キヤノン電子 衛星2号機喪失の翌日にカメラ一新の3号機衛星を打ち上げ発表。同じエレクトロンに搭載
2020年7月6日、キヤノン電子は同社の開発する3機目の地球観測衛星「CE-SAT-IIB」を2020年中に打ち上げると発表した。新たに開発した超高感度カメラやキヤノン製ミラーレスカメラ「EOS M100」を搭載する。打ち上げは2号機衛星「CE-SAT-IB」を搭載したのと同じ米ロケットラボのElectron(エレクトロン)ロケットで、ニュージーランドの射場から打ち上げる。
キヤノン電子は、2017年にインドのPSLVロケットで打ち上げられた実証衛星1号機「CE-SAT-I」以来、キヤノン製デジタルカメラを検出器として採用した光学センサーを地球観測衛星に利用してきた。2号機「CE-SAT-IB」は、EOS 5D MarkIIIを望遠側の検出器として採用、口径400ミリメートルの望遠鏡と組み合わせていた。
3号機となるCE-SAT-IIBは、望遠側に「新たに開発した超高感度カメラ」を搭載しているといい、口径200ミリメートルの望遠鏡と組み合わせるという。光学地球観測衛星では難しかった深夜の地上観測が可能になるという。
そのほか、もう1台の望遠側検出器として、キヤノン製ミラーレスカメラ「EOS M100」を搭載。口径87ミリメートルの望遠鏡と組み合わせる。広角側の検出器には、「PowerShot G9X MarkII」を採用するという。
望遠側光学センサーの地上分解能は、「望遠I(高感度カメラ)」が5.1メートル相当、「望遠II(EOS M100)」が5.0メートル相当と、2号機までの分解能0.9メートルに比べて荒くなる。CE-SAT-IIBは重量が35.5キログラムと2号機の半分程度で、望遠鏡の口径も小さいことから、衛星の小型化を図るものと考えられる。また、高分解能の光学地球観測衛星は競争が激しく、米PlanetのSkysatなどがより高分解能の商用観測画像を低コストで提供し先行している。一方で夜間の観測は、明るい大都市など地上の光源を観測する「夜間光」撮影などの限られた利用となっており、レーダーで観測するSAR(合成開口レーダー)衛星が活躍している分野だ。深夜の光学観測が可能になれば地球観測衛星の新たな用途が開けると可能性がある。
CE-SAT-IIBの打ち上げは、2号機衛星を搭載し、ロケット第2段のエンジン異常から打ち上げ失敗となった米ロケットラボのエレクトロンロケットを使用する。ロケットラボは2020年は月1回以上の打ち上げを実施すると表明しており、多数の企業との契約があるとみられる。
ロケットラボは打ち上げ失敗の原因を調査中としており、まだ詳細な情報は明らかにしていない。7月5日の失敗では、第1段分離、高度190キロメートル前後までは順調に飛行していたとみられる。米ハーバード・スミソニアン天体物理センターの研究者ジョナサン・マクダウェル氏は、失敗したエレクトロンの機体がニュージーランドの首都ウェリントンから南側700キロメートルほどの海上に落下した可能性を指摘している。
エレクトロンロケットはエンジンにターボポンプではなく電動ポンプを使用するという他のロケットにはない特徴を持っている。打ち上げ中継映像ではバッテリーの切り替えを「確認した」という音声がなかったとの見方もある。エレクトロンロケットを特徴づける部分で不具合が発生したとすれば、原因究明後の確実な対策が望まれる。