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Twitter がつかんでいたかもしれない、あるいはこれからつかむ3つの可能性

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
Twitterは既に情報インフラ化していますが、ビジネス的な成功をいかにつかむか(写真:ロイター/アフロ)

個人的には、Twitterが大好きです。

シンプルで、既になくてはならないモノを作り上げている。Twitterの創業チーム、特にJack Dorsey氏のモバイル感覚は「日本の女子高生並み」だ、とインタビューしていて思いました。TwitterにしろSquareにしろ、 モバイル時代に必要なインフラを的確に捉えて、それを実現してきました。

Twitterは、140文字という、日本語で音読すればおよそ30秒という文字数の1ツイートを「情報パケット」とし、リプライで情報パケットに双方向性と拡がりを与え、RTで加速度を与えています。その情報パケットに画像やビデオを追加し、リンクを追加し、ハッシュタグによる分類を追加し、現在ではライブ動画を追加しました。

Twitterが登場した当初は、1つのツイートの情報単位が小さすぎるように感じられ、それを複数束ねて情報を構成しようという工夫をしていました。しかし情報パケットにコンテンツを追加できるようになった現在では、1ツイートという単位がより重要性を増しているように感じます。もちろんそのことは、多くの人が気づいていない変化です。

Twitterの業績は芳しくありません。モバイル時代になくなっては困るインフラと、収益が上がることとはイコールではないのです。広告によるビジネスモデルは、1ツイートの重要性の認識がより広まらなければ、難しいのではないか、と思います。

・TechCrunch:Twitterの2016年を振り返る

Twitterは、その情報パケットの小ささを生かして、ライブストリーミング分野という活路を見出しつつあります。世間がライブ動画に注目していること、ネット経由のライブ動画をテレビに映して楽しむことへの許容、ライブ動画に自律的に視聴者のコメントという自律的なコンテンツが付加価値として増殖していくこと。まあこれはまるっきりニコニコ動画なわけですが。

大統領選挙は、Twitterの2016年10〜12月期の決算にプラスに働くことになるはずです。スーパーボウルやオスカーなど、中継出来全米が注目するライブイベントごとに、Twitterの価値を高めていくことができれば、2017年はさほど酷いことにはならないかもしれません。

ただ、買収話で株価が跳ねる企業は、自立的な成長や将来に向けての持続性に対しての期待感が薄いことの裏返しでもあります。そうしたエキサイティングではない企業からは、良い人材が流出し続けてしまいます。サンフランシスコ界隈では、1年前のTwitter、現在のAppleが、その流出元になっているとささやかれています。

改めて言いますが、私個人的には、Twitterが最も将来まで使い続けるであろうサービスだと思っています(なくならなければ)。むしろ、Twitterアプリだけあれば成立するくらい、Twitterはスマートフォン活用を効率化し、あるいはシンプルにしてくれると思っているほどです。

なくならないためにも、収益を上げていかなければなりません。今まで、あるいはこれから、Twitterがつかみうる可能性について3つ考えてみました。

1. ユニバーサル・エンベッディッド・メッセージング

多くの人は、いくつかのクラウド系サービス、仕事効率化アプリを使っていると思います。それらのサービスを見ていて残念に思うのは、それぞれがメッセージングサービスを独自に持っている点です。

例えばEvernoteにはワークチャットと呼ばれるノートやノートブック共有機能とメッセージングを組み合わせた仕組みがあります。Evernoteアプリ内でコラボレーションが完結するよう設計されていますが、登場が遅すぎて、ノート共有にはFacebookメッセージやメールを使ってしまいます。Evernoteのメッセージング機能がアクティブでなさ過ぎるため、気づいてもらえないのです。

あるいはDropboxにもありますし、Slackを使ってコミュニケーションを取っている企業も多いです。あるいはWordやExcel、PDFの中にメモを残して伝える事も少なくありません。とにかく、メッセージ手段が多すぎるのです。

Twitterには「@○○」というユーザーIDがあります。このIDを使ったメッセージングを、Twitter外のアプリ内でも利用できるようにし、Twitterのメッセージング機能を他のアプリに埋め込める仕組みにしておけば良かったのに、と思います。いや、今からでもEvernoteはそう変更すべきだと思いますが。

この部分で、Twitterは使用料を取っても良いと思います。各アプリやサービスが独自のメッセージング機能を開発し、認知させ、メンテナンスし、活用してもらうよう務めるコストと天秤にかけてもらえば良いのです。

まあ、今からではちょっと、という話ではありますが。

2. IoTレイヤー

IoTの時代、恐ろしいのは、デバイスがハックされて、身の回りに無数にあるデバイスが、ネットワークないのコンピュータや外部のサーバを一斉攻撃すること。凝ったことはいりません。例えば、ある国で製造されたデバイスに時限発火式の仕組みが組み込まれているだけでも良いわけです。

そうでなくても、IoTデバイスには面倒さが大きいです。個別の設定アプリをスマートフォンに導入して、他のデバイスとの連携を設定して、という設定の部分が、どうしてもスマートとは思えないのです。なんとかなりませんかね。

Twitterが、IoTデバイスのレイヤーを持って、IoTデバイスに喋らせ、その内容を自分のTwitterのメインアカウントに紐付け、ステイタスを取得したり、ツイートをトリガーにしたコントロールを実現しても面白そうです。前述のユニバーサルメッセージングが有効に作用するポイントだと思います。

まあ、IFTTT(イフト)を買収してしまった方が早そうな気もしますね。可能であれば、ぜひ。

・IFTTT

通知プラットホーム

最近、iPhoneのTwitterアプリで、通知機能を積極的に使おうと試しています。Twitterアプリの通知機能は、自分宛のリプライなどを受け取っている人が多いと思いますが、特定のアカウントのツイートやライブ配信を受け取るよう設定することもできます。

・Twitterサポート:ツイート通知の設定方法

例えば、ニュースサイトや地元の気象台のアカウントの通知を全て受け取るようにしたり、友人のアカウントを追加しておいても良いでしょう。そしてApple Watchを装着していると、Twitterのアカウントにツイートが追加されると、Apple Watchでその内容を知ることができます。

前述のIFTTTと組み合わせて時報をツイートするアカウントを作り、そのアカウントからの全てのツイートを受け取るよう設定すれば、毎時00分にApple Watchを震えさせることができるようになります。Apple Watchアプリを作ったり、毎時にアラームを設定するより簡単。

Twitter:時報

IoTの話で、いちいちデバイス後とのアプリを追加するのが面倒と言いましたが、例えばCNNや日本経済新聞など、ニュース速報を受け取ろうとした際にも同じことが言えます。

それぞれのアプリを導入し、場合によっては月額料金を支払い、通知を受け取るよう設定しなければなりません。それに比べれば、Twitterアプリが通知を束ねてくれた方が、管理しやすいというものです。

もちろん、アプリを入れてもらわなければ、ニュースサイトも広告などに影響が出るわけで、Twitterが広告の部分まで面倒を見るプラットホームになる必要がありますが、それはやるべきことだと思います。

ということで、好き勝手に3つの可能性について書きました。部分的には手遅れ(メッセージングや広告)かもしれませんが、良い具合にピースを埋めつつあるとも思います。

買収したくなくなったディズニーが言い訳に使った(が、しかし解決すべきでもある)ハラスメントやトロルの問題への対策とともに、こうした未来に対する一手を打ち出してほしいものです。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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