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「SHOGUN 将軍」エミー賞で最多ノミネート。真田広之、浅野忠信、平岳大も候補入り

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
右から、浅野忠信、真田広之、アンナ・サワイ、コズモ・ジャーヴィス(筆者撮影)

 日本の歴史ドラマが、プライムタイム・エミー賞を席巻した。西海岸時間17日午前に発表されたノミネーションで、「SHOGUN 将軍」はほかのどの作品よりも多い25個を獲得したのだ。以前から今回のフロントランナーと呼ばれていたが、このノミネーション結果によって、その立ち位置はより確かなものとなったといえる。

 作品が候補入りしたのは、ドラマシリーズ部門。もともとはミニシリーズとして製作されたが、大ヒットを受けて第2、第3シーズンが作られることになったため、この部門に移行した。ドラマシリーズ部門のほかの候補作は、「ザ・クラウン」、「フォールアウト」、「ギルデッド・エイジ -ニューヨーク黄金時代-」、「ザ・モーニングショー」、「Mr. & Mrs.スミス」、「Slow Horses」、「三体」。

 演技部門では、真田広之が主演男優部門(ドラマシリーズ)、アンナ・サワイが主演女優部門(ドラマシリーズ)、浅野忠信、平岳大が助演男優部門(ドラマシリーズ)、ネスター・カーボネルがゲスト俳優部門(ドラマシリーズ)で候補入りした。5人とも、プライムタイム・エミー賞に候補入りするのは初めて。発表前の予測ではコズモ・ジャーヴィスも可能性があるかと見られていたが、入らなかった。

 ほかに、脚本、監督、美術、撮影、編集、衣装、ヘア、メイク、キャスティング、メインタイトルデザイン、作曲、オリジナルメインテーマ曲、音響、スタントパフォーマンスの部門でもノミネートされている。

FXの歴史で最大のヒットになった「SHOGUN 将軍」(Courtesy of FX Networks)
FXの歴史で最大のヒットになった「SHOGUN 将軍」(Courtesy of FX Networks)

 ジェームズ・クラベルが書いた原作小説が映像化されたのは、これが2度目。1980年に放映された最初のバージョンは、14部門でプライムタイム・エミー賞にノミネートされ、作品(ミニシリーズ)、衣装、グラフィックデザインとタイトルシークエンスの部門で受賞。ただし、その頃は、配信はおろかケーブルチャンネルのオリジナル作品もなく、地上波3つが争い、部門の数も今よりずっと少なかった。

 真田広之がプロデューサーも兼任した「SHOGUN 将軍」は、アメリカのプロダクションながら、日本の専門家をカナダのロケ地まで呼び、ポストプロダクションにも2年をかけて、日本を忠実に描いた。今年2月に配信開始されると、製作したFXにとって、史上最大のヒットに。配信のアクセスチャートでも常に5位以内にとどまり、最終回が配信される週にはまた首位に返り咲いた。観た人の満足度は高く、Rottentomatoes.comによれば、批評家の99%、一般視聴者の91%が褒めている。

 アクション、バイオレンスもたっぷりあり、ドラマの部分でもスリリングなこのシリーズは、やはりプライムタイム・エミー賞で大活躍した「ゲーム・オブ・スローンズ」を思わせるともよく言われる。このプロジェクトについて聞いた時には「また作る必要はない」と思ったという「ゲーム・オブ・スローンズ」の原作者ジョージ・R・R・マーティンも、「作ってくれて良かった。新しいバージョンはすばらしい」と、Deadline.comに対して語った。「新たなバージョンは日本語の会話を英語字幕にして英語を話す人にもわかるようにしたなど、新旧のバージョンに違いはたくさんあるが、どちらもそれぞれに原作に忠実だ。原作者は喜ぶだろう。どちらの脚本家も、原作に敬意を払い、勝手なことをやろうとはしなかった。本当に優れた脚色だ」とも、マーティンは述べている。

 1994年に亡くなったクラベルは、エグゼクティブ・プロデューサーを務めた1980年のバージョンで、プライムタイム・エミー賞を受賞。新しいバージョンには、彼の娘ミカエラ・クラベルがエグゼクティブ・プロデューサーとしてたずさわっている。

 プライムタイム・エミー授賞式は、9月15日、西海岸時間午後5時、ロサンゼルスのピーコック・シアターにて開催。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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