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『ゼンカイジャー』でおてんばヒロインを演じる森日菜美 「朝から元気を届けるのは向いてると思います」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/松下茜 ヘア&メイク/進藤美華 スタイング/yu sugiura

スーパー戦隊シリーズ45作目の記念作品『機界戦隊ゼンカイジャー』に9話から登場し、人気を呼んでいる森日菜美。清純派女優の系譜で知られる東宝芸能に所属し、同世代の浜辺美波や上白石萌音・萌歌とは別の道を探って水着グラビアに取り組み、『FRIDAY』や『週刊プレイボーイ』などで表紙も飾るように。そして、歴史あるスーパー戦隊シリーズにも、東宝芸能からは初めての出演となった。独自の路線が実を結び、おてんばなキャラクターを生き生きと演じている。

自分が表紙の雑誌はちょっと前に出します(笑)

――去年の秋に取材させてもらったときはグラビアに出始めでしたが、今や表紙もバンバン飾るようになりました。

 コンビニで自分が表紙にドーンと出た雑誌を見ると、めちゃめちゃうれしいです。あまり声を大にして言えませんけど、後ろにあると埋もれちゃうので、人目を気にしながら、ちょっとだけ前に置いて目立つようにしています(笑)。

――「ちょっとだけ」って、むしろ謙虚ですね(笑)。グラビアの面白みも、より感じるようになりました?

 そうですね。グラビアデビューさせていただいた頃は、元気で明るいところを全面に出していこうと思っていたんですけど、最近は20歳になったこともあって、落ち着いたカットでひと味違う森日菜美も見せられたらと。でも、ついハシャいでしまうので(笑)、現場に入ったら、あまりしゃべらないように心掛けています。

――『ゼンカイジャー』の現場でも、カメラが回る前から役のフリントになっているんですか?

 それもちょっと意識しています。ただ、スタッフさんに「普段もあまり変わらないね。フリントそのままだね」と言っていただけて。だから、ありのまま素で演じている感じです。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

口が悪くてもかわいらしく見えるように

1人の人間と4人の機械生命体という異色の構成のゼンカイジャー。そこに現れたのが、並行世界を自由に旅する世界海賊=界賊のゾックス・ゴールドツイカー。そのおてんばな妹、フリントを森が演じている。今作は戦隊に人間の女性ヒロインがいなかっただけに、その美形ぶりも相まって特撮ファンを沸き立たせた。

――日菜美さん自身、自分とフリントは近いと思っていて?

 そう思います。フリントは元気印の明るい子で、そこは私と似ていますし、人一倍アニキや弟たちのことを想っているのは、尊敬する部分でもあります。

――フリントの「そんなんじゃねえから!」とか口が悪いところは(笑)?

 口調は私と違いますけど、それすらかわいらしく思ってもらえるようにしたいです。今までのスーパー戦隊に、口の悪い女の子はあまりいなかったらしくて。世界海賊、略して“界賊”という役で、小さい子どもたちには「怖い」と言われることもあるのを、払拭したいです。

――フリントは頭も良いですね。

 もう本当に頭脳が天才! フリントが学校にいたら、テストは絶対に全国1位です。設計図を見て、そのままパクるとか、暗記パンがないとできませんよね(笑)。それほどのレベルの頭脳なので、私とは違います。

――でも、日菜美さんにも知的な印象はあります。

 私は頑張って日に日にコツコツやって、やっと辿り着くタイプなので。フリントは稀に見る天才肌で、あの才能に憧れます。

――12話ではフリントがパンケーキの生地に絵を描いて、敵の攻撃を解説するシーンがありました。

 チョコペンで図解しました。あの撮影では事件があって。お湯に浸けていたチョコペンが温まりすぎて、最初持ったらビシューッといっぱい出ちゃって、絵が描けなかったんです(笑)。それから練習して描いたんですけど、いろいろあって楽しいです。

『機界戦隊ゼンカイジャー』より (C)2021 テレビ朝日・東映AG・東映
『機界戦隊ゼンカイジャー』より (C)2021 テレビ朝日・東映AG・東映

オーディションから“全力全開”でいきました

――もともと特撮やスーパー戦隊シリーズに馴染みはあったんですか?

 正直、あまり観たことはありませんでした。幼少期は『プリキュア』などで育ってきたので。特撮のオーディションも3~4回受けたんですけど、ご縁がありませんでした。でも、自分では特撮に向いていると思っていて。日曜の朝から元気をお届けする番組なので、私の素と合う気がしていたんです。『ゼンカイジャー』で念願が叶いました。

――『ゼンカイジャー』のオーディションでは、それまでと違う準備もしたんですか?

 以前のオーディションではあまり考えず、その場に応じてやろうと臨んでいたんですね。今回は事前にやるべきことを踏まえて、周りの人に相談したりして挑みました。

――「やるべきこと」というのは?

 些細なことですけど、最初のあいさつをしっかりするとか、名前を人一倍大きな声で言うとか。“全力全開”がテーマですから(笑)。それから、特撮を観てないと観てる人に負けると思ったので、Huluでサブスクに入りました。スーパー戦隊シリーズは3歳くらいからターゲットにしていて、私の年代だと『(魔法戦隊)マジレンジャー』なんですね。その辺の作品を観て、オーディションでもお話しました。

――スーパー戦隊にも詳しくなったと。

 リサイクルショップのおもちゃ売り場に行くと、歴代のスーパー戦隊のグッズが結構置いてあるんです。母を連れていって「これは○○レンジャー」とか、楽しみながら勉強もしました。

――では、今回のオーディションは手応えがあって?

 最終審査を4人で受けて、私は他の人たちより質問されなかったので、「ダメだったかな」と思っていました。だから、受かったのはまぐれな気もしますけど(笑)、何ごとも事前に準備しておくことが大事だと実感しました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

ヘコみまくった時期があったからこそ

――特撮に限らず、オーディションになかなか受からない時期もありました?

 ありました。全然受からない。仕事がない。「将来どうしよう?」と。その頃はヘコみにヘコみまくって、母に「あなたはどうしようもない」と怒られました。当時も明るい性格でしたけど、ナヨナヨしていて(笑)、人に何か言われても「どうしようもないから」って、やらなかったんです。今は自分の思ったことは素直に言うようになりましたし、内面から変わってきました。

――今は明るい未来が見えてる感じですか?

 そうですね。グラビアデビューした頃は、こうなれるとは思っていませんでした。でも、辛い時期があったからこそ、今頑張れているという想いは、自分の中に持っています。

――ゾックスが変身するツーカイザーは、フリントが海賊戦隊ゴーカイジャーからパクったもの。元ネタの『ゴーカイジャー』も観ました?

 はい。ゴーカイジャーはゴールドツイカー一家のモチーフになっていて、しかも人気の高かった作品。同じ海賊として、その名に恥じぬように……という心構えはあります。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

難しく考えすぎてしまうのを直さないと

――フリントのキャラクターには、すぐ入り込めました?

 初登場した9話や10話の辺りでは、あまり上手にできなくて。時間も押しちゃって、申し訳なかったです。特撮の現場は普通のドラマと違って、長年同じスタッフさんがやっているんですね。そこにどう食らいついていけるか不安でしたけど、「ここはこうすればいいんだよ」と的確に教えていただいています。回によって監督も替わるので、自分の引き出しが増えているのも感じていて、1年で自分がどう成長できるか楽しみですね。

――演技的に、どんな壁がありました?

 フリントは双子の弟たちが(呪いで)SDの姿になってしまったのを、自分の責任だと思っているんですね。その部分と、普段はおてんばでワチャワチャしているのと、ギャップを見せたくて。でも、自分で家で考えてきた演技をしたら、うまくいかなかったんです。監督とディスカッションして、「難しく考えすぎ。弟たちへの想いを一番に出したらいい」と言っていただいて、ちょっと気持ちが楽になりました。

――11話が放送されたとき、ツイッターで「悩んで悩んで悩んだカイ」と書いていたのが、その件ですか?

 そうです。演技レッスンでも「現場に行ったら頭を空っぽにする」と教わったんですけど、その作業を私はあまり上手にできなくて、直さないといけないところでした。ずっと考えて「こうしよう。ああしよう」と、自分で難しくしてしまっていたので、監督のひと言に助けられました。SDの弟たちとの掛け合いは合成になることもあるので難しくて、いろいろ試行錯誤しながらやっています。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

爆破シーンの音や熱さにビックリしました

――他にも、特撮ならではのことはありますか?

 フリントは変身しないので、戦いになってもそのままいて、爆破のシーンもあるんです。それが本当にすごくて! ドカーンという音もビックリするし、生で見ると目も焼けそうなくらい熱いんです。スタッフさんは何で平気なんだろう? 

――まだフリントが直接戦うシーンはあまりないですが、アクションの練習もしているんですか?

 はい。ちょっとした護身術とか、ハンマーで敵を殴ったりとか。フリントという名前はフリントロックという銃から取っているので、バンバン撃つところは結構出てきます。だから、銃の扱い方も教わりました。

――カッコよく撃てるようになりました?

 銃はちょっと重いんですけど、界賊は身のこなしが華麗でないといけなくて、どうすれば軽やかにできるか、練習中です。カッコイイかわかりませんけど、「動きがフリントっぽい」とは言っていただいています。特撮はアクションも見どころで、主役の(駒木根)葵汰くんがバク転を2日でできるようになったと聞きました。私は2日では絶対無理ですけど(笑)、夏までには何とかできるようになりたいと思っています。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

アクション練習の後で腰が痛い辛さを知りました(笑)

――バク転は今はどんな段階ですか?

 ロケで広い場所に行ったとき、スーツアクターさんに両側から支えてもらって、練習しているところです。「バク転ができたら、バク宙も2秒でできる」と言われて、「本当に?」と思いました(笑)。

――劇中で披露できたらいいですね。

 そう思って頑張っています。でも、アクション練習をした次の日は全身が筋肉痛で、特に腰が痛くて。今まで、祖母が「腰が痛い」と言うのがわからなかったのが、わかっちゃいました(笑)。

――おばあさんとは、ちょっと違う痛さかもしれませんけど(笑)。

 実家に帰ったとき、祖母に「辛いよね」と話しました。祖母は『ゼンカイジャー』を観てくれていますけど、「日菜ちゃん、口が悪いから直しなさい」と言われて、「違うんだよ~」みたいな(笑)。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

小さい女の子が「一番好き」と言ってくれて

――『ゼンカイジャー』ではいろいろあるかと思いますが、胃が痛くなるほど悩んだりはしてませんか?

 それはないですね。私はおしゃべりが好きなので、撮影がある日はうれしくて、お休みの日に家に1人でいるのが寂しいです。

――放送が始まってから、子どもから声を掛けられたりも?

 今はマスクをしているので、あまりないですね。ロケに行っても、フリントもアニキのゾックスも「ヨホホイ」でしか覚えられてないんですよ(笑)。この前は「かしわ餅の子だ!」と言われました(笑)。

――登場回がかしわ餅中毒の話でしたから。

 「私がかしわ餅ではないんだよな」と思って(笑)。でも、最近すごくうれしかったのが、商店街のロケに4歳くらいの女の子がお母さんと見にきてくれたんですね。ゼンカイジャーのTシャツを着て、ツーカイザーのギアダリンガー(変身アイテム)も持っていて、「フリントちゃんが一番好き」と言ってくれて。すごくやり甲斐を感じました。

――フリントの衣装も似合ってますね。

 ピンクが派手で、かわいいです。チェーンとか付属品が多くて、指輪はお兄ちゃんと色違い。タイツは片脚ずつ赤と青で弟の色になっていて、家族が揃っている感じなのもいいなと思います。

――これから夏場はちょっと大変ですかね?

 確かにタイツも履いていて、暑いんですよね。主人公の介人は夏衣装があるみたいですけど、フリントはどうなのかな? でも、スタッフさんやスーツアクターさんも「暑い」と言いながら頑張っているので、私たちも頑張らないと。

(C)2021 テレビ朝日・東映AG・東映
(C)2021 テレビ朝日・東映AG・東映

海はしょっぱくて向いてないかも(笑)

――夏は好きな季節ですか?

 グタッとしちゃいます(笑)。冷房がガンガン効いたところにいたいです。

――今はご時世もありますが、海や山に繰り出すノリもなく?

 なかったですね。私は水泳をやっていましたけど、室内プール派です。小さい頃から、海はしょっぱいもので、はしゃげない気がして。泳いだあとに体に塩分がいっぱい付いて、「どうするんだろう?」と思っちゃうんです。

――海の家でシャワーを浴びるだけではダメですか?

 足りないです。お風呂にザブーンと入りたくなっちゃう。だから、海は向いてないのかなと思います。

――じゃあ、夏は休みも家で1人でいることに?

 でも、この前は千葉県にあるスパリゾートに行ってきました。すごく広い温泉があって、1日じゅう岩盤浴をしたり、サウナに入ったり、マッサージもしてもらって、マンガも読み放題。リフレッシュできました。

――わざわざ千葉まで?

 前にも家族で行ったことがあって、好きなんです。サウナにもハマってきました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

“初”を追求して独自の道を開拓できたら

――これからフリントを演じていくうえで、課題にしていることはありますか?

 ハチャメチャなところは、皆さんに伝わると思います。あとは、フリントが心の中で「実はこんなことを考えている」というのも、垣間見えるお芝居ができるように頑張りたいです。

――改めて、日菜美さんは東宝芸能の女優さんでは異例の水着グラビア展開をして、スーパー戦隊シリーズにも東宝芸能から初めて出演しました。独自の路線が成功してますね。

 初めてお会いした方に「東宝芸能なの?」とビックリされることが多いです。“初”をどんどん追求していきたいんですけど、「あと何があるかな?」と思い始めていて。せっかくスーパー戦隊に出ているので、アクションは頑張って、『ゼンカイジャー』が終わったあとも自分の糧にできたらいいかなと。アクションができる女優さんも限られていると思うので。他の人にはなくて自分にはあるものを見つけて、独自の道を開拓していきたいです。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

Profile

森日菜美(もり・ひなみ)

2001年3月30日生まれ、東京都出身。

2014年に『東宝芸能創立50周年記念オーディション』に合格。2015年に映画『校庭に東風吹いて』で女優デビュー。2020年に『週刊ヤングジャンプ』でグラビアデビューし、同年『FRIDAY』で初表紙。主な出演作はドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』、『ハルとアオのお弁当箱』、映画『しあわせのマスカット』など。ラジオ『#メカラジ』(ラジオ日本)でパーソナリティ。

『機界戦隊ゼンカイジャー』

テレビ朝日系/日曜9:30~

公式HP

(C)2021 テレビ朝日・東映AG・東映
(C)2021 テレビ朝日・東映AG・東映

“シンデレラ”でない美形の新人女優・森日菜美が19歳から飛躍を目指す

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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