幾多の不利を乗り越え、僅差のケンタッキーダービー3着のフォーエバーヤング 大健闘だが悔しさも隠せず
優勝馬からハナ+ハナ差の僅差で3着
今回で第150回を迎えたケンタッキーダービーで日本調教馬が記憶に残る大健闘を見せた。優勝馬からハナ+ハナ差の僅差で3着にきたフォーエバーヤング。そして5着で掲示板に乗ったテーオーパスワードだ。
ケンタッキーダービーは「The Most Exciting Two Minutes in Sports(スポーツの中で最もエキサイティングな2分間)」と言われるほど米国内でスポーツイベントとしての注目度も高い。そして、今年は賞金総額が過去最高の500万ドルに引き上げられ、1着賞金は310万ドルだ。
これほどの大舞台、簡単に上り詰められるわけではない。チャンスはもう二度とこないかもしれない。
そんな緊張感の中で、鞍上の坂井瑠星騎手は実に冷静な手綱さばきを見せた。しかも、何度も明らかな不利を受けながら、だ。
■2024年ケンタッキーダービー(GI) 優勝馬 ミスティックダン
状況は完全にアウェーだった。スターティングゲートの中で若干落ち着きのない様子を見せたフォーエバーヤングだったが、ゲートが開くとその影響もあってか若干立ち遅れた。これは明らかに痛く、もうこの瞬間に「終わった」と思わせた。
出遅れはスタート直後のポジション争いに大きく影響する。最初の1コーナーでのポジションは勝つどころか上位入選すら危ういと感じさせるほど絶望的で、レースを見守りつつも日本のNHKマイルや来年のケンタッキーダービーに気持ちを切り替えた人も多かったのではないか。
■ケンタッキーダービー公式Xより
写真中央、11番フォーエバーヤングがスタート直後、後方にいるのがわかる
心身のタフさを発揮したフォーエバーヤングと坂井騎手
しかし、鞍上の坂井瑠星騎手は恐ろしいほどに冷静だった。後方集団にいながらも向こう正面過ぎから淡々と距離を詰め始めた。フォーエバーヤングのポジションをジリジリと上げさせ、勝負どころの3コーナー手前からは坂井騎手は腕を大きく動かして押し上げにかかった。そのまま、4コーナーまで外から他馬を大まくりだ。直線を向いたとき、すでにフォーエバーヤングと坂井騎手はキックバックで浴びせられた赤土に全身が覆われていたが、その代償にしっかりと先頭を射程圏に捉えており、臨戦態勢に入っていた。ここまででかなり脚を使っているが、見せ場をしっかりとつくっているとも言え、ゴールまでどれだけの体力が残されているのかが気になった。
最後の直線、ここからフォーエバーヤングはさらにそのタフさを見せつける。外からシエラレオーネに馬体を寄せられ、何度となく馬体がぶつかりながらも、2頭で先頭のミスティックダンへ差を詰めるのだ。しかもこの間、シエラレオーネ鞍上のタイラー・ガファリオーネの左腕が伸び、フォーエバーヤングに接触している様子もうかがえた。肝心要のタイミングで更なる不利を受けている。しかし、フォーエバーヤングも坂井騎手も決して怯まずに大きく前を捕えようと体を伸ばした。このコンビは身体だけなく心もどこまでタフなのか!
ゴール目前まで、右隣のシエラレオーネよりもフォーエバーヤングの勢いのほうがやや優勢だった。しかし、最後の最後の土壇場でシエラレオーネが勢いづく。先頭を行くミスティックダンは内ラチ沿いで先頭を死守することに必死だ。坂井騎手もゴールに目掛けて精一杯両腕を伸ばす。しかし、決勝地点であるゴール板ではミスティックダンにもシエラレオーネにもほんの僅か、届かない。ハナ+ハナ差の3着に終わった。
■ケンタッキーダービー公式Xによるゴール前の判定写真
内(写真上)から
1着ミスティックダン
3着フォーエバーヤング
2着シエラレオーネ
客観的には大健闘であると同時に、大チャンスを逃した陣営の悔しさは計り知れない。実際、レース後のインタビューで管理する矢作芳人調教師は悔しさを訴え、涙を流していた。
この悔しさがまた次に繋がる。そう信じて、僅差で3着に頑張ったフォーエバーヤングと5着入線のテーオーパスワードの大健闘を心から称えたい。
おつかれさまでした。
■ケンタッキーダービー公式Xより
日本調教馬は3着フォーエバーヤングと2着テーオーパスワードの2頭入着