Yahoo!ニュース

オジュウチョウサン有馬鞍上は武豊騎手に決定!その調整過程は?

花岡貴子ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家
美浦トレセンの馬房でくつろぐオジュウチョウサン 筆者撮影

武豊騎手とのコンビが正式決定!

 30日、有馬記念でのオジュウチョウサンの鞍上が武豊騎手に決まったことが明らかになった。

 陣営は長山オーナーの希望もあって早い段階から武豊騎手サイドに騎乗依頼をかけていたが11月30日、待望の返事が舞い込んだ。

 「お返事をいただきました。続けて騎乗していただけてありがたいです」と和田正一郎調教師は話した。

 オジュウチョウサンは障害界では絶対的な実力を誇っているとはいえ、平地ではまだ1000万下特別を勝ったばかりの条件馬の身だ。大いに未知の魅力を秘めてると筆者も考えるが、客観的には明らかに"格下"。にもかかわらず、日本を代表する騎手である武豊騎手が騎乗するとはひじょうに面白い。平成最後の有馬記念、武豊騎手とオジュウチョウサンのコンビが大きな話題となるのは間違いない。

武豊騎乗で南武特別(1000万下)を勝ったオジュウチョウサン (提供:柴谷記好)
武豊騎乗で南武特別(1000万下)を勝ったオジュウチョウサン (提供:柴谷記好)

有馬記念ファン投票第2回中間発表では第3位にランクイン

 11月29日、有馬記念のファン投票第2回中間発表が公開された。オジュウチョウサンは69,127票を集め、第1回発表時に引き続き第3位に堂々ランクイン。第1位はレイデオロ、第2位は先日のジャパンカップを制し今年の牝馬三冠馬でもあるアーモンドアイとなっている。アーモンドアイ陣営は有馬記念への参戦意思はないため、出走を予定している馬の中でオジュウチョウサンは2番目に多い投票を集めているのが現状だ。

 2018年の有馬記念ファン投票の締め切りは12月2日に迫っており、最終結果の発表は12月6日が予定されている。今年は昨年と比べると第2回の段階で全体の有効投票数が1割強、上回っている。このペースで投票が進めば、最終的にはオジュウチョウサンへの投票は10万票を突破する勢いだ。

 オジュウチョウサンの馬主である株式会社チョウサンの代表取締役である長山尚義氏はこの現象を大いに喜んでいた。

「昨年の有馬記念では投票数が1278票で77位だった。今年の宝塚記念は4268票で43位。多くのファンの方々に投票していただけて本当にありがたいですね。」

 なお、有馬記念への第1回出馬登録は12月9日に行われる。ここで登録された馬たちの中からファン投票上位10頭が優先的に出走権を得る。2017年の有馬記念ファン投票では第10位がゴールドアクターで44085票、2016年の同順位はシュヴァルグランで45919票だった。仮に今年、ファン投票の上位10頭がすべて出馬登録してオジュウチョウサンの票がこれ以上伸びなかったとしても、第2回の投票数でじゅうぶんにボーダーラインを上回る。すでに有馬記念への出走は当確と言っていい。

 さらに、武豊騎手騎乗が正式発表されたとあって、さらに人気と話題性は高まると予想される。10万票はおろか、上位逆転の可能性すら出てきた。

 オジュウチョウサンはまだ平地競走では獲得賞金が少ないため、中央競馬のGIにはファン投票でなければ出走が叶わない可能性が極めて高い。今年の有馬記念にオジュウチョウサンが出走できたなら、まさにファンの後押しのおかげで念願が叶ったといえるだろう。

 2017年の有馬記念、優勝は武豊騎手騎乗のキタサンブラック。レース後はオーナーである北島三郎氏が歌う「まつり」が場内に響き渡った。北島氏は「まーつりだ、まつりだ、まつりだ、キタサンまつり~」と歌い、中山競馬場は拍手喝采で大いに沸いた。

 2018年はすでにファン投票の段階から”オジュウまつり"が繰り広げられている。12月23日、その締めくくりがどのようなものになるのか、興味が尽きない。

当のオジュウチョウサンはマイペースで調整中

 当のオジュウチョウサンは美浦トレーニングセンターで順調に調整が進められている。

「今朝(30日)は調教でクロスバー障害(木がX字にクロスしている障害)を飛びました。高さは10~20センチ程度でしょうか。順調にきています。」(和田正一郎師)

 前走の南武特別の後は疲労のため、続戦を回避して有馬記念に直行することになった。

「オジュウチョウサンの場合、レース後の疲労具合はそのときの体調によってさまざまです。障害時代も中山グランドジャンプのレース後に剥離骨折(右第1指骨剥離骨折)が判明したほどダメージがあったこともあれば、激しいレースをしてもさほど疲労を残さなかったときもありましたから。

 今回は南部特別の後にリフレッシュ放牧に出しています。有馬記念に向けて調整を進めていけるだけの状態にあると思います。」(和田正一郎師)

 30日朝、筆者は厩舎へ様子を見に行った。この日もテレビカメラなどが取材をしていたが、かなり慣れているようで我関せずとばかりに平然としていた。ステイゴールド産駒はマイペースでひじょうに気の強い馬が多いが、オジュウチョウサンもその傾向を強く引き継いでいるようだ。その我の強さが競馬でいいほうに出るか否かが大きな鍵となる。

 そのあたりをオジュウチョウサンの世話をしている担当厩務員の長沼昭利さんに聞いてみた。

「オジュウチョウサンは普段は気に入らないことがあると凄い馬力で自己主張するんです。でも、レースではいつも一生懸命。そういった気の強さがいいほうに出ていますね。そして、レースに向けて自分で体をつくっていくところもあります。」

 有馬記念まであと3週間。追い切りなど調教のピッチもあがっていくが、オジュウチョウサンは自分自身のペースで調整を続けていくに違いない。

長沼厩務員が与える牧草を食べるオジュウチョウサン 筆者撮影
長沼厩務員が与える牧草を食べるオジュウチョウサン 筆者撮影
ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家

競馬の主役は競走馬ですが、彼らは言葉を話せない。だからこそ、競走馬の知られぬ努力、ふと見せる優しさ、そして並外れた心身の強靭さなどの素晴らしさを伝えてたいです。ディープインパクト、ブエナビスタ、アグネスタキオン等数々の名馬に密着。栗東・美浦トレセン、海外等にいます。競艇・オートレースも含めた執筆歴:Number/夕刊フジ/週刊競馬ブック等。ライターの前職は汎用機SEだった縁で「Evernoteを使いこなす」等IT単行本を執筆。創作はドラマ脚本「史上最悪のデート(NTV)」、漫画原作「おっぱいジョッキー(PN:チャーリー☆正)」等も書くマルチライター。グッズのデザインやプロデュースもしてます。

花岡貴子の最近の記事