長期金利が1%を超えてきた。これはいつ以来?
24日午後、長期金利が一段と上昇。10年債の利回りは一時1.005%と2012年4月以来およそ12年ぶりに節目の1%を超えた。
手元のデータによると、2012年4月15日に10年債利回りは1.015%まで上昇したあとに1%を割り込んでいた。それ以来の1%超えということになる。
当時の様子を振り返ってみたい。
2012年1月25日のFOMCでFRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%とした。これは実質的なインフレ目標値の設定とも言える。
2月9日のイングランド銀行のMPCでは、資産買い取りプログラムの規模を500億ポンド拡大することを決めた。その際に購入対象となる償還期限を変更し、従来よりも3~7年物の購入を増やすことにした
これら一連の動き、なかでもFRBによる物価目標の設定と時間軸の長期化は日銀にも大きな影響を与えた。
2月14日の日銀の金融政策決定会合では、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率として「中長期的な物価安定の目途」を示すことを決定。
「中長期的な物価安定の目途」は、消費者物価指数の前年比上昇率で2%以下のプラス領域にあるとある程度幅を持って示すこととした。その上で、「当面は1%を目途(ゴール)」として、金融政策運営において目指す物価上昇率を明確にした。
2012年7月にECBのドラギ総裁はユーロ存続のために必要な、いかなる措置も取る用意があると表明しました。9月6日のECB理事会では、市場から国債を買い取る新たな対策を正式に決定した。ECB理事会では償還期間1~3年の国債を無制限で買い入れることを決定した。このOMTは利用されることはなかったものの、その存在が市場の動揺を抑える役割を果たした。
これを受け、欧州の信用不安は次第に後退してくることになる。すでに米国株式市場は2009年あたりをボトムに回復基調となっていた。
ドル円も80円を割り込んだあたりで、ボトムを付けにきた。
欧州の信用不安の後退のタイミングで出てきたのがいわゆるアベノミクスである。これがひとつのきっかけになって円買いドル売りのカバーが入り、ドル円は上昇。この円安もあったが、すでに回復していた米国株式市場のあとを追うようにして東京株式市場も回復してきた。
アベノミクスが円安・株高のきっかけとなったことはたしかながら、円安・株高の原動力は欧州の信用不安の後退によって、リスク回避の反動が起きたこと。いわばショートカバーによるものであった。
このため、もしアベノミクスがなかったとしても、このショートカバーは多少、勢いは違えど起きていたこともたしかであろう。
2013年4月4日に日銀は量的・質的金融緩和、いわゆる異次元緩和の導入を決定した。この日の10年債は0.425%と過去最低利回りを更新していた。果たしてこれは本当に必要なものであったのであろうか。