勝利まであと1アウトのところで出てきた先発投手が、サヨナラ本塁打を打たれる。この起用は…!?
シアトル・マリナーズは、あと一歩のところで、ディビジョン・シリーズの第1戦を落とした。
8回裏を迎えた時点のスコアは、7対3だった。9回裏を迎えた時点でも、7対5と2点リードしていた。9回裏に登板したポール・シーウォルドは、遊撃ゴロ、死球、三振で2死一塁とし、勝利まで1アウトに迫った。次の打者にヒットを打たれたが、まだ一、二塁だ。点は取られていない。
ここで、スコット・サービス監督は、シーウォルドに代え、ワイルドカード・シリーズの第2戦に先発したロビー・レイを起用した。前の登板は、4回途中に56球で降板したとはいえ、中2日しか空いていない。ヨーダン・アルバレス(ヒューストン・アストロズ)に対し、レイはシンカーを2球続けて投げ、その2球目をライト・スタンドの2階席へ運ばれた。
ポストシーズンで逆転サヨナラ本塁打を打ったのは、1986年のリーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第3戦のレニー・ダイクストラ、1988年のワールドシリーズ第1戦のカーク・ギブソン、1993年のワールドシリーズ第6戦のジョー・カーターに続き、アルバレスが4人目だ。レイの前に打たれたのは、デーブ・スミス、デニス・エカーズリー、ミッチ・ウィリアムズ。3人とも、その年のレギュラーシーズンに30セーブ以上を記録した。
先発投手がリリーフとしても投げることは、ポストシーズンでは珍しくない。例えば、2001年のワールドシリーズでは、第2戦と第6戦に先発したランディ・ジョンソンが、第7戦の8回表、2死一塁から登板し、9回表も投げた。2014年のワールドシリーズでは、第1戦と第5戦に先発したマディソン・バムガーナー(当時サンフランシスコ・ジャイアンツ/現アリゾナ・ダイヤモンドバックス)が、第7戦の5回裏から5イニングを投げ、シリーズを締めくくった。
ただ、シリーズの第1戦に先発投手がリリーフとして登板するのは、異例ではないだろうか。
マリナーズは、ワイルドカード・シリーズと同じ26人でディビジョン・シリーズに臨んでいる。野手と投手の内訳は、14人と12人だ。第1戦は、シーウォルドの前に4人が投げている。さらに、第2戦に先発予定のルイス・カスティーヨを除くと、9回裏のアルバレスの打席で起用できた投手は、シーウォルド(続投)とレイを含めて7人いた――7つの選択肢が存在した――ことになる。
左打者のアルバレスに左投手、という考えだったのだろうか。2人の左投手、レイとマシュー・ボイドを比べると、三振を奪えるのはレイのほうだ。
ただ、アルバレスは、左投手を苦にしていない。通算のOPSは、対右が.980、対左は.963。今シーズンも、1.030と.998だ。打率に関しては、通算も今シーズンも、対左が対右を上回る。
ちなみに、サンプル数は少ないが、アルバレスとレイの過去の対戦は、2022年に3打数1安打(2四球)だ。ボイドは2021年に3打数2安打、シーウォルドは2021~22年に7打数1安打。他には、ルーキーのペン・マーフィーが、2022年に3打数0安打(1四球)を記録している。
レイがアルバレスを抑えていたとしても、データからは、起用の明確な理由が見えてこない。