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シリア情勢の混乱一服で、ガソリン価格は3週連続の下落に

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

資源エネルギー庁が10月2日に発表した石油製品価格調査によると、9月30日時点でのレギュラーガソリン店頭小売価格(全国平均)は1リットル当りで前週比-0.7円の160.0円となった。これで前週比マイナスとなるのは3週連続であり、9月9日時点の161.4円をピークに、累計で1.4円下落した形になっている。

背景にあるのは、6月下旬以降に急騰していた原油価格が、漸く沈静化に向かい始めていることだ。国際指標となるウエスト・テキサス・インターメディエイト(WTI)原油先物相場は、8月28日に1バレル=112.24ドルを記録し、今年上期の85~100ドルを中心としたレンジを大きく上抜いた。

直接的なきっかけはエジプトの政情不安だったが、この問題が収束に向かうのと前後してシリアの化学兵器使用問題、リビアの石油ターミナルにおける抗議デモなど、地政学的リスクに関連するイベントがドミノ倒し的に発生したことが、ドル建て原油相場を2011年5月以来の高値圏まで押し上げた。特に、シリア情勢に西側諸国が介入すると、イスラエルやイランなども巻き込んだ中東地区全体の政情不安に発展する可能性もあっただけに、原油価格は敏感に反応し、国内ガソリン価格も08年10月以来の160円台乗せとなった。

しかし、懸念されていたシリアに対する武力行使は回避される方向で協議が進んでいることで、地政学的リスクを背景とした原油高は少なくとも小康状態を迎えている。また、リビアの原油生産環境も漸く普及に向かい始めており、サウジアラビアなどの有事対応としての増産とあいまって、欧州地区の原油需給逼迫感はほぼ解消されている。

まだ地政学的リスクの火種は残されているが、当面の危機的状況を脱したとの安心感が、現在は102ドル水準まで原油相場を押し下げており、これが原油調達コストの高騰懸念を後退させている。

加えて、9月下旬は為替相場が円高方向に振れたことも、国内ガソリン価格に対する押し下げ要因になった。米連邦債務上限の引き上げを巡る議会交渉が暗礁に乗り上げる中、当該週は1円以上のドル安・円高になっている。

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■10月上旬のガソリン価格の考え方

このまま地政学的リスクが収束に向かう流れが維持されることを前提にすれば、国内ガソリン価格は横ばい、ないしはじり安の展開が想定される。

10月はドライブシーズンと暖房油需要期の間という、石油需要にとっては端境期に当たることで、需要サイドから需給緩和圧力が強まり易い環境にある。特に目立った供給トラブルなどが発生しなければ、原油の短期需給バランスには緩和圧力が強まり易いことで、原油相場の水準は切り下がり易くなる。

もっとも、先進国の在庫環境が今年上期と比べて大幅に改善していること、地政学的リスクの存在が再認識されたことなどを考慮すれば、大きな値崩れも想定していない。来週のガソリン価格は160円台を割り込む可能性が高くなっているが、今年上期の150~155円をコアとしたレンジに回帰する可能性は低いだろう。引き続き円安リスクにも注意が必要であり、当面のガソリン価格は160円絡みの高値圏での展開を想定しておいた方が良さそうだ。

マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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