けることが、ツアーレベルでの定着を目指す今後の成長に必要なことです。
だから、現役時代にベースラインから丁寧なテニスをして、グランドスラムをはじめワールドツアーで実績を残した神尾コーチのアドバイスによって、木下さんのオールラウンドプレーに化学反応が起こるのではという期待があるのですが、いかがですか。
木下: ケミストリーを起こしましょう(笑)。米さんもジャイミーさんも、(以前に)本玉(真唯)選手を見ていたし、グランドスラムまで引き上げたお2人なので、自分も頑張っていければ、そこ(グランドスラム)に近づけると思います。
――改めてなんですけど、ジュニア時代に一緒に戦った奥田コーチへのコメントをお願いします。
木下: 奥田コーチとは中学1年生から本格的に一緒にやり始めました。その時は、全国大会でも1回戦や2回戦で負けていました。その後、コロナ禍に(練習で)しっかり取り組んだことが結果につながった。中学3年生の時に試合が再開されるようになってから、全国大会で優勝できたり、ITFジュニア大会で優勝できたりしてちょっとずつランキングを上げることができた。そして、グランドスラムのジュニアで戦えた。その時に、トップの選手を間近で見れた経験も大きい。本当に感謝しています。
――今後、ジュニアではなく一般で、まずW15大会での優勝をしたいところですね。
木下:(日の出大会の前に)マレーシアに遠征してW15大会でベスト4に入りました。もちろん練習とトレーニングが必要なんですけど、試合が大事になってくると思うので、楽しみながら自分のやるべきことをやって、頑張っていきたいです。活動拠点が決まって、米さんとジャイミーさんと本格的な練習を始めて、大会へ準備していきたい。そして、頑張ってみて、(プロ転向は)自分で決めます。