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クリスマスにサプライズ集結したフォルティウス近江谷杏菜らアスリート集団「HEROs」、その正体とは?

竹田聡一郎スポーツライター
「いつかカーリングもみんなでしてみたいですね」と近江谷杏菜 (前列右:筆者撮影)

 フォルティウスの近江谷杏菜は12月25日、東京都足立区の児童養護施設クリスマス・ヴィレッジを訪問。多競技のアスリートと共に企画したクリスマスイベントを、子どもたちと楽しんだ。

 この取り組みは「HEROs Sportsmanship for the future」というアスリートの社会貢献活動を推進し社会課題解決の輪を広げる活動が原点にある。その一環として、アスリート自身が競技を通して得た経験や技術を社会で広く活かす可能性を探る「HEROs ACADEMIA」という独自プログラムが派生し、近江谷はこれを2021年に修了している。

「アカデミアに入ったことで自分が限られた世界に身を置いていたことに気づきましたし、そこで出会った仲間はアスリートという共通項があっても、競技が違えば物事の捉え方がまったく違ったりする。お互いの話をして情報交換するだけでも生まれるものは大きいですし、相談もしやすい環境でもあります」

 仲間にそう感謝したこの日も、現役や引退といった線引き、あるいは競技の枠にとらわれずに社会貢献活動に関心を持つ、近江谷とアカデミアで同期だったサッカー元日本代表の橋本英郎、元プロ野球選手の生山裕人、広島東洋カープの磯村嘉孝、競泳元日本代表の竹村幸、同じくアカデミア卒業生であるマウンテンランニングの宮地藤雄、2020東京パラリンピックでカヌー日本代表の立田寛之、パラ水泳日本代表の久保大樹、元世界王者の柔道家中村美里ら9名の有志アスリートが集った。

 近江谷が「受講を終え自分たちからアクションを起こしていかないといけないよねとみんなで話していて」と願いを口にしていたように、参加者が企画段階からアイデアを出し合い、約1年かけて実現した。そのファーストステップとも言えるイベントでもあった。

 2時間という限られた時間ながらユニバーサルモルックチーム「Team Kids”7”House」(チームきずなハウス)も参加したモルックでの交流と対戦を経て、ケーキでクリスマスを祝い、プレゼント贈呈するといった充実した内容で小学生を中心とした参加者からは「すごく楽しかったので、また来てほしい」という声があった。

 今後について近江谷は「今回はみんなのスケジュールを合わせていたら奇跡的にクリスマスに実現できました」と笑いながらも、「みんなそれぞれの競技や活動があるので、例えば私だったら北海道で、磯くん(磯村)だったら広島で、というふうに地域や規模で無理をせず、今回のノウハウを活かして、みんなの意見を聴きながら各地でいろいろなことに挑戦できればと思っています」

 イベントの最後に近江谷は子どもたちに向けて「私はカーリングという競技を楽しいからずっと続けることができました。みんなも自分の好きなことや楽しいことを見つけて頑張って欲しいです」というメッセージを残した。

 走ったり泳いだり投げたり打ったりに長けた9人のサンタクロースはそれぞれのフィールドに戻っていった。ストーンを氷上で滑らせたり履いたりが上手な杏菜サンタもこの日のうちに札幌に戻ったが、29日から長野県御代田町で開催される「ニューイヤーカーリング in 御代田 2024」出場のために中2日で羽田にトンボ帰りだ。タイトなスケジュールだが「単純に楽しかったし、私もエネルギーをもらいました。競技面でも確実にプラスになると思います」と笑顔を見せた。日本選手権まであと1ヶ月だ。

【HEROs Sportsmanship for the future/HEROs ACADEMIA】

アスリートの社会貢献活動を推進することでスポーツでつながる多くの人の関心などを広げてゆく、アスリートの声を集めて始まった活動「HEROs Sportsmanship for the future」。その柱のひとつとして、アスリートとして自分と社会を知り仲間と共に目標を明確化していくアスリートのための講義型プログラム「HEROs ACADEMIA」がある。今回のイベントは、スポーツチームやアスリート自身が依頼したスポーツ用具やグッズなどを販売するオークションサービス「HATTRICK」を利用し、その収益で運営された。

【近江谷杏菜】

おおみや・あんな。1989年10月12日、北海道北見市常呂町生まれ。2010年には「チーム青森」の一員として20歳でバンクーバー五輪に出場するなど長くカーリング界を牽引しているトップカーラーのひとり。現在はフォルティウスでプレーし、2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を目指す。インスタグラムは(@annaohmiya12)、加茂川啓明電機勤務。

今季はこれまで国内外で日本女子チームとしては最多のツアー3勝を挙げている。写真中央はチームメイトの小野寺佳歩、右は小林未奈 (C)どうぎんカーリングクラシック
今季はこれまで国内外で日本女子チームとしては最多のツアー3勝を挙げている。写真中央はチームメイトの小野寺佳歩、右は小林未奈 (C)どうぎんカーリングクラシック

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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