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ハイテク企業がゴールドを買う時代、パランティアが金地金を購入

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

ビッグデータ分析を専門とするパランティア(Palantir)は8月12日の開示資料において、8月に5,070万ドル(約55.7億円)の金地金を購入したことを明らかにした。100オンス(1オンス=31.1グラム)の金地金を5,070万ドル相当額購入し、それを米北東部の第三者が保有する施設で管理し、いつでも引き出せる状況にあると報告している。

同社の最高執行責任者(COO)Shyam Sankar氏は、手元の現金を金(ゴールド)に置き換える動きについて、「未来のブラックスワン・イベントに備える必要がある」と報告している。「ブラックスワン・イベント」とは、確率は低いが発生すれば壊滅的な被害をもたらすような事例を指すが、具体的には新型コロナウイルスのパンデミック、それに対する政府の対応がもたらすリスクを指摘している。

同社は、サービスの支払い代価を金で支払うことも顧客に対して推奨するとして、従来のドルに加えて、暗号資産ビットコインや金についても、保有と決済という通貨的役割を担わせる姿勢を鮮明にしている。

こうした動きについて「世界観を反映している」(Shyam Sankar氏)とも指摘しているが、同社の共同創設者Joe Lonsdale氏は、今年5月に「米連邦準備制度理事会(FRB)は馬鹿が運営している」として、量的緩和政策で国債購入を拡大し続ける金融政策に警鐘を鳴らしていた。パンデミックによる混乱状況を背景に、政府が財政支出を拡大し続け、FRBが金融緩和策を強化し続けることが、将来の「ブラックスワン・イベント」を発生させる可能性に備える必要があると考えており、そのために通貨システムが崩壊した時のヘッジとしてビットコインや金(ゴールド)を選択している模様だ。

あくまでも「ブラックスワン・イベント」としているように、現時点で差し迫ったリスクが浮上しているとは考えていない模様だ。ただ同社が、営業の成果としてのドル資金を積み上げていくこと、ドルのみで決済を続けることにはリスクがあるとの見方を強めていることは確かであり、ヘッジ活動を本格化させている。

これと同様の動きは電気自動車大手テスラ(Tesla)も行っており、手元資金についてビットコインや金上場投資信託(ETF)、金地金などドル以外の運用も可能とする新戦略を採用し、実際にビットコインを購入している。同社も、ビットコインによる決済の可能性を探っている。

最先端のハイテク企業が、「最古の資産の一つである金(ゴールド)」と「最新の資産の一つであるビットコイン」を同時に購入する現象は興味深い。いずれもドルに対する不信感が共通するテーマだが、時代の変化に敏感な経営者がドルを金(ゴールド)やビットコインに交換する必要性を認識し始めていることは、ドルのステータス低下を象徴する動きかもしれない。米国民の間でも金貨の購入量が増えるといった動きが報告されているが、他の大手企業にも金(ゴールド)やビットコインを購入するドル離れ、もしくはドル保有のヘッジが広がるのかが注目される。

マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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