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5歳~9歳の子どもの30%がスギ花粉症 新型コロナと風邪の見分け方の目安は?

堀向健太医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。
(写真:mon_printemps_fleuri/イメージマート)

スギ花粉の飛散期にはいってきました。

すでに症状がではじめた方もいらっしゃるでしょう。

日本人におけるスギ花粉症は1998年には2割もいらっしゃらなかったのに、2019年の調査では約4割ちかくにもなっているのです。

鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会、鼻アレルギー診療ガイドライン 2020年版 [改訂第9版]から筆者作成
鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会、鼻アレルギー診療ガイドライン 2020年版 [改訂第9版]から筆者作成

そして、スギ花粉症を発症する年齢もどんどん下がってきています。

2019年の報告では、5歳から9歳の子どものスギ花粉症は3割にも達していることがわかっています。

すでにスギ花粉症は、大人だけの病気とはいえないのですね。

そしてスギ花粉症の時期に悩むのが、『今起こっている症状が風邪なのか、それとも花粉症なのか』でしょう。さらに新型コロナの流行に伴い、今の症状が新型コロナなのか花粉症なのかを心配されている方もいらっしゃるかもしれません。

そこで今回は、これからスギ花粉の飛散のピークを迎えることもあり、風邪と花粉症、そして新型コロナの見分け方を考えてみたいと思います。

風邪とはなんでしょうか?

写真AC
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風邪とは、『鼻づまり、鼻水、くしゃみ、咽頭痛などを起こす急性のウイルス性疾患』と考えれば良いでしょう。

風邪の原因ウイルスは様々です。たとえば、表のような風邪の原因ウイルスがしられています。

 Heikkinen T, Jarvinen A. The common cold. Lancet 2003; 361:51-9.を参考に筆者作成
Heikkinen T, Jarvinen A. The common cold. Lancet 2003; 361:51-9.を参考に筆者作成

つまり、一番多い風邪の原因ウイルスは、全体の半分くらいを占める『ライノウイルス』です。

『ライノ』とはギリシャ語で『鼻』を意味しています。つまり『鼻風邪』の原因ということですね。

ライノウイルスは100種類以上の型があるため、繰り返しかかることが知られています。そしてライノウイルスによる風邪は、秋から冬に増え、ピークは9月から10月に迎えます(※1)。

ライノウイルスが冬に少ないという意味ではありません。

というのは、1歳までの子ども285人に対する検討では、冬のほうがライノウイルスは悪化することが多いことが分かっているからです(※2)。

そういう意味で、ライノウイルスによる風邪は秋から冬に多いというイメージです。

(※1)Clin Ther 2002; 24:1987-97.

(※2)American journal of respiratory and critical care medicine 2012; 186:886-91.

新型コロナ禍下で、風邪のウイルスの流行パターンが変化している

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コロナ禍下で、手洗いやマスクを装着する方が増え、人の移動が減ったことから、多くの風邪の原因が抑えられていることはご存じかもしれませんね。

たとえば今シーズンは今のところインフルエンザの流行はほぼ抑えられていますし(※3)、乳児で悪化しやすいRSウイルスの流行も、今シーズンは九州などごく一部で流行があった程度です(※4)。

一方で、最近の研究では、それらの感染症が減っているのとは対照的に、ライノウイルスの流行は抑えられていないことがわかっています(※5)。これは、世界的な傾向なのです。

つまり(インフルエンザのような迅速検査はないため普段の臨床として証明することは難しいのですが)、現在の小児科外来で診察する風邪の多くは『ライノウイルス』によるものだろうと推測されます。

(※3)インフルエンザ流行レベルマップ

(※4)都道府県別の流行状況 RSウイルスinfo.net

(※5)Nature 2020; 588:388-90.

小児の新型コロナによる症状は、多くは軽症であり鼻の症状は少ない

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さて、子どもが新型コロナに感染した場合、風邪の症状として、発熱、鼻水、咳、息切れ、食欲の低下などがみられるものの、多くの場合は無症状もしくは重篤にならないことが知られています(※6)。

そして、発熱、痰の絡まない咳(乾性咳嗽)が多いものの、鼻水や鼻づまりなどの症状は少ないこともわかっています(※7)。

ライノウイルスは『鼻かぜ』でしたよね。ですので、(もちろん例外はありますが)鼻水や鼻づまりが多くみられます。ライノウイルスと新型コロナの症状の違いとして、まずはこのあたりが参考にできそうです。

(※6)Clin Immunol. 2020;220:108588. doi:10.1016/j.clim.2020.108588

(※7)新型コロナウイルス感染症に関するQ&Aについて(日本小児科学会)

ライノウイルスと新型コロナウイルスは潜伏期間が異なる

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さらに小児科医は、風邪の潜伏期間(感染が成立してから症状がはじまるまでの期間)を意識して診療しています。

ウイルスの潜伏期間は、種類によって異なります。

たとえば、ライノウイルスの潜伏期間は1.9日(95%信頼区間 1.4日~2.4日=95%はこの範囲にはいるという意味)と報告されています(※8)。

一方で、新型コロナウイルスの潜伏期間の中央値は5.1日(95%信頼区間 4.5~5.8日)という報告があります(※9)。

ライノウイルスよりも新型コロナのほうが潜伏期間が長いですよね。

ですので、『子どもが2日前から発熱と鼻水がひどくて、今日から私(保護者さん)もかぜ症状が出てきました』というお話を保護者さんからお聞きした場合は、(もちろん例外はありますが)新型コロナよりもライノウイルスによる症状かなあと頭に思い浮かべることになります。

(※8)Lancet Infect Dis 2009; 9:291-300.

(※9)Ann Intern Med 2020; 172:577-82.

では、花粉症の症状はどうでしょうか

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さて、冒頭にお話ししたように、新型コロナの流行に伴い現在の症状が新型コロナなのか花粉症なのかを心配されている方もいらっしゃるでしょう。

花粉症とは、花粉にアレルギーを持っている方が花粉にさらされることで、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみなどが起こるアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎のことです。

花粉は、ウイルスや細菌に比較して、その粒子がはるかに大きいので、目や鼻、のどまででとどまります。そして、目や鼻やのどでアレルギー反応を起こし、目のかゆみや涙、くしゃみ、鼻水、咳などがでてくるのです。

ここで重要な症状がかゆみです。

新型コロナやライノウイルスによる症状は、ウイルスの感染によるものですから、アレルギーではありません。つまり普通は、かゆみは起こらないのです。さらに花粉症の場合は、水っぽい鼻水が多くでて、涙が増えます。咳は一般的に、花粉症ではそれほど強くありません。

一方で、新型コロナによる症状は気管支や肺に侵入しやすいウイルスによる感染症によるものです。成人は咳が半数に起こり息切れなどの呼吸器症状が強く出やすいと考えられています。一方で、鼻水は多い症状ではありません。

まとめると、こんな感じでしょうか。

筆者作成。※Ann Intern Med 2020; 172:577-82. ※※Lancet Infect Dis 2009; 9:291-300.
筆者作成。※Ann Intern Med 2020; 172:577-82. ※※Lancet Infect Dis 2009; 9:291-300.

もちろん、これらの症状は目安です。

典型的ではない症状もあり得ますし、最終的な診断は医師が考えていくべきことでもありますが、われわれ医師は、このような症状の経過をお聞きしながら検査を行うかどうかを判断しています。

ですので、患者さんからの詳細な情報があると、より正確な診断を行いやすくなるのです。

参考にしていただき、心配事を医療者に伝えていただければ嬉しく思います。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。大学講師。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療研究センターアレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5600人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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