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盤外で苦手なきのこは避けても、盤上では何でも受けて立つ藤井聡太七段(17歳)終盤で最速の寄せに出る

松本博文将棋ライター
(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 7月2日。愛知県豊橋市において第61期王位戦七番勝負第1局▲藤井聡太七段(17歳)-△木村一基王位(47歳)戦、2日目の対局がおこなわれています。

 両者ともに時間に余裕をもっての終盤戦となりました。

 藤井七段の王手に応じながら、木村王位は上部に逃げていきます。

「中段玉寄せづらし」

 という言葉もあります。

 59手目、藤井七段は着実にと金を寄せていきます。持ち時間8時間のうち、残り時間は藤井3時間9分、木村3時間6分と、ほぼ同じです。

 木村玉はわずかに小康を得た形になりました。手番が回ってきたのをいかして、どう藤井玉に迫るか。木村王位は1時間以上考え、12時30分、昼食休憩に入りました。

 将棋めし研究家の小笠原輝さんによれば、木村王位が1日目で頼んだ海鮮丼は、木村王位にとっては勝率はややよくないそうです。興味ある方は、小笠原さんが管理するサイト「将棋棋士の食事とおやつ」でご確認ください。

 本日の昼食、藤井七段は冷やしきしめん御膳だそうです。

 きしめんと言えば、愛知県の名物です。そのセットできのこが抜かれているのが藤井流。盤上ではどんな戦型でも堂々と受けて立つ藤井七段ですが、盤外では苦手なきのこと対峙することは、徹底的に避けられています。藤井七段は関西将棋での対局ではレストラン「イレブン」のバターライスをよく注文しますが、マッシュルームは抜かれています。

 一方で、きしめんのそばで存在感を示す海老が目をひきます。

 6月29日、東京・将棋会館でおこなわれた棋聖戦第2局。藤井七段は「鰻 渋谷 松川」のメニューの中から海老天重を頼んでいました。

 翌日、藤井効果で同店では海老天重の注文が殺到したようです。筆者が同店を訪れた夜には、すでに売り切れになっていました。

 今から3年前、藤井四段(当時)が連勝中、将棋会館近隣の飲食店から出前で頼んだものがことごとく売り切れになった現象を思い出しました。

 13時30分、対局再開。木村王位は藤井陣一段目の馬を一つ寄せました。休憩をはさんで1時間8分を使い、じりっと金取りににじり寄ります。

 ここで藤井七段は手堅く自陣に金を打って受けるかどうか。それでも藤井七段がよさそうに見えます。

 藤井七段はぴったり1時間考え、銀を打って木村玉に王手をかけました。藤井七段は最速の寄せを目指しているようです。

 15時前の段階では69手目まで進みました。7三にできた藤井七段のと金は4二にまでに寄せられ、3二の地点にまで逃げてきた木村玉に王手をかけています。

 一手を争うきわどい終盤戦。もしこの順でギリギリ勝ちだとしたら、本局の藤井七段もまた強すぎた、ということになりそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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