Yahoo!ニュース

ドイツ提供の対空戦車「ゲパルト」でロシア軍のイラン製神風ドローン「シャハド136」を上空で撃破

佐藤仁学術研究員・著述家
対空戦車「ゲパルト」(写真:アフロ)

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。

2022年10月に入ってからロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウを攻撃していた。国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義(軍事目標のみを軍事行動の対象としなければならない)を無視して文民たる住民、軍事施設ではない民間の建物に対して攻撃を行っていた。ウクライナの一般市民の犠牲者も出ていた。

イラン製の神風ドローンに対して、ウクライナ軍はドイツ政府が提供した対空戦車「ゲパルト」で迎撃している。その様子を米国のメディアが報じていた。

ドイツ国防省は2022年4月にウクライナ軍にドイツのクラウス・マッファイ・ヴェクマン社が製造している対空戦車「ゲパルト」50台を提供することを発表した。国防大臣のクリスティーネ・ランブレヒト氏は「今、まさにウクライナ軍が上空からの防衛に必要としている兵器です」とコメントしていた。ドイツ政府が発表した6月の武器供与リストにもゲパルトが含まれていた。

2022年7月にドイツから対空戦車「ゲパルト」3台が到着すると、ウクライナのオレクシー・レズニコウ国防大臣もSNSで「ウクライナの上空の防衛が強化されます」とドイツに感謝を伝えていた。ドイツのショルツ首相は2022年11月にウクライナに防空システムを引き続き提供して支援していくことを明らかにしていた。

▼ドイツ政府が提供した対空戦車「ゲパルト」でロシア軍のイラン製神風ドローンを迎撃

ロシア軍は以前はロシア製の攻撃ドローン「KUB-BLA」で攻撃を行っていたが、最近ではイラン製の神風ドローン「シャハド136」でウクライナ軍だけでなく、国際人道法(武力紛争法)に反して民間施設や民間人も標的にして攻撃を行っている。

上空からの攻撃に対する防衛は非常に重要であり、ミサイルだけでなく攻撃ドローンへの対策も安全保障の観点からも急務である。上空のドローンを機能停止したり、上空で爆破するためのシステムや兵器ももウクライナ軍には提供されている。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように軍人が持って上空のドローンを爆発させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。対空戦車「ゲパルト」は明らかにハードキルである。

民生品の監視・偵察ドローンは攻撃してこないので、電磁波などのソフトキルや軍人が対空機関砲などで撃墜することも容易だが、かなりのスピードで突っ込んできて爆発するような軍事ドローンは人間の軍人が迎撃するのは非常に危険である。そのため対空戦車の方が適している。

また地対空ミサイルシステムや防空ミサイルのような大型システムで監視ドローンを攻撃して爆発させるのはコストもかかるし、大げさかと思うかもしれない。しかし監視ドローンこそ検知したらすぐに破壊しておく必要がある。監視ドローンで敵を検知したらすぐに敵陣をめがけてミサイルを大量に撃ち込んでくる。監視ドローンとミサイルはセットで、上空の監視ドローンは敵からの襲撃の兆候である。また部品を回収されて再利用されないためにも徹底的に破壊することができる"ハードキル"の方が効果的である。

対空戦車「ゲパルト」
対空戦車「ゲパルト」写真:アフロ

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事