ガソリン価格は4週連続の下落、10週間ぶりの150円台へ
資源エネルギー庁が10月9日に発表した石油製品価格調査によると、10月7日時点でのレギュラーガソリン店頭小売価格(全国平均)は1リットル当りで前週比-1.0円の159.0円となっている。8月5日の週から9週連続で160円台での取引になっていたが、これで4週連続の値下がりとなり、9月9日時点の161.4円をピークに、累計で2.4円下落した形になる。7月29日の週以来の安値を更新している。
その背景としては、9月以降のドル建て原油価格が急落した影響が大きいと考えている。指標となるウェスト・テキサス・インターメディエイト(WTI)原油先物相場は、8月28日の1バレル=112.24ドルをピークに、10月8日終値時点では103.49ドルまで急落しており、原油調達コスト環境の改善が、そのまま製品価格に対する値下げ圧力に直結している。
現在のドル建て価格は概ね過去100日移動平均(102.52ドル)と同水準にあり、北アフリカ・中東情勢の緊迫化を背景とした地政学的リスクの織り込みが一服している影響が、国内ガソリン価格にも徐々に波及し始めているとの理解で良いだろう。少なくとも、原油価格が天井知らずの高騰となるリスクが限定されていることで、海外原油安が素直に国内ガソリン価格にも反映され易い環境になっている。
また、米予算協議、連邦債務上限問題の先行き不透明感から、為替市場でドル安(円高)圧力が強くなっていることも、ガソリン価格に対しては下押し圧力になる。東京商品取引所(TOCOM)のガソリン先物相場は、当限ベースで7月1日以来の安値を更新しており、概ね5~6月の価格レンジ上限に到達している。
国内需給面では、行楽需要が一服した影響も大きい。石油連盟発表の原油・石油製品供給統計を元に10月5日まで4週間の推定出荷量を計算すると99万1,608キロリットルとなっており、1ヶ月前(9月7日まで4週間)の116万0,306キロリットルと比較すると14.5%の減少になっている。依然として比較的高いレベルの出荷が行われているが、末端需要の鈍化も国内ガソリン価格の上値を圧迫している。
■じり安傾向が続くも、大幅な値下がりはない
もっとも、ここからガソリン価格が大幅に値下がりするのかは疑問視している。既に地政学的リスクのプレミアム剥落の動きに一服感が強くなっており、当面は上値の重い展開が続き易いものの、9月のような値崩れ的な動きまでは想定していない。
目先は突発的な供給トラブルの可能性が後退しているとは言え、北アフリカ・中東情勢が依然として不安定な状態にあることが確認された意味は大きく、今後も一定のリスクプレミアムが原油価格には加算された状態が続く可能性が高い。
加えて、先進国の過剰在庫が夏場に解消されていること、世界的な景気回復傾向を背景に石油需要見通しの上方修正が活発化していることなどを考慮すれば、原油価格がエジプト内乱前の価格水準に回帰するとは考えづらい。10月は北半球で製油所向け原油需要が鈍化するが、その後は暖房油需要シーズンが控える中、WTI原油相場は95~100ドル水準を下値目処として想定している。
仮に米議会が予算協議で合意に達すれば、今度は為替相場がドル高(円安)方向に振れ易いことにも注意が必要である。当面の国内ガソリン価格はじり安傾向となり易いものの、今年上期の150~155円をコアとしたレンジに回帰する可能性は低いと考えている。160円台回復の可能性も含めて、現行価格水準で高止まる展開を想定している。