太陽系が異常領域に突入し、地球環境が激変していた可能性が判明
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「200万年前の異常領域突入と気候変動」というテーマで動画をお送りします。
米国のボストン大学などの研究チームは、約200万年前に太陽系を包む太陽圏が、非常に高密度な星間雲と接触していた証拠を発見し、その成果を2024年6月に発表しました。
さらにこのような太陽系規模のマクロな環境変化が、地球の気候変動などにも大きく関連している可能性が示されています。
本記事ではその辺りの内容を解説していきます。
●太陽系を保護する太陽圏
太陽系の主である太陽は、太陽風と呼ばれる超高温のガスを超高速で常に放ち続けています。
太陽風は非常に高温であるために熱運動によって原子核と電子が電離してしまい、ガスがプラズマの状態になっています。
この太陽風は平均450km/s、温度100万度という状態で地球近傍を通過し、地球の磁気圏と衝突することで極地で見れる美しいオーロラの原因ともなっています。
ですがそんな太陽風でも太陽から離れるにつれて減速し、最終的に太陽から約100天文単位ほど離れた所まで届くと、太陽と別の恒星間にある星間物質と混ざりあうと考えられています。
最終的に太陽風の速度が0になり、プラズマと星間物質が混ざり合う境界面をヘリオポーズと呼びます。
そしてこのヘリオポーズの内側の太陽風が届く領域を「太陽圏(ヘリオスフィア)」と呼んでいます。
ボイジャー1号、2号は共に太陽圏を脱出しています。
太陽圏は太陽系惑星全てを用意に包み込む巨大な盾であり、宇宙由来の高エネルギーの放射線(宇宙線)から地球上の生命を守ってくれています。
多くの科学者は、この太陽圏の存在が地球上の生命の誕生と進化に不可欠であったと考えています。
●太陽圏の大変動が起きていた!?
米国のボストン大学などの研究チームは、約200万年前に太陽系全体が非常に高密度の星間雲に突入していた証拠を発見し、その成果を2024年6月に発表しています。
星間雲への突入によって巨大な太陽圏がなんと水星軌道の内側まで圧縮され、地球を含む全ての太陽系惑星が、太陽圏の保護から外れてしまっていた可能性が示されました。
研究チームは太陽系の位置や速度、周囲に存在する構造などの情報をもとに、高度なコンピュータシミュレーションを用いて太陽系の周囲の環境変化を遡って調べました。
太陽系は現在、直径300光年以上にわたって広がる、「局所泡」という星間物質の低密度領域の中心部付近に位置しています。
そして太陽系から約40~150光年離れたところには、低密度な局所泡の中でも例外的に高密度な「Local Ribbon of Cold Clouds(LRCC)」という雲の連なりが存在しています。
LRCCの端の部分に、中でも特に高密度の雲である「Local Lynx of Cold Clouds(LxCCs)」という雲があります。
LxCCsはLRCCの全質量の半分近くを占めます。
太陽圏の内部や地球の近くでは、1cm^3あたり3~10個の原子が存在するのに対し、LxCCs内部では、1cm^3あたり3000個以上もの原子が存在している可能性があるほどの高密度領域です。
研究の結果、少なくとも1.3%の確率で、かつてLxCCsに太陽圏が衝突した可能性があることが判明しました。
さらにLRCCは以前はもっと大きかったと考えられるため、この衝突確率はあくまで下限値となります。
LxCCsからの圧力は、太陽圏を数百年~百万年という期間にわたって大幅に縮小させた可能性があるそうです。
具体的に太陽圏の半径は約0.2天文単位、つまり地球と太陽の間の距離の約5分の1にまで収縮していた可能性があります。
●地球や生命への影響とその証拠
太陽系が高密度なLxCCsを横切る際、地球は太陽圏という巨大な盾の外にむき出しになり、高密度の水素原子が大量に降り注ぐことになります。
また水素原子だけでなく、超新星爆発で吹き飛んだ重元素や放射性元素を含む星間物質にもさらされることになります。
これらの粒子は地球大気の化学的な性質を変え、雲の形成に影響を与え、オゾン層を縮小させ、気候を冷却した可能性が高いです。
このような理論的な予想には、その正しさを裏付ける実際の証拠も存在しています。
LxCCsと太陽圏が衝突していた可能性があるのと同じ時期に、地球の海、南極の氷、さらには月でも、鉄60とプルトニウム244の同位体の増加を示す地質学的証拠が発見されているのです。
これらの同位体は地球では生成されないため、これらの同位体の特定の時期における増加は、その時期に何らかの理由で宇宙からの放射線が増加していたことを示唆しています。
またLxCCsと太陽圏が衝突していたと考えられる時期は、かつて地球の気温が大きく低下していた氷河期とも一致し、これも大量の粒子と地球大気の衝突により気温低下を招くという理論的な予測を裏付けています。
太陽系を超えた巨大な宇宙スケールの構造が地球上の生命に影響を与えることはとても珍しいですが、今回の研究成果は、それらの関係性を示す貴重なものと言えます。
しかし今のところ、太陽圏と高密度な星間雲の接触が本当に地球の環境と生命に影響を及ぼしたのか否かについて、まだ断定的なことは言えません。
研究チームは今後、さらに過去にさかのぼって、太陽系が高密度の星間雲と交わった他の時期を見つけ、それらが氷河期と一致するかどうかを調べる予定です。