OpenAIは”GPT”を商標登録できるのか
LLM(大規模言語モデル)の代表的存在であるGPT、および、その応用ChatGPTが、情報通信技術、そして、ビジネスの世界に革新的影響を与えていることに議論の余地はないでしょう(厳密には比較対象ではないですが、「メタバース」がすっかりかすんでしまいましたね)。
当然ながら、GPTという言葉には多大な顧客吸引力が生まれています。既に、イーロン・マスクがTruthGPTなる名称のLLMを開発する意向を表明するなど、放っておくとGPTという言葉が一般化して識別力がなくなるリスクがあります。と思っていたら、まさに本日、OpenAIがブランドに関するガイドラインを出していました。
かいつまんでいうと、「ホニャララGPT」というパターンは使用できず、「ホニャララ Powered by GPT」等の表記にする必要があるとされています(したがって、TruthGPTという表記もNGとなります)。早速、これに対応して、たとえば、「行政GPT」のような名称を改名する動きがあるようです(参照記事)。
では、このガイドラインに強制力を持たせるための商標登録についてはどうなっているのでしょうか?OpenAIもこの辺は抜かりなく、OpenAI OPCO, LLCという法人(おそらくOpenAIの知財管理専門会社)名義で、大部前から生成AI関連の商標登録出願を行ってきています。
米国においては、GPT-4, WHISPER, CODEX, CHATGPT, GPT, DALL·E, GPT-3を出願済みであり、そのうち、GPT-3は既に2021年3月16日に登録(6294671)されています。指定役務は42類の「言語モデルを使用するためのSaaS」(Software as a service (Saas) services, namely, providing online non-downloadable software for using language models)等です。
GPTはGenerative Pre-trained Transformerの略であり、普通名称(あるいは記述的商標)と判断される可能性があるのではと思いましたが、GPT-3が特に拒絶理由通知もなく登録されたことから、GPT、そして、GPT-4やChatGPTについてもこの点はあまり心配する必要はないのではと思います。
なお、日本ではどうかというと2023年2月から3月にかけてGPT、WHISPER、GPT-4の3件が出願されています。3件とも状況が「方式未完」(方式審査が未完了の意味)になっています。通常は、出願料金が払われていないときにこの表示になるのですが、さすがに、OpenAIが料金未納というのは想定し難いです。これらの出願はパリ条約優先権を指定しているので、その優先権証明書が未提出ということと思われます。優先権書類は特許や意匠であれば電子的にやり取りできるのですが、商標の場合には依然として紙の書類を郵送でやり取りしないといけないので、まだ方式未完状態なのは問題ではありません。
なお、「例の人」もGPTを出願していますが、OpenAIの出願日(あるいは優先日)より後の出願なのでOpenAIの出願に影響を与えることはないでしょう。なお、こちらも「方式未完」になっていますが、これは単に出願料金未納ということと思われます。