レッドクレー(赤土)コートで戦えることの大切さとは!? Part1【テニス】
ワールドプロテニスツアーでのコートサーフェスは、主にハードコートとレッドクレー(赤土)コートが使用されている。レッドクレーは、ヨーロッパや南米で使用されているもので、表面にレンガの粉がまかれていて、日本の茶色のクレーコートとは異質のものだ。
日本選手が、プロテニスプレーヤーとして成功したいのなら、レッドクレーで戦えることが一つの条件になり、可能ならばジュニア時代から慣れておくことが大切だ。
そして、日本のジュニア選手が、レッドクレーに慣れるきっかけになり得る有意義なジュニアプロジェクトが、今秋日本で開催された。
それが、「ローランギャロス ジュニアシリーズ」のアジア最終予選(2024年10月16日~20日、東京・第一生命相娯園テニスコート)だ。
フランステニス連盟(FFT)、アジアテニス連盟(ATF)、日本テニス協会(JTA)が共同で主催する今大会には、アジア8カ国 から男子16名、女子16名のトップジュニア選手が出場し、それぞれの優勝者には、2025年ローランギャロス・ジュニアの部シングルスの本戦ワイルドカード(大会推薦枠)が与えられる。
今回、大会アンバサダーを務めた錦織圭は、イベントをつうじて、ジュニア選手にアドバイスをしたり、一般のテニスファンと交流を深めたりした。そして、レッドクレーに馴染みのない日本の子供たちには、まずはレッドクレーでの経験を積んでほしいと錦織は力説する。
「(レッドクレーでの)回数を重ねないことには、なかなかクレーでプレーするのは難しい。もちろん本場のヨーロッパとかに行ければいいですけど。今回、第一生命(相娯園テニスコート)で、フレンチ(ローランギャロス)とはちょっと違いますけど、クレーを同じように作ってもらって、その中でプレーできるので、今回のような機会を大切にしてもらいたいなと思います」
これまで日本選手は、どちらかと言えば、レッドクレーの苦手な選手の方が多かったが、錦織は違った。
「日本で育つと、速いサーフェスが多いので、(球質が)フラットの子が生まれやすいのはしょうがないと思います。コートを全部変えるわけにはいかないので。できればクレーで練習してほしいですけど。経験を積むことが一番かな。僕も14歳の頃、結構ヨーロッパに行って、(レッド)クレーで6週ぐらい連続で出てという経験をしたので、そのおかげもあるかな」
一方、表彰式でプレゼンターを務めた伊達公子さんは、自他共に認めるレッドクレー嫌いだが、彼女のジュニア時代に、今回のローランギャロスジュニアシリーズが存在していれば、レッドクレー嫌いにならなかったかもしれない。
「そうですね(笑)。それか、もっと嫌いになっているか(笑)」と話しながら、自らプロテニスプレーヤーとして経験した苦労を踏まえて、ローランギャロスジュニアシリーズの意義を語る。
「ジュニアの間に、クレーでプレーをするということは、頭を使ったり、コートのサイズは時代が変わっても変わることなく、どうプレーするかが大事なことで、それを養えるのがレッドクレー。日本選手にとって、レッドクレーと日本にあるクレーとの違いが想像しにくい。全く異質のものであって、そこで、幼少期から慣れ親しんでいるヨーロッパの選手と、慣れていない選手が試合をすると、大きく差が出る。私自身も選手時代に経験したことです。
ここ約30年で、(日本では)砂入り人工芝が多かったり、ハードコートが戻ってきたり、いわゆるレッドクレーでプレーする機会が少ない中、こういうプレーできる機会ができたのは、すごく大きな意味を持つと思います。
ワイルドカードを得られるアジア予選が、この日本でできたというのは、ジュニアたちにとっては、当然モチベーションになる。本来ならば、ランキングを重ねて、積み上げてグランドスラム予選に引っかかるレベルに持っていくことが道として必要な中で、この16分の1になれれば、本戦のチャンスをつかめる」
さらに、伊達さんは続ける。
「錦織君は、クレーでしっかりできる選手ですけど、多くの日本人、アジア人も含めて、クレーはなかなかタフなサーフェスになる。面白味のあるサーフェスであるというのがわかるからこそ、難しい。レッドクレーとも向き合える、1週間戦うだけでも、みんなのレベルが上がるので、その機会が増えれば増えるほど、吸収できるものがもっと増えていくと思う」
(Part2に続く)