政府支出総額比率で主要国軍事費の動向をながめ見る(2024年公開版)
国際的な軍事研究機関のストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)の公開資料を基に、主要国の軍事費を政府支出の総額比率の視点から確認する。各国の軍事費の実情を推し量ることができよう。
そのSIPRIの発表によると直近となる2023年における各国軍事費(米ドル換算)で、トップはアメリカ合衆国、次いで中国、そしてロシアの順となっている。
これは単純に米ドル換算して比較したもの。国によって内情が異なることから、単純な額面比較だけでは問題ではないかとの指摘もある。そこでそれぞれの国の政府支出総額、つまり国家予算に占める軍事費の比率を算出する。
次に示すのは2023年時点における米ドル換算による軍事費上位10か国の、それぞれの国の政府支出総額に占める軍事費の割合。例えば日本は2.8%とあるので、国家予算全体の2.8%が軍事費にあてられていることになる。また過去値を用い、精査可能な範囲での過去の比率推移を折れ線グラフ化する。
それぞれの国の各年における経済状況や周辺環境にも大きく影響するため、一概にどの程度が望ましい値なのかに関する基準値はない。経済力に見合わない軍事費負担が国そのものの経済を不安定化させることも事実。
一方、同じ軍事費でも政府支出全体が増加すれば比率は下がる。政府支出総額に対する比率の低下は、単に軍縮・予算不足による削減以外に、経済力の伸張を意味する場合もある。
中東諸国は概して比率が高い傾向がある。そのため額面そのものも大きく、トップテン入りしたサウジアラビアのために、グラフ全体の縦軸の最高値を引き上げる必要が生じている。それでもかつて示していたピーク時の4割超えと比べ、直近では24.0%にまで落ち着いている。
中国は漸減傾向にあるが、これは軍事費が減っているのではなく、軍事費の増加以上に政府支出額が増えていることによるもの。インドも同様の理由により、漸減の動きにある。もっとも中国の場合、公開されている軍事費に関して内情が推し量りにくいため、推定値となっているのも要因だろう。
他方、ロシアとウクライナは2022年以降大きな伸びを示しており、特にウクライナは同一グラフ内にある他国とけた違いの数字を示したため、サウジアラビア以上にグラフ全体の縦軸の最高値を引き上げる必要が生じてしまっている。直近2023年では58.2%。政府支出総額の6割近くが軍事費に充てられている状況なのが実情ではある。
■関連記事:
【上位は米中日の順…主要国のGDPの実情を確認する(2021年版)】
【強い懸念を示す周辺国…領土紛争における東南アジア諸国の対中軍事衝突への懸念度】
(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。