藤岡康太騎手を忘れない / 10日に逝去 35歳 急な代打騎乗も冷静に勝利 心優しいファンサービスも
11日午前、JRAは6日に落馬負傷した藤岡康太騎手が10日午後7時49分に逝去したと知らせた。35歳。つい先日、JRA通算800勝をあげたばかりだった。
■藤岡康太騎手が死去 35歳 6日に落馬、意識戻らず G1・2勝、JRA通算803勝(Yahoo!トピックス / デイリースポーツ)
父「康太は感性で乗るタイプ。注文に応じて忠実に乗ってくる」
父である藤岡健一調教師は兄弟の特徴を「兄の佑介(藤岡佑介騎手)はひとつひとつ学習しながら着実に習得していくタイプ。一方、弟の康太は感性で乗るタイプでレースでも注文に応じて忠実に乗ってきます」と話していた。
その光るセンスはデビュー前から評判が高く、デビュー3年目、弱冠20歳でGI・NHKマイルCをジョーカプチーノで制覇。その後は肺の病気や落馬負傷なので苦労も多かったが、多くの厩舎がレースも調教も厚い信頼を寄せ続けた。
2023年のマイルチャンピオンシップ、2レースで落馬負傷したライアン・ムーア騎手に替わって急遽ナミュールに騎乗し、2着のソウルラッシュにクビ差で勝利。久しぶりのGI制覇でこれを機に2024年は乗り馬にも恵まれ、さらなる飛躍を期待させた矢先の落馬事故だった。
■2009年 NHKマイルカップ(GI) 優勝馬 ジョーカプチーノ (JRA公式チャンネル)
2021年、9番人気のマカヒキでゴール寸前にハナ差差し切った京都大賞典での勝利は忘れ難い。ロスなく長くいい脚を使い、5年ぶりにかつてのダービー馬を勝利に導いた。
この勝利を康太騎手は「厩舎と相談して何とか復活をと思っていました。マカヒキが力強い走りをしてくれたのが何よりうれしい」とマカヒキの頑張りを称えて喜んでいた。
他にもかつての騎乗馬が自分から別の人に乗り替わった後、その馬が活躍してもそれを称えていた。そういった話を聞くたび、なかなか出来ることではないと感じた。
■2021年京都大賞典(GII) 優勝馬 マカヒキ (JRA公式チャンネル)
自分なりのファンサービスを考え、実践することも
康太騎手はファンサービスに熱心な人柄だったのも印象深い。
2014年に初めて行われた有馬記念の枠順抽選会。ウインバリアシオンに騎乗する藤岡康太騎手はわざわざ抽選会の前に厩舎に勝負服を借りにきて、レースと同じ姿で挑んだ。他の騎手はみな普段着だったが、康太騎手はひとりだけ勝負服。あえて自分自身の「ファンの人に喜んでもらいたい」という考えを行動に移したのだ。
最近行われているウイナーズサークルでのサイン活動でも、ファンの方々から康太騎手へ寄せられる感謝の思いはその誠実な人柄を感じさせるものばかりだ。
競馬はレースも調教もほんの僅かの差が生死を分けるのが現実で、ヘルメットやプロテクター等の防具がどれだけ進化しても事故の全てを失くせるものではない。まさに生死は紙一重の世界だ。
競馬は日々開催されるが、ただひたすら全人馬の無事を祈ることしかできない。
藤岡康太騎手、本当にこれまでありがとうございました。
その、はにかんだ明るい笑顔、豪快で冷静な手綱さばき、携わった馬を大事に想う気持ち、どれも忘れようにも忘れられないです。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
■2023年 マイルチャンピオンシップ(GI) 優勝馬 ナミュール (JRA公式チャンネル)
■2023年 マイルチャンピオンシップ(GI) 藤岡康太騎手 勝利騎手インタビュー (カンテレ競馬 公式)