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『ブギウギ』から一転、『モンスター』で異能の弁護士役の趣里「私自身に破天荒なところは全然ありません」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)カンテレ

朝ドラ『ブギウギ』で戦後を彩ったブギの女王を演じて、日本中を魅了した趣里が『モンスター』に主演している。常識にとらわれずゲームのように法廷闘争に挑む型破りな弁護士・神波亮子役で、『ブギウギ』の福来スズ子とは一転、クールでミステリアスな顔を見せる。手段を選ばず闇を突き詰める異色のリーガルドラマに挑む想いを聞いた。

回転寿司の看板を見つけるたびに入ります

――『モンスター』の制作発表会見では、ご自身は「回転寿司モンスター」とのお話が出てました。趣里さんほどの女優さんになると、回転してない寿司屋に行くのかと思っていました。

趣里 ロケ先や地方に行って回転寿司の看板を見つけると、もう怖いくらいに入っているんです(笑)。毎日、回転寿司でもいいです。

――大将が握っているような行きつけの寿司屋もあるんですか?

趣里 そういうお店に誰かと行くこともありますけど、どちらかと言ったら回転寿司が多いです。

――好きなネタというと?

趣里 嫌いなものはなくて何でも食べます。お寿司なら中トロ、白身、貝類、いくら……。本当に何でも好きですね(笑)。回転寿司だと、ラーメンとかフライドポテトとかサイドメニューも食べています。

『モンスター』制作発表会見より(撮影/松下茜)
『モンスター』制作発表会見より(撮影/松下茜)

白黒つけられない深いところに響きました

――『モンスター』はGP帯のドラマでは初主演ですが、たぶんいろいろオファーはある中で、慎重に作品を選んだのですか?

趣里 マネージャーさんと相談して決めていますけど、慎重というより「ぜひやりたいです」という感じでした。素敵なスタッフさんと一緒にドラマを作れるということで、弁護士役も難しいけどチャレンジしたいと、シンプルに思いました。

――台本を読んで惹かれるものがあったり?

趣里 1話の台本ができていて、自分の役を通さずに読ませていただきました。法廷ドラマですけど、人間の心がちゃんと描かれていて、ただ有罪・無罪で「良かったね」で終わらない。その先のところがテーマになっているように感じました。

――1話だと、法廷では問われなかったカウンセラーが自殺に導いたことが、最後に示唆されていました。

趣里 普通は見逃しがちなところ、目を背けがちなところまで迫っていて、白黒はっきりつけられない。でも、すごく深いところに響いてくる感じがしました。

法廷でパフォーマンスのように見せていて

――弁護士を演じるに当たって、撮影前から準備でしていたこともありますか?

趣里 共演のジェシーさんと一緒に、法廷での裁判を見学しました。

――今の演技に何か役立っていますか?

趣里 事実を確信して攻めていくのは、ドラマだからなのかと思っていましたけど、実際に法廷を目にすると、それでいいんだなと感じました。傍聴していてもわかりやすいように説明される弁護士さんの佇まいは、勉強になります。ドラマではエンターテイメントとして見せているところがあっても、芯にあるものは変わらない。無罪を訴える、勝訴を取りにいく姿が現実に見られました。

――劇中の亮子も法廷で、ステージに立つように振る舞っている感じがします。

趣里 パフォーマンスとして言っている台詞も、わざと芝居がかったように見せるところもあります。亮子は相手の切り崩し方が面白くて、法廷シーンは一番の醍醐味です。でも、法廷内では収まらないことにもなっていて。

(C)カンテレ
(C)カンテレ

普段はクールでなく、おしゃべり好きです

――会見では宇野祥平さんから趣里さんについて、「『ブギウギ』では笑顔が印象的でしたけど、今回はクールな役で立ち姿から全然違う」とのお話がありました。視聴者としては『ブギウギ』以前の趣里さんは、むしろクールやミステリアスな役のイメージが強くて。ご自分ではそうした役柄のほうが、よりハマりやすい感覚はありますか?

趣里 どうだろう。クールな役のほうが多いかもしれませんけど、自分ではどちらをやりたいとか決めていません。私自身はクールではないです(笑)。逆な感じ。おしゃべりが好きですし、楽しくやっています。

――撮影になったら、クールのスイッチが入って?

趣里 お芝居のときはそうなります。でも、人間にはいろいろな面があると思うんです。自分の思うクールさを出しています。

――今回の亮子だと、どんなことを意識していますか?

趣里 1人で作るものではなくて、監督がいて掛け合いがあって、日に日に亮子像が出来上がっています。脚本の橋部(敦子)さんには「亮子は子どもっぽいところがある」と聞きました。書かれた通りに演じていれば、自然とそのワード通りになっていくのを実感しています。

ゲーム感覚でも依頼人のためになっていて

――亮子は同僚の杉浦が「受けないほうがいい」という案件を「私やります」と言っています。子どもっぽさと繋がるのか、難しい案件ほど楽しい感覚なのでしょうか?

趣里 ゲーム感覚で行くので、クリアしたい気持ちはあると思います。難しければ難しいほど燃えるんですけど、それが依頼人のためにもなっていますし、実は人想いなんだと演じていて感じます。クールなようで、回を追うごとにいろいろな面が出てきて、1・2話の印象とは変わってきます。多面性があるのが人間で、亮子もそうなのかなと。

――もともと高校3年で司法試験に一発合格したほどで、自信もあるんですかね。

趣里 あると思います。あと、純粋に生きているんですよね。ゲーム感覚だからこそ、勝ちたい気持ちも強くて。

常識にとらわれてルールは守ってます

――亮子は常識にとらわれないということで、1話では相手方の会社に清掃員としてもぐり込んだりもしていました。そこは趣里さん自身にもある部分ですか?

趣里 私にはないです。わりと常識にとらわれるタイプです。破天荒なところは全然ありません。

――校則とかも守っていました?

趣里 守ります。ルールですから。信号は絶対に青で渡ります。

――車が全然通らないような道でも。

趣里 私は渡りません。自分の信念があって引っ張っていけるタイプの人は尊敬します。私は亮子みたいに人を動かせないので。

――人から驚かれるような行動もしないと?

趣里 しないです。普段もインドアで、家で寝ています(笑)。

――心配性だとも発言されていますね。

趣里 舞台の初日だと、稽古でしてきたことがうまくできるか不安になりますし、ドラマのイン前もみんなとまだ仲良くなってなくて、どういうふうに進んでいくのかな……と思います。自信満々で挑むことはありません。期待もあり、不安もあり。

――キャリアを重ねてきて、眠れないほどではないんでしょうけど。

趣里 一睡もできないことはないですけど、ソワソワはします。芝居の中でも緊張することはあって。でも、それも年々緩やかになってきました。

一度自分で考えたら現場ではフラットに

――今回の法廷衣装はアンリアレイジとのコラボで、エッジの効いたデザインになっています。そうした形から役に入る部分もありますか?

趣里 もちろんあります。衣装合わせのときに亮子の像がもらえたりしました。ちょっと風変わりで、いわゆる弁護士らしくないという役にしっくりくる感じでした。歩き方も衣装から決まっていった気がします。

――だいぶ大きかったわけですね。

趣里 髪型やメイクにも影響されますし、役を演じるのは自分1人の力ではできません。監督が導いてくれることもあれば、共演者の方とお芝居して「亮子ってこういうリアクションになるんだ」と発見もします。自分の考えや台本を読んだときの感覚はもちろんありますけど、一度体を通ったあとは、なるべく捨てるようにしていて。1回考えたら、現場ではフラットにいられたらいいなと。衣装や髪型も自分だけのイメージに寄らないようにしています。

――普段の趣里さんはどんな服を着ているんですか?

趣里 服は好きですけど、尖ったものはあまり着ません。でも、亮子が着ている服は尖っているとは思わなくて、プライベートでも着たい感じです。

お父さんとのシーンで何とも言えない気持ちに

――2話にはアイドルのダンスを完コピしていたというオチがありました。踊るのはお手のものですか?

趣里 完コピは本当にしましたけど、お手のものではないです。アイドルのダンスは初めてで、本物のアイドルさんが教えてくれて、すごく楽しかったです。

――公園で「足がつった」というくだりもありましたが、実際は普段から運動もしているんですか?

趣里 していないです。家でストレッチをするくらい。でも、もともとバレエをやっていたので、足がつることはないです。お芝居ではよく、足がつったりするキャラを演じさせていただいてますけど(笑)。

――他に前半の撮影で印象的だったことは?

趣里 いろいろなゲストの方が出るので、毎回見どころはあります。特に古田(新太)さんが演じる(失踪中の)お父さんとのシーンは、いろいろ大変な状況があって。何とも言えない気持ちになりました。

喜んでもらいたい気持ちはあります

――ストーリーに出てくるハラスメント、ルッキズム、生殖医療といった現代社会の問題に関心はありました?

趣里 生きていると考えざるを得ないです。それをどうこうするということでなく、自分の身にも起こり得る話だったりするので、気をつけてはいます。

――今後も連続ドラマにはどんどん出ていくんですか?

趣里 単にドラマに出たいとか、主役をやりたいということはなくて、出会いとタイミングです。自分にできることがあればやりたいと思いますし、今回のように一緒に作品を作っていきたいと感じたら、喜んでもらいたい気持ちはあります。

――仕事以外に、人生で成し遂げたいことはありますか?

趣里 前向きに楽しく過ごせたら何よりです。皆さんそうだと思いますけど、お仕事って大変じゃないですか。少しでも楽しいと感じる時間があれば頑張れるので、みんなで仲良く平和に生きていきたいです。

Profile

趣里(しゅり)

1990年9月21日生まれ、東京都出身。2011年に俳優デビュー。主な出演作はドラマ『ブラックペアン』シリーズ、『ブギウギ』、『東京貧困女子。-貧困なんて他人事だと思ってた-』、映画『生きてるだけで、愛。』、『もっと超越した所へ。』、『ほかげ』ほか。ドラマ『モンスター』(カンテレ・フジテレビ系)に出演中。

『モンスター』

カンテレ・フジテレビ系 月曜22:00~

公式HP

(C)カンテレ
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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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