バイデン大統領、イスラエルでホロコースト生存者と面会「忘れてはいけない歴史と記憶を次世代に継承」
バイデン大統領「この悲惨な歴史と生存者の体験や記憶を次世代に必ず伝えていかなければいけません」
2022年7月に米国のバイデン大統領が初めてイスラエルを訪問した。そしてイスラエルのエルサレムにある国立のホロコースト博物館であるヤド・バシェムを訪問してホロコーストの生存者2人とも対面した。ヤド・バシェムは第2次大戦時にナチスドイツによって殺害されたユダヤ人らを追悼するための国立記念館。
バイデン大統領が面会したのは1927年にチェコスロバキアで生まれたギタ・サイコヴィッチ氏と1935年にポーランドで生まれたレナ・クイント氏。ギタ・サイコヴィッチ氏はゲットーに収容されアウシュビッツ絶滅収容所で強制労働に従事していたが辛うじて生き延びることができた。レナ・クイント氏は1942年に母と兄弟とともにトレブリンカ絶滅収容所に移送され、母と兄弟はそこで殺害されて、父とブーヘンヴァルト強制収容所に移送されて、父はそこで殺害されて、彼女は一人でベルゲン・ベルゼン強制収容所に移送されて辛うじて生き延びることができた。
バイデン大統領はヤド・バシェムで「ホロコーストの歴史を決して忘れてはいけません。そしてこの悲惨な歴史と生存者の体験や記憶を次世代に必ず伝えていかなければいけません。そのためにもホロコーストの教育は重要です」と強調していた。
進むホロコーストの記憶のデジタル化
戦後75年以上が経ち、ホロコースト生存者らの高齢化が進み、記憶も体力も衰退しており、当時の様子や真実を伝えられる人は近い将来にゼロになる。ホロコースト生存者は現在、世界で約24万人いる。現在、世界中の多くのホロコースト博物館、大学、ユダヤ機関がホロコースト生存者らの証言をデジタル化して後世に伝えようとしている。ホロコーストの当時の記憶と経験を自ら証言できる生存者らがいなくなると、「ホロコーストはなかった」という"ホロコースト否定論"が世界中に蔓延することによって「ホロコーストはなかった」という虚構がいつの間にか事実になってしまいかねない。いわゆる歴史修正主義だ。そのようなことをヤド・バシェム、ホロコースト博物館やユダヤ機関は懸念して、ホロコースト生存者が元気なうちに1つでも多くの経験や記憶を語ってもらいデジタル化している。
ヤド・バシェムではホロコーストの記憶と歴史を次世代に継承するためのデジタル化に積極的である。ヤド・バシェムには約480万人のホロコースト犠牲者のデータベースがあり、それらは世界中からネット経由で閲覧することもできる。約600万人のユダヤ人が殺害されたが、残りの120万人は名前が判明していない。第2次世界大戦が終結して75年以上が経過し、ホロコースト生存者の高齢化が進んできた。生存者が心身ともに健康なうちにホロコースト時代の経験や記憶を証言として動画で録画してネットで世界中から視聴してもらう「記憶のデジタル化」が進められている。
またヤド・バシェムでは、ホロコースト当時の写真のデジタル化とオンラインでの展示も進めている。現在のようにスマホで誰もが簡単に撮影できる時代ではなかった。カメラも貴重なものだった。1枚1枚の写真が全てのユダヤ人の思い出が詰まっている。さらにヤド・バシェムではホロコースト犠牲者の身元確認とデータベース構築も進められているが、ナチスドイツによって完全に消失したユダヤ人集落などもあり、全ての犠牲者の名前や写真を収集してデータベースに格納することは難航している。また写真だけは辛うじて残っているが、それが誰の写真なのか全くわからないものも多い。
バイデン大統領が面会したギタ・サイコヴィッチ氏とレナ・クイント氏の証言動画や残っている貴重な当時の写真や動画なども、もちろんデジタル化されており世界中に公開されている。デジタル化されたホロコースト生存者らの証言は欧米やイスラエルではホロコースト教育の授業でも多く活用されている。
戦後70年以上が経過しホロコースト生存者らの高齢化も進み、多くの人が他界してしまった。ヤド・バシェムなど世界各地のホロコースト博物館では、当時の記憶や経験を後世に伝えようとしてホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化は積極的に進められている。
▼レナ・クイント氏のホロコーストの証言動画
▼ヤド・バシェムを訪問したバイデン大統領のツイート
▼バイデン大統領のメッセージを伝えるヤド・バシェムのツイート