Yahoo!ニュース

ジェニファー・ロペス、突然のツアー中止の理由がなんとも嘘っぽいワケ

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
今年2月には夫婦仲良くプレミアに出席していたが…(写真:REX/アフロ)

 ジェニファー・ロペスが、この夏に予定されていた「This is Me…Live/The Greatest Hits」ツアーを、突然にして中止した。女優業に忙しく、歌手としても今年新アルバムをリリースしたばかりのロペスにとって、5年ぶりとなるはずのツアーだった。

 アメリカ時間金曜日に、本人がファンへのニュースレター「On the JLo」で発表。ロペスは「あなたたちをがっかりさせたことに胸が痛みます。本当に必要だと感じないならば絶対にこんなことはしないと理解してください」と謝罪した。ツアー主催のライブ・ネーションは、「子供たち、家族、親しい友人と一緒にいるため、ジェニファーは休みを取ることにしました」との声明を発表している。

 この声明を聞いて、メディアは即座に、この決断とロペスの結婚の危機を結びつけた。最近、ロペスと4度目の夫ベン・アフレックが離婚間際にあるということが、大ニュースになっているのだ。だが、だからといって、今から全部のコンサートをキャンセルするものだろうか。とりわけロペスの場合、過去が過去だけに、納得がいかないとの声が上がっている。

「今度こそは大丈夫と確信がある」と言っていたが

 2002年に大注目セレブカップルとなり、“ベニファー”とも呼ばれたこのふたりは、結婚寸前まで行きながら、数日前になって式を延期。結局、式が行われることはなく、数ヶ月後にふたりは破局し、その後それぞれに別の相手と結婚をして、子供も持った。そんなふたりが2021年に復活すると、“ベニファー2.0”として、メディアはまた大騒ぎ。「今回こそ絶対に大丈夫という確信があるからこそ、私たちはまた付き合ったの」とロペスが堂々と語った通り、今度はラスベガスとジョージア州で2度も結婚式を挙げ、ビバリーヒルズにこだわりの新居も共同で購入した。それぞれの子供たちが一緒に仲良くいる姿も、何度となくパパラッチされている。

2003年、婚約中のロペスとアフレック
2003年、婚約中のロペスとアフレック写真:ロイター/アフロ

 もう50代になっているというのに、ふたりの惚気ぶりは20年前のそれと変わらず。スーパーボウルで流れたアフレック主演のダンキン(旧・ダンキン・ドーナツ)のCMには、ロペスが本人役でカメオ出演して仲良し夫婦ぶりを強調。ロペスのアルバム「This is Me…Now」はアフレックへの愛を表現するもので、リリースに合わせ、ロペスは自腹で製作費2,000万ドルを出し、2本の映画を作った。ひとつはアルバムと同名の恋愛ミュージカル。もうひとつはタイトルからして「グレイテスト・ラブストーリー・ネバー・トールド」(これまでに語られた最高のラブストーリー)という、内容がすぐに推しはかれるドキュメンタリーだ。どちらにもアフレックが出演する。

 これらの映画がAmazon Primeビデオで配信されたのは、今年2月中旬。だが、5月初めのファッションの大イベント、メット・ガラに、ロペスはソロで出席した。アフレックは「ザ・コンサルタント」続編の撮影で忙しいからとのことだったが、その前日、彼は、L.A.で行われたNetflix主催のコメディショーにサプライズ出演しているのである。考えてみれば、その少し前から、ふたりが一緒にいるところはパパラッチされていない。また、アフレックは、ロペスの最新主演映画「アトラス」のプレミアにも出席しなかった。プレミアの場所は、夫妻が住むロサンゼルスだったにもかかわらず、だ。

「アトラス」ロサンゼルスプレミアに出席したロペス。夫アフレックの姿はなかった(Getty Images for Netflix)
「アトラス」ロサンゼルスプレミアに出席したロペス。夫アフレックの姿はなかった(Getty Images for Netflix)

 そんなところへ、アフレックはもはや、ロペスと購入した豪邸を出て別居生活を始めているという事実が発覚したのである。離婚弁護士こそまだ雇っていないらしいが、破局は目の前だとささやかれている。

売り上げが悪く、すでに一部の都市の公演が中止されていた

 今回、ツアーを諦めたのは、家庭が崩壊しつつある中、3度目の夫マーク・アンソニーとの間に授かった双子を守り、家族を大事にすることを優先するためだというのが、ロペス側が世間に伝えること。だが、本当にそうなのだろうか。

 そもそも、彼女の子供たちはもう16歳。彼らがもっと小さな頃から、ロペスは次々と絶え間なく交際相手を変えてきている。アンソニーと離婚した直後には、年下のバックアップダンサー、キャスパー・スマートと交際。彼と別れると、すぐに歌手のドレイクと交際し、その後に付き合った元MLBスター選手アレックス・ロドリゲスとは婚約までした。ロペスの子供たちは、ロドリゲスの前妻との子供たちとも仲良くなったのだが、ロドリゲスとの婚約破棄がなされる前に、ロペスはアフレックと復縁したのである。

アフレックと復縁する前、ロペスはアレックス・ロドリゲスと婚約していた
アフレックと復縁する前、ロペスはアレックス・ロドリゲスと婚約していた写真:ロイター/アフロ

 人生でずっと恋愛、婚約、婚約解消、結婚、離婚を繰り返してきた中で、ロペスが子供たちを気にし、家族を優先するために仕事をセーブしたことは一度たりともない。子供たちは、ママはそういう人だとわかっているはずだ。それなのに、なぜ今回だけ異例の行動を取ったのか。

 ツアーが中止された真の理由は、おそらく、ツアーのチケットの売り上げが思ったより悪いことだろう。すでにそれが原因で、いくつかの都市のコンサートがキャンセルされている。ツアーの名称も、最初は新アルバムと同じ「This is Me…Now」だったのだが、アルバムが38位とぱっとしないデビューを飾り、その翌週にはもっと落ちてしまったことから方向転換をし、新アルバムの歌だけでなく、過去のヒット曲も歌うことを前面に押し出すべく変更されたものである。彼女にとって、これはかなりプライドが傷つくことだったに違いない。会場が満席にならず、チケットも格安で買えるような状況になるくらいならば、今のうちにキャンセルし、家族を大切にする女性のイメージを強調するほうが得策と考えたのではないか。

破局しようとしている相手への愛を歌っても…

 それに、そもそも「This is Me…Now」は、アフレックへのラブレターだ。ロペスはアフレックと最初の交際をしていた2002年に、「This is Me…Then」というアルバムを出したことが、このタイトルにつながっている。一周してやはりまた戻ってきた、その運命の相手への愛を歌っても、実際には離婚が目の前に迫っているとあれば、観客の心に響きはしない。

 2本の映画を自腹で作ると決めた時、やめたほうがいいと、周囲の人たちはロペスを説得しようとしたという。世間を白けさせるだけなのはわかっているし、それ以上に、ふたりの関係に変化があったらどうするのかと、彼らは危惧したのだ。だが、ロペスは聞く耳を持たなかった。この運命的な愛をようやく手にした喜びを、彼女は、全世界に向けて叫びたくてしょうがなかった。残念ながら、結果は、周囲が恐れていた通りになってしまったというわけだ。

ロペスの主演作「アトラス」は、現在アメリカのNetflixでチャートの首位(Ana Carballosa/Netflix)
ロペスの主演作「アトラス」は、現在アメリカのNetflixでチャートの首位(Ana Carballosa/Netflix)

 だが、ロペスのキャリア全体が落ち目なのかというと、必ずしもそうではない。「アトラス」は、Rottentomatoes.comで19%と評価は最悪ながら、Netflixのアメリカでのアクセスランキングでは、現在、首位を獲得している。昨年の「ザ・マザー:母という名の暗殺者」も同様に批評家の評価は低く、ラジー賞にも候補入りする始末だったが、昨年末に発表されたNetflixの視聴時間レポートでは、上位にランク入りした。つまり、人は、彼女の映画をまだ見たいと思っているということだ。

 この後にも、公開予定の主演映画が2本控える。ひとつはスポーツ映画「Unstoppable」、もうひとつは名作舞台ミュージカルの映画化「蜘蛛女のキス」。前者はすでに撮影済み、後者はこれから撮影だ。複雑なのは、そのどちらも、アフレックが幼なじみのマット・デイモンと経営するプロダクション会社が製作し、アフレックがプロデューサーに名を連ねていること。これらの映画が公開される時、このふたりの愛はどんなところにあるのだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

猿渡由紀の最近の記事