原油安再開で株安・円高、産油国への期待が失望に変わったショック
原油価格が再び急落していることが、週明け4月18日の東京金融市場で急激な円高・株安をもたらしている。熊本地震の被害が続いている影響が警戒されているが、こうした中で改めて原油安が世界の金融市場を不安定化させるリスクも警戒する必要性が浮上している。
原油価格が急落している背景にあるのは、4月17日に主要産油国がカタールの首都ドーハ開催した会合(ドーハ会合)において、産油国が原油安への政策的な対応を見送ったことである。2014年前半には1バレル=100ドル水準を推移していた原油価格が、今年1月には一時26.05ドルまで下落する中、これまで原油安を静観し続けていた主要産油国が国際協調の可能性を模索する動きを活発化させていた。
その集大成がドーハ会合であり、主要産油国は今年1月の水準で産油量を凍結し、少なくとも石油輸出国機構(OPEC)やロシアといった伝統的産油国が増産を行うことで、国際原油需給が更に緩和(=供給過剰が拡大)することを阻止する国際協調を模索していた。
しかし、欧米からの経済制裁が解除されたばかりのイランは、漸く増産を開始し始めたばかりのタイミングで産油量凍結(=増産凍結)を行うことに強い拒否反応を示しており、イランに関しては経済制裁前の産油水準を回復した時点で、産油量凍結に合意するといった譲歩案が他産油国から幅広い支持を集めていた。
このために、原油需給の引き締め効果は限定されるものの、まずは産油国の国際協調の第一歩として、イラン抜きの産油量凍結という流れ構築されつつあった。これが、2月下旬以降の原油相場が40ドル水準までの反発局面を迎える原動力の一つである。
しかし実際のドーハ会合では、サウジアラビアがイラン抜きでの産油量凍結合意に拒否反応を示し、この問題は6月のOPEC定例総会まで継続協議扱いに留まることになった。サウジアラビアに関しては、サウジ国内で権力基盤を強めるムハンマド副皇太子が、金融メディアのインタビューで「イランが協力した場合」に産油量凍結を行うと発言していたことが警戒されていたが、その後に国際合意を急ぐロシアが仲介に乗り出したことなどで、イラン抜きでも産油量凍結では合意できるとの見方が支配的だった。
だが、サウジアラビアはイランにだけ特別待遇を与えることに強い拒否反応を示し、交渉の土壇場で産油量凍結合意への合流を拒否している。もちろん、サウジ抜きの国際合意という選択肢もあったが、この政策は実際の原油需給動向に対する働きかけよりも、「国際協調」という点に重点が置かれているだけに、ドーハ会合では実質的に何も合意できないという最悪の事態を迎えている。
サウジとイランとは、政治的・経済的・軍事的に中東地区の覇権を争っている最中であり、年初には両国の断交が話題になったばかりである。サウジとしては、イランに恩恵がある一切の国際合意を認めることができない模様であり、産油国の協調関係構築の難しさが露呈した格好になっている。
■今後の原油価格の行方は?
産油国会合への「期待」が「失望」に変わったショックは大きく、原油価格は4月13ン一の42.42ドルをピークに、18日のアジア時間には一時37.61ドルまで急落している。このまま産油国が有効な市況対策を打ち出すことができなければ、30ドル近辺まで値下りするリスクも想定しておく必要がある。
ただ、これが1月にみられたような原油安を起点としたグローバルな金融危機にまで発展していくのかは疑問視している。その当時と大きく異なるのは、既に米国のシェールオイル分野で強力な減産圧力が確認されているためだ。
このため、仮に産油国の原油安対応が見送られたとしても、価格低下がシェールオイルの減産を促している以上は、従来のように原油価格の20ドルや10ドルといった価格水準までも想定する必要性は薄れている。原油価格の本格上昇が難しいことが再確認された格好だが、当面はこのまま大きく値崩れすることも急騰することもない、安値低迷状態が続く公算が大きいとみている。