ちゃおがトップの46万部…少女向けコミック誌の部数動向をさぐる
トップはちゃお独走継続
加速度的に展開される技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は少年・男性向け雑誌ばかりでなく、少女・女性向けのにも及んでいる。今回はその雑誌のうち、少女向けコミック誌(少女向けのコンセプトで発刊されている雑誌群。大よそ未成年でも高校生ぐらいまでが対象)について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(該当四半期の1号あたりの平均印刷部数。印刷数が証明されたもので、出版社の自称・公称部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む)から、実情をさぐる。
まずは少女向けコミック誌の現状。最新データは2017年第1四半期(1~3月)のもの。
少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「別冊マーガレット」に2.5倍ほどの差をつけており、少年コミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な群を抜く部数の多さ。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年4月から6月分の値以降継続している。以前話題に登ったATM型貯金箱をはじめ、魅力的な付録の数々も、同誌をトップの座に位置し続けさせている大きな要因となっているようだ。
第2位の「りぼん」と第3位の「別冊マーガレット」は僅差で競っており、何かイレギュラーな動きがあればすぐにでも順位は入れ替わりそうな状態。実際、前四半期では順位は逆だった。そしてその後に「花とゆめ」「LaLa」「Sho-Comi」「なかよし」がほぼ同数で続き、その他諸々が後を追いかけている。
プラスは2誌…四半期変移
次に前四半期と直近四半期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。
プラス領域は2誌、「ちゃお」と「Sho-Comi」。プラスマイナスゼロは「別冊フレンド」と「ベツコミ」でこれは前四半期から変わらず。それ以外はマイナス圏。誤差の5.0%幅を超えている下げ幅は「別冊マーガレット」。
マイナス1.8%と小幅なマイナスを計上した「別冊花とゆめ」だが、かつて同誌をけん引していた「ガラスの仮面」は今なお連載を再開していない。
同誌は美内すずえ先生の「ガラスの仮面」の再開に伴い部数の盛り上がりを見せたものの、ほどなく休載。そしてその後現在に至るまで連載再開には至っていない(2012年7月号分が最後の掲載。また単行本の第50巻も今なお発売は未定のまま)。他方面への展開は積極的になされており、たとえばアニメ版の「ガラスの仮面」エイケン版がブルーレイ化して特設ページも開設されたり、スピンアウト作のアニメ「3ねんDぐみガラスの仮面」の新作アニメが劇場上映されるなど多様な動きが見られるのだが、肝心の本編に動きは無い。
多方面の展開はありがたい話には違いないが、本編の連載再開を待ち望んでいるファンは複雑な心境に違いない。
1誌以外はすべてマイナス…前年同期比
続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。
プラスを計上したのは皆無。プラスマイナスゼロは「別冊フレンド」。それ以外はすべてマイナスで、誤差領域を超えた下げ幅を示しているのは9誌。特に「Cheese!」「ザ・マーガレット」「ベツコミ」「別冊マーガレット」「ちゃお」「マーガレット」と複数誌が1割を超えた下げ幅を示している。とりわけ「ザ・マーガレット」はここしばらくの間、大きな減退傾向の中にあり、良い状況とは言い難い。
起死回生の打開策が必要な状況には違いない。
1年ほど前には複数の雑誌で見受けられた「おそ松さん」特需だが、今四半期では残り香すら覚えることなく、通常運転に戻っている。
「進撃の巨人」や「おそ松さん」のような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせるようになれば、それこそ全盛期の週刊少年ジャンプのような活性化も不可能では無い。そのためには幅広い層へ訴えかける、購入動機をかきたてる作品との連動、あるいは発掘、さらには創生が欠かせまい。
なお他ジャンルの記事でも言及しているが、今件の各値はあくまでも印刷証明付き部数であり、紙媒体としての展開動向。コミック誌の内容が電子化されて対価が支払われた上でダウンロード販売された場合、その値は反映されない。そして電子雑誌の利用性向も確実に上昇している。そのため、印刷証明部数が減少を続けても、各雑誌、コミックそのものの需要がそれと連動する形で減退しているとは限らないことは認識しておくべきである。もっとも少女向けコミック誌の場合、その方面の展開はあまり見聞きしないのが実情ではあるのだが。
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