U18野球日本代表、アジアナンバーワンの座を逃す! 来年のW杯への課題とは?
野球のU18アジア選手権は、日本代表が地元・台湾(チャイニーズタイペイ)に決勝で敗れ、アジア一の座を逃した。6年前の日本開催(タイトル写真)では3位だったが、2大会ぶりの優勝はならなかった。今回も実質的に、韓国との三つ巴の優勝争いとなったが、スーパーラウンドで台湾に勝ち、韓国には敗れたものの、得失点差率で決勝進出を決めていた。(試合は7回制、日本代表は全員3年生)
先制も報徳の今朝丸が逆転許す
決勝の相手の台湾には、スーパーラウンドの初戦で、1-0で勝っていたが、わずか1安打に抑えられていた。初回に4番・石塚裕惺(埼玉・花咲徳栄)の適時打で先制。先発の今朝丸裕喜(兵庫・報徳学園)が制球に苦しみながらも1、2回を切り抜ける。しかし3回、台湾の3番打者に適時三塁打を浴びて追いつかれると、雨が強まり中断に入った。再開してすぐ、4番の大きな右翼犠飛で逆転されると、ここから台湾のペースに引きずり込まれる。
相手を上回る安打数も、与四死球で崩れる
日本代表もよく攻めたが、逆転直後に出てきた台湾の二番手右腕が150キロ超の速球とキレのいいスライダーで、決定打を許さない。日本代表のどの投手よりも、総合力が高かったように感じた。安打数は日本の10に対し、台湾は7だったが、与四死球は台湾の1に対し、日本は10。これが6-1という5点差につながった。これにはいくつかの背景があって、まず、慣れないマウンド、しかも雨の影響で思ったように制球できなかったこと。あとは明らかに球審とストライクゾーンが合っていなかった。
球審のストライクゾーンがバラバラ
最後に投げた田崎颯士(沖縄・興南)は、ど真ん中をボールと判定されて明らかに動揺していた。いきなり3四球で満塁とし、適時打などで決定的な2点を失ったが、国際試合にしては明らかにレベルの低い球審だった。外に甘いとか、低めを取らないとか、審判によって傾向があるのは仕方ない。代表レベルの投手なら、試合中でもある程度の修正や対応はできるというものだが、この審判はストライクゾーンがあまりにバラバラだった。いくら情報を共有しても、ここまでバラバラだと、打者も含め、戸惑うしかない。台湾の投手に四球が少なかったのは、日本の打者がボール球に手を出したり、とらえきれなかったりしたからだ。それだけ台湾の投手は球の質が高かった。
京都国際の中崎と相模の藤田が投げられず
日本は前日の韓国戦で、甲子園の優勝投手・中崎琉生(京都国際)が先発して5回を無失点と好投した。U18の国際試合では厳格な球数制限があり、中崎と、前々日の台湾戦で5回途中まで無失点に抑えた藤田琉生(神奈川・東海大相模)の看板左腕二枚が、決勝で登板できない状況だった。つまり、短期間で集中的に試合を行う国際大会で最も重要なのは、投手のマネジメントと言えるのだ。
昨年の前田に匹敵する投手は不在
昨年、日本はワールドカップ(W杯)で初優勝した。前田悠伍(大阪桐蔭~ソフトバンク)という絶対的エースがいて、彼を軸にローテーションを組んでいたが、今回の代表チームに、前田に匹敵するほどの傑出した投手はいない。調子の良かった中崎を使ってしまったため、決勝では今朝丸の早期降板が響いた形だ。代表チームの投手は原則8人。来年は、夏の甲子園出場選手にこだわらない投手陣を形成し、役割も明確にしてもらいたい。前田は昨夏、甲子園出場を逃したが、W杯に向けて調整に余念がなかったと聞く。
新バットの利点を活かし、打撃技術向上を
あとはやはり、今大会も打てなかった。台湾との2試合いずれも1点しか取れていないし、韓国には完封負けした。中継を見ていても台湾の投手の球威に、力負けしていた印象だ。来年に向けては、今春から導入された「低反発バット」の利点を活かしてもらいたい。スイートスポット面が小さい新バットは木製に近く、芯に当たらないと飛ばない。芯でとらえる技術が上がると、木製バットへの対応も、以前よりたやすくなるはずだ。来年はW杯が開催される。連覇を狙う日本にとっては、甲子園出場選手にこだわらない柔軟な選手構成と、綿密な準備、特に投手のマネジメントが課題となる。