一般週刊誌の部数動向をさぐる(2021年1~3月)
すき間時間を埋める最良の存在だった一般週刊誌は、スマートフォンの普及に伴い売上の厳しさに直面している。その実情はいかなるものか、一般週刊誌における販売動向を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から確認する。
次に示すのは一般週刊誌のジャンルに該当する雑誌の、直近にあたる2021年1~3月における、前年同期比の部数動向。写真を中心に記事を展開する、いわゆる写真週刊誌も含む。印刷物は季節により販売数の変化が大きく生じるため、季節変動を考慮しなくてもよい前年同期比の方が、すう勢を確認するのには適している。
今期では幸いにも脱落・追加雑誌は無し。以前は印刷証明付き部数を収録している雑誌に限定しているとはいえ、最低でも10万部の印刷部数は確保されていたが、まず「サンデー毎日」が10万部を割り込んでしまい、その状態が今期も継続している。そして「AERA」も「10万部割れ倶楽部」の仲間入りに。特に「AERA」の衰亡ぶりは著しく、部数がほぼ一直線に減っている状態だった。
「AERA」で2020年1~3月期に生じたイレギュラー的な部数の増加は、草彅剛氏や堂本光一氏のような人気タレントを相次ぎ表紙に抜擢した結果の可能性が高い。また某連載が始まったからとの指摘もある。この「勝利の方程式」をつかんだ「AERA」としてはその勢いを強めて10万部回復を目指したかったところもあるのだろうが、次の期は失速。それ以降はもみ合いを含みながら下落の動きにある。今後は再びこれまでのような漸減の流れとなるのだろうか。
それ以外の雑誌は、1年前までは10万部割れはかろうじて生じていなかった。ところが3期前に「SPA!」が10万部を大きく割り込み、「10万部割れ倶楽部」へ入会してしまう。今期は前期からさらに部数を減らし、節目の10万部との距離は開く一方。
グラフから見た部数動向の限りでは、10万部を最終防衛ライン的な位置づけとして、ギリギリながらも部数を維持していた感じではあった。しかし2020年1~3月期にたがが外れたかのように部数を落とし、それ以降は10万部未満で低迷する状態が続いている。新型コロナウイルス流行での外出自粛などの流れで、週刊誌の動きが鈍くなったのが原因かもしれない。
前年同期比でプラス領域にあるのは「週刊大衆」のみで、それ以外は全誌がマイナス(「週刊現代」は厳密にはマイナス0.03082%)。誤差領域(5%幅)を超えての下げ幅を示しているのはそのうち7誌。あまりよい状況とは言い難い。かつては新聞同様、電車やバスなどの通勤・通学時の合間には欠かせない存在だった一般週刊誌も、その需要は確実にスマートフォンなどに奪われ、肩身の狭い想いをし、さらに継続的なプレッシャーを受けていると見てよいだろう。
ただし少なくない雑誌では同時に電子雑誌版も発行しており、その値は今件では勘案されていないため、そちらに読者を奪われている(=雑誌としてのコンテンツ力・訴求力は失われていない)可能性は否定できない。
昨今何かと世間を騒がせている「週刊文春」だが、前年同期比でマイナス2.6%、参考までに前期比を算出するとマイナス1.7%。絶対部数の多さに支えられてはいるものの、中長期的な低迷感の中にあることは否定できない。
部数は踊り場を挟みながらゆるやかな下落傾向が継続している。「週刊文春」の昨今の動向はある意味、低迷のテコ入れ的な活動との解釈もできよう。
大きく落ち込んだ雑誌のラインアップを再確認すると、「AERA」「サンデー毎日」「週刊朝日」「週刊新潮」といった、男性向けの大衆誌、あるいはゴシップ系雑誌が多分におよぶ。似通った内容に個性を出しにくくなってしまったのか、あるいは対象年齢階層の趣向そのものに変化が生じているのかもしれない。
また写真を記事構成のメインとする「FLASH」「FRIDAY」も減少度合いが著しい。速報性が高くビジュアルも豊富なスマートフォン経由のニュースの方が、価値は高いとの認識による結果だろうか。
繰り返しになるが、今件はあくまでも「印刷」証明付き部数のため、電子版も並列配信している雑誌の場合、そちらに読者の一部を奪われていることになる。その結果、印刷証明付き部数が雑誌全体の勢いをそのまま反映するわけではないことに注意が必要。とはいえ、紙媒体としての雑誌のすう勢には違いなく、部数が減っているのも事実ではある。
■関連記事:
【月あたりの週刊誌や雑誌、書籍の購入実情をさぐる(2021年1月分)】
※印刷証明付き部数
該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数ではない。売れ残り、返本されたものも含む。
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