なぜしないの? 地震対策の家具固定・転倒防止、出来ている人と出来ていない人
高齢者ほど高い固定実行率
2011年3月の震災を受け、家具や大型家電など地震で移動、転倒のリスクがある室内設備に対し、そのリスクを軽減するための固定化が促進啓蒙され、対策用機材も多数登場するようになった。内閣府が2014年2月に発表した「防災に関する世論調査」の結果では、40.7%の人が家具・家電などの固定を果たしているという。
それではその固定対策をしている人は、具体的にはどの程度まで固定・移動防止が済んでいるだろうか。その内情を記したのが次のグラフ。
家具などの固定対策をしている人でも、リスクの高い重量があるもの(テレビやタンス、冷蔵庫など)の固定ですら終わっていない人が、実際には5割強居る計算になる。当然重量があるものの方が、転倒した時のダメージは大きい。せめてそれらだけでも済ませるよう望みたい。
属性別に見ると男性、高年齢者の方が備えは進んでいる。女性は災害対策に敏感なものだが、家具固定では行動が遅れている。これは固定をするにあたり色々と面倒なことが多く、つい先延ばしをしてしまっているのが最大の原因。世代別で若年層の方ほど対応率が低いのも、同じような理由による。
なぜ地震に備えた家具固定をしないのか
一方家具の固定、落下防止をしていない人は、どのような理由によるものなのだろうか。
最大の原因は「やろうと思っているが先延ばししてしまう」、次いで「面倒」。あとはほぼ横並びで「傷がつく」「お金がかかる」「転倒などしない」「効果は無い」などが続く。家具や家電の固定、転倒防止策には正しいやり方に関する情報が必要で、さらにそれなりの労力、機材が欠かせない。力仕事となる場合も多く、一人では難しい場面も生じてくる。それらの手間を考えると、つい先延ばしをしてしまったり、面倒だからと断念してしまう。
多分に気持ちの問題な側面があるが、一度「面倒、時間がかかるので後回しにしよう」と先延ばしにしてしまうと、予定がどんどん繰り延べになり、さらには面倒だからやらなくても良いと勝手に判断してしまう。ダイエットや大掃除と同じと考えれば分かりやすい。
これを属性別に見たのが次のグラフ。
都市規模が大きいほど「家具や壁に傷がつく」の値が高く、東京都区部では「先延ばし」を抜いてトップとなっている。これは賃貸住宅居住者が多いのが原因。また男女別では男性は「面倒」が女性より多く、女性は「先延ばし」が男性よりも多い。男性は一人でも家具などの固定化は出来る場合も多いが、単純に面倒くささから、女性は力仕事が多いので一人での作業が難しく他人(配偶者など)の手を借りて行いたいものの、時間の調整などがつかず、実施できない状況にあることが分かる。
世代別では若年層、そして意外に中堅層で「面倒」との意見が多い。また中堅層では「家具や壁に傷がつく」との意見も多いが、こちらは賃貸住宅というよりは調度品への傷を気遣ってのものと考えられる。
家具の固定化を果たしていない理由では、本人の意志によるもの、自信過剰や極端な楽観論による回答率が案外高い。恐らくは固定化しているとの回答者中、中途半端な範囲でしか実施していない人も、この理由によるものだろう。これには啓蒙などで後押しをしたり、正しい認識を持ってもらうしかない。
他方「お金がかかる」「方法は分かっているができない」「固定方法が分からない」などの理由は、手の打ちようで状況の改善が望める事例である。固定化、落下防止は一度対策を施せば、時々のメンテナンスをすれば良い。食料備蓄品のような手間は要らない。是非とも室内で重量のあるものへの固定・転倒防止対策を施してほしいものだ。
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