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日本人Amiが金、豪州代表炎上...パリ五輪で話題のブレイキン 本家NYヒップホップ識者の見解は?

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
パリオリンピックでダンスを披露するAmi(湯浅亜実)さん。(写真:松尾/アフロスポーツ)

今夏開催されたパリオリンピックで初めて正式競技となったブレイキン(Breaking)。日本人のBガール、Ami(湯浅亜実)さんが女子の部で金メダルを獲得し、大きな話題となった。

メダルに到達できなかった日本人選手も男女共にレベルが高いことが大会を通して証明された。日本をはじめ世界中でこの競技/ダンススポーツに大きな注目が集まっている。

70年代:ルーツのヒップホップカルチャーがNYで誕生

ストリートダンスであるブレイキンは、長らくブレイクダンスの名で知られてきた。ブレイクダンスはニューヨーク生まれのヒップホップ・カルチャーの一つだ。

ヒップホップ・カルチャーはニューヨークのブロンクスで1973年に誕生し、その後DJプレイ、ラップ(MC)、ブレイクダンス、グラフィティなどに派生、昇華していった。

ブレイクダンスの全盛期とされる80年代、ニューヨークのストリートでブレイクダンスをする若者 (撮影日は1984年5月11日)。
ブレイクダンスの全盛期とされる80年代、ニューヨークのストリートでブレイクダンスをする若者 (撮影日は1984年5月11日)。写真:Shutterstock/アフロ

90年代:国際競技として世界中で行われるように

1990年代、ブレイキンが国際競技として世界中で開催されるようになり、ヒップホップ界のみならず幅広く一般に広まったことが、オリンピックの資料に書かれている。2018年にブエノスアイレスで開催されたユースオリンピック夏季競技大会でユースオリンピックデビューを果たし、その盛り上がりと成功が評価されて今夏のパリ大会で正式な競技として採用された。

NYヒップホップ界はパリ五輪のブレイキンをどう見たか?

ヒップホップが生まれたNYのブロンクスには、ヒップホップの歴史を紹介する博物館、ザ・ヒップホップ・ミュージアム(THHM)がある。この界隈は近年再開発が進み、来年にはこの近所にTHHM系列のより大型の博物館がオープン予定だ。

これらの館長で自身も以前DJをしていたロッキー・ビュケーノ(Rocky Bucano)さんに、ブレイキンの世界的な認知度の高まりや各選手の活躍をどう見たのか、話を聞いた。

ブレイキンがパリオリンピックで競技としてデビューしました。ヒップホップカルチャーの一部がオリンピックという世界大会の場で注目されたことについてどう思いますか?

ビュケーノ氏:(ヒップホップ)カルチャーにとって記念すべき瞬間となりました。ヒップホップカルチャーの多様性とダイナミックな性質を象徴したものになり、アートフォーム(芸術形式)として、また世界を惹きつけるアピール力のあるスポーツとして認められたことを示したと思います。

オリンピックというスポーツの世界最大規模の舞台で行われたことで、ブレイキンの創造性、アスレティシズム(必要な運動資質)、表現力をアピールできました。歴史にブレイキンの地位を刻み、世界中の次世代のダンサーにインスピレーションを与えるものになったでしょう。

女子の部は、日本人のAmiが金メダルを取りました。これについてどう思いますか?

ビュケーノ氏:Amiの勝利はブレイキンの世界的な広がりと(彼女の)才能をブレイキン界に証明したものになりました。日本人ダンサーが金メダルを獲得したのを見て本当に素晴らしいと思いました。ブレイキンが国境や文化を超えたことを示したのですから。

彼女の勝利は日本や世界中の多くの若いダンサーに間違いなく刺激を与えました。そして情熱と専心があれば世界の舞台で偉業を成し遂げられることを証明しました。

パリオリンピックの準々決勝でダンスを披露するAmiこと湯浅亜実さん。
パリオリンピックの準々決勝でダンスを披露するAmiこと湯浅亜実さん。写真:松尾/アフロスポーツ

その一方で炎上もありました。オーストラリア代表のRaygunの競技が3試合すべて0点と酷評され、「カンガルーダンス」や「ほかの選手のチャンスを奪った」などと批判を浴びました。この件についてはどのような感想をお持ちでしょうか?

ビュケーノ氏:おっしゃる通り、Raygunのパフォーマンスは多くの批判を受けました。彼女は必要とされるアートフォーム(芸術形式)に値していなかったというのが大方の意見でした。

しかしながら、批評する人々に考えてもらいたいことがあります。彼女は確かに、オーストラリアのオリンピック代表として自国の運営委員会に選ばれました。これは大きな実績です。

オーストラリアの代表選手、Raygun(レイガン)ことレイチェル・ガンさん。
オーストラリアの代表選手、Raygun(レイガン)ことレイチェル・ガンさん。写真:ロイター/アフロ

次に、彼女はオーストラリアで(誰が見ても)最高のブレイカー(Bボーイ、Bガールの総称)だったでしょうか? その答えは私たちにはわかりません。ただし私がわかっていることは、当博物館の観点から申し上げると(このような競技の炎上は)ブレイキンの歴史の一部、進化の過程であると認識することが重要ではないかということです。パフォーマンスの称賛もしくは批判に関係なく、これらの瞬間を公平に記録することこそ、博物館としての我々の役割です。スキルや選考プロセスについての議論があったこと、世界の舞台でこのアートフォーム(芸術形式)や表現の複雑さを未来の世代へ伝えることが私は大切だと考えます。

(競技の炎上がきっかけとなり)ブレイキン界で人々をどのようにサポートし才能を育てるか、どうすれば選手が世界の舞台で輝く機会を得られるかについての会話や議論が巻き起こります。世論に関係なく、このカルチャーへのあらゆる貢献は歴史として保存していくべきだと考えます。

(インタビューはここまで)

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オリンピック後のRaygunさんについて22日付けの現地メディアによると、彼女のSNSのフォロワー数は4000人規模から今日の時点で20万人近くまで増加している。また最近は大手タレント事務所と契約を交わしたということだ。今後はタレントとして活躍する姿を見られるかもしれない。

(Interview and text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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