Yahoo!ニュース

助走に費やしたロコ・ソラーレのシーズン前半、過密日程を乗り越えさらに高い場所を目指すシーズン後半

竹田聡一郎スポーツライター
「収穫のあるいい大会になった」と鈴木夕湖はPCCCを振り返った (筆者撮影)

 カーリングの2023/24シーズンは中盤から後半に差し掛かる。

 ロコ・ソラーレは今季、8月のアドヴィックス杯(北海道北見市)を開幕戦に選び、9月からカナダに渡航。日本代表としては11月にケロウナで行われたパンコンチネンタル選手権(以下PCCC)に出場し準優勝。日本に来年3月にカナダ・ノバスコシア州シドニーで行われる世界選手権出場枠をもたらした。

 ただ、日本代表としてのタスクを堅実にこなした一方で、チームとしてはアドヴィックス杯以後は優勝からは遠ざかっているシーズン前半戦だ。

9月/Saville Shootout(アルバータ州エドモントン)ベスト8

9月/Curling Stadium Alberta Curling Series Major(アルバータ州ボーモント)予選敗退

10月/Curlers Corner Autumn Gold Curling Classic(アルバータ州カルガリー)ベスト8

10月/HearingLife Tour Challenge Tier1(オンタリオ州ナイアガラフォールズ)予選敗退

11月/パンコンチネンタルカーリング選手権2023(ブリティッシュ・コロンビア州ケロウナ)準優勝

11月/KIOTI National(ノバスコシア州ピクトゥー)予選敗退

 上記の6大会中、ファイナルに進んだのはPCCCのみ。ナイアガラフォールズとピクトゥーでのグランドスラム2大会はいずれもクオリファイ(予選通過)に届いていない。世界ランキングも7位(Week17、11月20日時点)に落ちてしまった。

 北京五輪前後から世界ランクのトップ5は彼女たちの定位置だった。昨季は念願のグランドスラム初制覇も果たした。それでも「まだ足りない」はチーム共通の意識であり、渇望だ。

 例えば、今年の世界選手権だ。日本代表としては2019年の中部電力以来、4年ぶりのクオリファイ(プレーオフ進出)も果たし、参加13チーム中5位という成績を残した。その順位は決して悪いものではないが、鈴木夕湖が「準備不足だった。めちゃくちゃ悔しい」と素直に振り返れば、吉田知那美も「こんなにも勝てない感覚を久しぶりに味わって、その理由をずっと考えていました」と原因を求め、「たくさん課題が出た」と前を向いた。

 その結果、今季は基礎練習にフォーカスした。これまでの海外遠征では大会出場をメインとしたスケジュールを組んでいたが、日程に余裕を持たせカナダの拠点であるカルガリーなどで試合以外のオンアイスの時間を増やす。「それぞれが今までの(デリバリーの)心地良さを我慢して、ちょっとした違和感がありながらも、チーム全体のスキルアップを目指している」とは吉田知那美の言葉だ。

 フォームを再構築することを重視したシーズン前半はなかなか結果がついてこなかったが、藤澤五月は「勝てない日々が続き、メンタル的にも辛い時間もありましたが、みんなで『我慢し時だね』と確認し合っている」と明かしてくれた。

 それでもPCCCでファイナルまで進むと「いいところもあれば悪いところと課題も出た、収穫のある大会でした。スイープのところは伸び代がありそうです」と鈴木夕湖。そのスイープ面で鈴木の相棒となる吉田夕梨花も「投げとコールとストーンマネジメントも含めて総合的に考えていきたい」と、一定の手応えと、さらなる成長を見据えた。

スイープの効きやすいアイスだったPCCCでは、鈴木夕湖と吉田夕梨花のフルスイープに何度も大歓声が起きた(筆者撮影)
スイープの効きやすいアイスだったPCCCでは、鈴木夕湖と吉田夕梨花のフルスイープに何度も大歓声が起きた(筆者撮影)

 チームは現在、一時帰国しており、少しのオフと国内調整をはさみ、12月上旬にカナダに再渡航する。まずはサスカチュワン州スウィフトカレントの大会に出場し、中旬には同州サスカトゥーンでのグランドスラム「WFG MASTERS」に挑む。これが年内最終戦となり、年末年始は日本で迎える。

 2024年に関しては、シーズンイン当初は年明けから欧州のチームと対戦するため、スコットランド・パースでの大会出場を予定していた。しかしそれも今季は特にスイスやスウェーデン、イタリア、スコットランドなどの欧州の代表クラスのチームが多くグランドスラムに集うため、1月16日から21日までアルバータ州レッドディアで行われる「Co-op Canadian Open」出場を検討中だ。

 日本選手権(札幌)が1月27日に開幕することを考えると「なんとかギリギリ」と藤澤は苦笑いを見せ「移動だったり時差だったり調整はあるので、チャレンジではある」とも言うが、前述した昨季のグランドスラム初制覇の大会で、何度も遠征してる慣れ親しんだレッドディアという土地での開催ということもあり、過密スケジュールを選択することになりそうだ。

 グランドスラムで世界に挑みつつ、日本選手権に向けて準備する。決して二兎を追っているわけではなく、辿り着きたい場所を起点に考えるとこれが最善手であろう。そしてそれを可能にするために、今シーズンの半分を仕込みに費やした。シーズン本番はこれからだ。

この日本代表のユニホームを着て世界選手権に出場するため、1月の日本選手権に挑む (筆者撮影)
この日本代表のユニホームを着て世界選手権に出場するため、1月の日本選手権に挑む (筆者撮影)

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

竹田聡一郎の最近の記事