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アトピー性皮膚炎の子どもは学校を休みがち?睡眠の質にも悪影響!大規模国際調査で判明

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(提供:イメージマート)

【アトピー性皮膚炎が子どもたちに与える影響とは?】

アトピー性皮膚炎は、世界中の子どもたちに大きな影響を与えている皮膚疾患です。最近行われた18カ国7465人の小児患者を対象とした大規模な国際調査「EPI-CARE」によると、アトピー性皮膚炎の有病率は国によって2.7~20.1%と幅がありました。

この調査では、アトピー性皮膚炎の重症度と、かゆみ、皮膚の痛み、睡眠の質、生活の質(QOL)、欠席日数、他のアレルギー疾患の合併率などの関連性が調べられました。その結果、重症度が高いほど、これらの項目への悪影響が大きいことが分かりました。

例えば、中等症から重症の患者では、かゆみと皮膚の痛みの程度が高く、睡眠の質が低下していました。また、生活の質(QOL)も大きく損なわれていました。睡眠不足は子どもの健康や発達に悪影響を及ぼす可能性があるため、きちんとした治療を受けることが重要だと考えられます。

【学校生活にも大きな支障が】

アトピー性皮膚炎の子どもは、学校を休む日数が多い傾向にあることも明らかになりました。過去1カ月の欠席日数は、軽症で1.4~7.5日、中等症で3.2~10.4日、重症では2.0~25.3日と、重症になるほど増加しました。

学校を休みがちになることで、学習の遅れや友人関係への悪影響が懸念されます。欠席日数が多いと、将来的な学業達成度にも影響を及ぼす可能性が指摘されています。早期から適切な治療を受け、症状をコントロールすることが大切です。

【アレルギー疾患の合併にも注意が必要】

また、アトピー性皮膚炎の子どもの92.5%に、何らかのアレルギー疾患(アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、ぜん息など)の合併が認められました。特に、アレルギー性鼻炎やぜん息との関連性が高いことが分かっています。

アレルギー疾患を合併することで、症状がさらに悪化したり、治療が難しくなったりする可能性があります。定期的な検査を受け、合併症の有無を確認することが重要です。

以上のように、アトピー性皮膚炎は子どもたちの日常生活に大きな影響を与えています。症状が重いほどその影響は大きくなるため、早期発見と適切な治療が何より大切です。また、保護者や学校、医療機関が連携し、子どもたちを支えていくことが求められます。

参考文献:

Br J Dermatol. 2024 May 17;190(6):846-857. doi: 10.1093/bjd/ljad449.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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