コロナ経済対策、遅い、手間がかかる、対象がわかりにくい。
コロナ経済対策の概要が判明した。家計への緊急支援策は、「遅い」「手間がかかる」「対象範囲がわかりにくい」という3つの大きな問題がある。
対策では、1世帯あたり30万円を現金で支給するが、対象者は、「世帯主の月収がコロナ発生前より減少した低所得者世帯と、半分以上減った高所得者を除く世帯」ときわめてわかりにくい。今年2~6月のいずれかの月収で判断するということだが、市町村の窓口に出かけ収入減を証明する書類を提出して自己申告するので、手間がかかる上、そこでの感染リスクは少なくない。5月中に手元に届くということだが、おそらくずれ込むだろう。
欧米の多くの国では、番号により把握している税務情報を給付につなげ、政府の方で困窮者(要件該当者)を見つけ出し、一人一人の銀行口座に直接振り込む制度が存在している。
米国トランプ政権は、それを活用して、一人当たり1200ドルの一時金を、2,3週間以内に口座に振り込む。金額は、単身の場合所得が7万5千ドルを超えるところから逓減し、9万9千ドルでなくなるという所得に応じた給付となっている。
英国でも、税と社会保障を一体運営する制度であるユニバーサルクレジットの下で、ジョンソン政権は、困窮者やフリーランスに直接給付をする。個人は申告をしなくても振り込まれるというのが原則となっている。
翻って、わが国ではどうか。消費税5%から8%への引上げ時に、住民税非課税世帯に一人当たり1万5千円の給付を行い、10%引上げ時には住民税非課税の年金生活者に月額5千円の支援金を配った。このときのシステムを改修し、番号を利用して「一定の所得基準」により対象を絞ることは可能である。
15年に導入されたマイナンバーだが、効果的な社会保障給付のために活用された例はない。今回は、番号法の使用範囲を拡充し、デジタル時代の社会インフラにふさわしいセーフティーネットを構築するチャンスである。これからも予想される緊急事態への備えでもあるし、国民が番号制度の意義を改めて考える絶好な機会となる。