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人力だけで南極点を目指した、スコット隊の軌跡

華盛頓Webライター
credit:pixabay

20世紀初頭、多くの探検家が極地への到達を目指していました。

その中でスコット隊は南極点到達を目指していたのです。

この記事では南極点を目指したスコット隊とアムンゼン隊の軌跡について紹介していきます。

最初から最後まで犬ソリを駆使していたアムンゼン、犬ソリを嫌っていたスコット

スコット隊が南緯80度23分のデポ地点に集合したのは、ようやく冬が終わり温暖な気候の中でした。

そんな中で聞こえてきた噂に、彼らは少なからずショックを受けることとなります——「アムンセン隊は犬を食べているらしい」と。

しかし、彼らもまた動物愛護団体が称賛するような旅をしているわけではありませんでした。

馬たちは既に寒さに耐えかね、体力の限界に達していたのです。

11月24日、ついに最初の馬が倒れました

射殺されたその肉は犬たちの食料となり、さらに隊員たちはその余韻で体を温める羽目に陥りました。

その翌日、スコットは人員を減らすために先遣隊の4人のうち2人を基地へ帰還させたものの、14人のキャラバンは南進を続けました。

馬たちは次々に倒れ、そのたびに射殺され、12月4日には5頭目が命を落とします。

マグサも尽き、9日にはついに残った5頭全てが射殺され、スコットは無念のうちに動力ソリと馬という輸送手段を失ったのです

この旅は初めから苦境の連続でした。

馬は草食動物で、南極に牧草があるわけもなく、全てのエサを船で運ぶ必要があったのです。

さらに動力ソリも故障し、初期の計画は早々に破綻します。

スコット隊は無理に無理を重ねる中で、持てる物資と貴重な体力をみすみす失っていきました

12月10日、ついに氷床を抜け南極大陸本土へと歩を進めたスコットは、同行していた犬ゾリ隊を全員帰還させ、人力だけで南極点を目指しました。

彼はなぜこの氷河越えの前に犬を送り返してしまったのか。

答えは、彼が犬を全く信用していなかったことにあります。

10年前の探検で、同行した犬たちが全滅した記憶が消えず、「犬は使えない」という先入観を持ち続けたままでした

スコットの信念は「最終的に頼れるのは人力だけ」というものだったのです。

かつてシャクルトンがほぼ人力ソリで南極点近くまで到達したことも彼の自信を支えていたものの、シャクルトンとスコットは実はまるで異なる人物でした。

シャクルトンは常識にとらわれない大胆さと機知を備え、実用性を重んじたものの、スコットは生真面目なエリート軍人であり、規律と精神論がその行動を支配していたのです。

一方のアムンセン隊は、その驚くべき計画性で順調な進軍を見せていました

彼らのスキーもソリも冬の間に改良され、防寒具やテントは完璧で、隊員の健康も良好、食料も豊富だったのです

そして12月14日、ついに彼らは南極点に到達したのです。

地球の南端にノルウェー国旗が翻るのを眺め、アムンセンはただ一つ静かに呟きました。

「夢に見たのは北極点だったのに、今、私は北極点から最も遠い場所にいる。世の中は、思うようにいかぬものだな……」

参考文献

アプスレイ・チェリー=ガラード著・加納一郎訳(1993)「世界最悪の旅 悲運のスコット南極探検隊」朝日文庫

Webライター

歴史能力検定2級の華盛頓です。以前の大学では経済史と経済学史を学んでおり、現在は別の大学で考古学と西洋史を学んでいます。面白くてわかりやすい記事を執筆していきます。

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