意味がない?中日の「自力優勝消滅」
「中日 自力優勝消滅」という主旨の見出しがスポーツ紙に踊っていた。7月29日(水)阪神戦を落とした中日は残り50試合に全勝しても、89勝52敗2分けで勝率.631一方、首位の阪神は、中日戦の残り8試合に全敗しても他の43試合に全勝すれば、90勝52敗1分けで勝率は.634と中日を上回るためだ。
スポーツメディア、いや日本の野球界全体が「自力Vの可能性」という言葉が好きだ。たしか、6月2日にオリックスの森脇浩司監督が休養を宣言した際も「自力優勝消滅」がその背景の一つに挙げられていた。
しかし、このフレーズ、ぼくには正直言ってピンと来ない。もともとNPBのようなリーグ戦は、他の複数球団との相対関係を競い合っている。「自力」だけでの優勝の可能性を論じること自体にそもそも違和感がある。また、野球は基本的には「勝ったり負けたり」の競技だ。残試合数が片手で数えられる段階ならいざ知らず、それが50試合もある段階で中日が残り全試合に勝利することも、阪神が中日戦以外で全勝することも到底あり得ない。
この常とう句を耳にすると、あたかも自力優勝の可能性は完全になくなったかのような錯覚に陥りがちだが、今回の中日にしても今後自力Vの可能性が復活することは大いにあり得る。
では、その中日に逆転優勝の可能性はどの程度残っているのだろうか?
「セイバーメトリクスの父」と呼ばれるビル・ジェイムズはその著書『Gold Mine』(金脈の意)の2008年度版で、「あるチームの首位とのゲーム差の二乗>そのチームの残試合数X4」となった段階で、事実上優勝の可能性消滅としている。長いメジャーの歴史の中で、例外は存在しないそうだ。
そうなると現在の中日は、首位阪神とのゲーム差は8でその二乗は64。一方残試合数は50でその4倍は200。「64<200」という状況にある。64.0÷200は32.1%。優勝の可能性は3割方去ったと見るべきだが、まだまだ諦めたものではない。もっともこれは優勝の可能性が7割あるということではないので、誤解なきよう。