「土用の丑の日」やめません?ウナギ7割が違法疑い!メディアが報じない有効な対策とは???
今年も「土用の丑の日」がやってきた。ニホンウナギは乱獲や生息環境の悪化から、その数を激減させ、2014年にIUCN(国際自然保護連合)が絶滅危惧種に指定したにもかかわらず、スーパーやコンビニ等は「土用の丑の日」のキャンペーンを毎年行い、メディアも「恒例ネタ」としてとりあげている。だが、日本の市場に出回っているニホンウナギの大部分が、違法或いは不適切に獲られたものだ。今月19日、環境NGOや専門家が、その危うさや行うべき対策を訴えた。
○ウナギ消費が跳ね上がる「土用の丑の日」
「土用の丑の日」の起源は諸説あるが、"江戸時代の蘭学者平賀源内が、夏に売り上げが伸びず困っていたウナギ屋のために「丑の日にちなみ『う』から始まる食べ物を食べると夏負けしない」との販促キャンペーンを提案した"というものが有名だ。総務省統計局の調べ(2018年家計調査)では、一世帯ごとの「ウナギのかば焼き」の年間支出額のうち、「土用の丑の日」(一の丑)がある7月は37.3%を占めるなど、現代においても、ウナギの消費が増加する傾向が顕著である。一方、養殖のため採捕されるニホンウナギの稚魚(シラスウナギ)の量は、年によって変動はあるものの、水産庁の統計によると、1966年以前は100トン以上だったものが、1990年には20トンを割り込み、2019年の採捕量は過去最低となる3.7トンであった。「養殖」と言っても、卵から育てる技術は商業ベースでは未だ実現しておらず、採捕した天然のニホンウナギの稚魚を育てるかたちであるため、何の制限もなく乱獲し続けるならば、いずれ漁業として成り立たなくなることは避けられない。
○流通しているニホンウナギの7割が違法の疑い
絶滅危惧種を乱獲し続けていること自体が異常なことであるが、それに加え深刻なのは、日本の市場に出回っているニホンウナギの大半が、違法或いは不適切なかたちで採捕された稚魚を養殖したものという状況だ。19日の「シラスウナギの違法な漁獲と流通に関するセミナー」(主催:NACS-J、JWCS、WWFジャパン)で、IUCNウナギ属魚類専門家グループ/中央大学教授の海部健三氏は「2015年に国内で池入れされたウナギ稚魚の18.3tの内、密輸が疑われるものが3トン、密漁と無報告が疑われるものが9.6トン。適法とみられるものは5.7トンです」と言う。つまり、違法或いは不適切なかたちで採捕されたウナギ稚魚は全体の7割を占めるということだ。
○密漁品排除と流通の透明化が必要
横行するニホンウナギのIUU漁業(違法・無報告・無規制)への対策として、海部教授は「ニホンウナギを水産流通適正化法の対象にすることが必要です」と語る。水産流通適正化法は正規に漁獲・流通したことを示す取引記録の保存を義務化する等により、密漁品の市場からの排除や流通経路の透明化を目的とする法律で、昨年12月に成立。2年以内に施行予定とされる。どの魚介類を対象とするかは、今年5月から11月までの予定で水産庁で検討されているが、ニホンウナギも対象に含めるのであれば「国外からの密輸、国内での密漁、無報告での採捕の全てに対応できます」と海部教授は強調する。
世界的な環境NG0の日本委員会「WWFジャパン」の海洋水産グループの植松周平氏も「現状では、消費者も知らないうちにIUU漁業を助長させてしまっている可能性が高く、犯罪組織を支援し、IUUでない真っ当な漁業者を苦しめることになってしまっています」と指摘。「日本の食文化やウナギ産業を守るためにも、流通を適正化させることが重要です」(同)。
○問われる報道のあり方
世界的に水産資源の減少・枯渇が深刻となる中、IUU漁業を根絶することは国際的な流れだ。欧州や米国では日本に先駆けてIUU漁業規制のための法制度を導入している。このような中で、日本のメディアも、ただ恒例ネタとして「土用の丑の日」関連のニュースを報じるような姿勢を見直すべきではないか。民放や新聞の報道、例えば「土用の丑の日にむけ、ウナギ輸入ピーク」「土用の丑の日商戦スタート」「稚魚豊漁で今年はお手頃価格」などといった報道では、視聴者や読者の消費欲を煽る一方で、ニホンウナギが絶滅危惧種であることや、流通するウナギの大多数が違法或いは不適切な採捕によるものであることについて、全く触れていない。だが、IUU漁業根絶のための動きを報じることが、メディアの社会的な役割ではないか。とりわけ、水産流通適正化法でウナギを対象にするか否かは、この夏以降が大きな山場となる。海の生態系や日本の食文化を守るためにも、水産流通適正化法をめぐる動きに、一人でも多くの有権者が注視していくことが重要だ。
(了)