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朝ドラ『舞いあがれ!』で“ウサギ殺し”が話題。スミちゃんの特性からドラマの素晴らしさが

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

NHK連続ドラマ小説『舞いあがれ!』の第11話は、長崎県の五島列島で療養していた主人公の舞ちゃんが、東大阪の実家に戻ってきたところから始まりました。

舞ちゃんは、以前はウサギの世話をする飼育係になっていましたが、長崎に行っていたのでウサギの世話ができませんでした。ひさしぶりに登校して大好きだったウサギのスミちゃんを見に行きましたが、姿がありません。そのわけを同じ飼育係の久留美ちゃんから、聞きました。

久留美ちゃんは、夏の暑い日に、スミちゃんを連れて帰りましたが、自宅で死んでしましったのです。それで友だちたちが、久留美ちゃんのことを“ウサギ殺し”と呼び仲間はずれにしていたのです。

朝ドラで”ウサギ殺し”という言葉を聞いて、ネットではザワつきました。今日は、ウサギの習性を解説して、久留美ちゃんとその行動を見ていきましょう。

スミちゃんはどんなウサギだったか?

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イメージ写真写真:アフロ

スミちゃんは、どんなウサギだったのかを見ていきましょう。

舞ちゃんは東大阪で実家にいた頃は、体が弱く体育などは見学していました。そんな舞ちゃんの心のよりどころが、ウサギ小屋だったのです。

小学校のウサギ小屋には、ウサギが数羽いてスミちゃんだけが黒でした。そして、いつも隅にいる子だったのです。隅にいるので、舞ちゃんは、心配して草などをスミちゃんにあげていました。

ドラマを見る限りスミちゃんは、あまり表情を出さないおとなしいウサギとして描かれています。ウサギは、イヌやネコより感情を表さないのですが、それでもよりおとなしかったです。ドラマでも舞ちゃんが、「ウサギは自分の病気を人に隠す」と内容で本で勉強してこのように言っていますが、まさにその通りです。

このような描写からスミちゃんは、虚弱体質だったのかもしれません。

久留美ちゃんが家に連れて帰る行動とは?

久留美ちゃんは、暑そうにしていたのでスミちゃんを家に連れて帰っています。この行動は、ウサギのことをよく理解しています。ウサギは、暑さに弱い動物です。

それに、スミちゃんは、黒の毛なので白い毛の子より体温があがりやすく熱中症になりやすいのです。

ウサギは暑さに弱い

熱中症にならなくても、暑さによるストレスから夏バテのようになり、食欲がなくなってしまうこともあります。食べないと胃腸うっ滞になって悪化すると、命に関わることも。

ウサギの最適な温度と湿度は?

ウサギの飼育に適した温度は18~24度、湿度は40~60%といわれています。暑いときでも室温は25度以下が理想です。28~29度を超えると体温調節が難しくなり、30度を超えると熱中症の危険が高まります。

久留美ちゃんは“ウサギ殺し”ではなく”看取った”すばらしい人

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イメージ写真写真:イメージマート

久留美ちゃんは、暑いとウサギが弱ることを理解して、家に連れて帰った本当に優しい機転の利く子です。

ドラマのウサギ小屋は、エアコンなどがないので、久留美ちゃんが連れて帰らないと、誰にも看取られず息を引き取っていたのではないでしょうか。久留美ちゃんは、看取りができたすばらしい人です。

学校で、ウサギにこのようなことが起きれば、ウサギの習性である感情を読み取りにくいということ知り、エサを一日食べないだけ命にかかわること、そして暑さに弱いなどを先生などが説明してあげなければいけません。

そうすれば、このような子どもたちの誤解で”ウサギ殺し”などと言われることはなくなるのでしょう。

小学生たちは、どうしてもウサギを擬人化しがちですが、ウサギはウサギの特性があり、そしてイヌやネコとも違う種なので、その習性を知ることは大切です。

NHK連続ドラマ小説『舞いあがれ!』では、ウサギの習性を舞ちゃんが勉強してお母さんとの会話になっています。ドラマを見ていて、急にスミちゃんが死んだように見えますが、スミちゃんを黒のウサギにして、そしておとなしく隅にいるという伏線があったので、実によくウサギの習性を理解しているなと思ってドラマを見ていました。

来年は、ウサギ年で飼う人も増えるかもしれませんが、ウサギはイヌとネコとは違っているので、そんなに懐かず、気持ちを読み取りにくいことを覚えておいてください。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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