「優勝者が祝福のキスを拒否された!?」騒動に感じさせられるユーモアとアイロニー
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/funakoshisonoko/00085632/top_image.jpeg?exp=10800)
米ツアーのAT&Tバイロン・ネルソン(5月17日~20日)終了後、米ゴルフ界で大きな注目を集めてしまった”変な話”が、実はある。
2位に3打差を付け、大会を制したのは21歳の米国人、今季ルーキーのアーロン・ワイズ。ウイニングパットを沈め、拳を握り締めて初優勝の喜びと達成感を噛み締め、18番グリーンに駆け寄ってきた美しい彼女と喜びのハグ。
しかし、そのワイズが「キスしようとしたら彼女からキスを拒否された」という、ある意味、とても私的で、外野には無関係で、言い方を変えれば、どうでもいい話。
私は現場でその瞬間を目撃したが、「あれっ?今、キスしなかったなあ」と思っただけで、別段、気に留めてはいなかった。だが、その夜から、その出来事は米ゴルフ界の話題を独占するほどに発展。米国の主要なメディアが続々と取り上げる”ビッグニュース”になった。
キスの話がそうやって取り上げられるその現象は、いかにもアメリカらしいと苦笑しつつ、コトの成り行きを眺めていたら、”事件”から3日が経過した23日(米国時間)、ワイズ本人が米メディアにコトの真相を語る事態へ。
若いカップルの私的な話ではあるが、ここまで大きな話題になった以上、今後、たとえば彼がメジャー優勝を果たしたときに「初優勝したあのときは、、、」という話が出てこないとも限らない。
だから、この”変な話”を、あえて日本のみなさんにもお伝えしておこうと思う。
【コトの経緯】
激しい雨に見舞われて、スタートが4時間も遅れた最終日の夕暮れどき。今年から同大会の新たな戦いの舞台となった米テキサス州ダラス郊外のトリニティ・フォレストの18番グリーン上で、ワイズはウイニングパットをしっかり沈め、今季新人ながら堂々の初優勝を達成した。
ガッツポーズを取り、その場で米テレビ中継のレポーターからマイクを向けられ、これまた新人とは思えないほど立派な優勝スピーチを堂々と披露。
そして、スコアリングのテント方向へ歩き出したワイズめがけて、若い美女が一目散に駆け寄ってきた。
ワイズは目を見開きながら両腕を広げ、彼女を抱き締めた。2人とも夢中で何か言葉を交わし合っているのが見て取れた。
そして、米ツアーの優勝者たちがみなそうするように、喜びのキスをしようとワイズが彼女に顔を近づけると、どうしたことか、彼女は顔をそむけ、祝福のキスは無し、、、、。その一部始終が米国のテレビ中継のカメラによって、すべて写し出されていた。
その場面を見ていた人々の一部がSNS上で「優勝者が彼女からキスを拒否された」と発信したことが発端となり、その話は瞬く間に拡散されていき、翌日には、ちょっとした騒動と化した。火曜日になっても騒ぎは静まるどころか、追加報道で一層広まっていった。
【コトの真相】
そんな事態を収拾すべく、ワイズがコトの真相を米メディアに語った。
「いろいろ言われているけど、これは本当に何でもない話なんです。
そもそも僕は、彼女があの場に来ていることを知らなかった。彼女は日曜日の朝の便で駆けつけてくれていたそうで、僕は彼女が駆け寄ってきた姿を見て、とても驚き、興奮状態になった。そして彼女も僕の優勝をとても喜び、とても興奮していた。
だから、あのときは2人とも、あまりにも興奮していたので、叫ぶように何かを口走っていて、彼女は僕がキスしようとしたことにも気づかず、しゃべり続けていた」
ただ、それだけのことで、ワイズと彼女は、その後も今も「これまで通り」、いや「今まで以上」の仲良しなんだとか。
「こんなことが、こんなに大きな話題になるなんて、面白いね」
そう言って笑ったワイズの言葉を受け、すぐさま続報を出した米メディアの記事の中には、こんな下りもあった。
『ワイズは優勝者が優勝直後に取るべき手順に、もっと慣れたほうがいい。才能溢れる新人だが、まだまだ学ぶべきことがたくさんある』
ユーモアとアイロニーがいい塩梅に込められたこんな記事が出るところも、いかにもアメリカらしいと苦笑させられた。