人気声優の不倫・降板 男女で割れるアニメファンの意見
声優の古谷徹さんがアニメ「名探偵コナン」のキャラクター・安室透役を降板したことを受けて、ネットでは「当然」「そこまでしなくても」など、さまざまな意見がありました。ただし、SNSはバズることを意識しがちな世界で、注目を集めるために、鋭く極端な意見になりがち。そこで一人一人に意見を聞くと、男性と女性で意見が割れる傾向にありました。
アニメ好きの方に意見を聞くにあたって考えた質問ですが、(1)古谷さんの不倫をどう思うか(2)降板をどう思うか……の二つに絞り、なるべく分かりやすくするようにしました。実際に話を聞くと、男女の意見に明確な違いがありました。コンテンツを守りたいという意見、コンテンツへの愛は共通しているのに、興味深いところです。
◇男性ファンは「仕方ない」
まず男性ファンの声です。基本スタンスとして「不倫は個人的な問題」と考える人が圧倒的で、降板に対しても昨今のコンプライアンス順守を踏まえて「仕方ない」という姿勢でした。怒りを感じるというよりあきらめの境地で、全体的に冷静でした。
40代男性(ガンダム好き) 役者のプライベートの醜聞なんて、別に作品のファンには関係ない。聞きたいのは「安室さんの役の声」であって、「演者の人格からにじみ出す素晴らしい何とか」ではない。我々ファンが欲しいのは、素晴らしいアニメ作品の成果物。
40代男性 不倫だけであれば、社会的制裁はなくて良い。今回の場合は、相手の女性を相当傷つけたので降板もやむなし。しかも、不倫相手との会話で安室透のキャラを使った報道もあり、「安室透と不倫」が関連付けされてしまった。声優も多少はプライベートで「キャラの私物化」をしていると思うが、表に出たときに不倫で使ったのはまずかった。ただし、降板という形で社会的制裁を既に受けているので、それ以上の制裁は必要ない。
40代男性(古谷さんのファン) 降板はショック。正直、中の人のことで、降板させる必要があるのかというのが最初の印象。ただし、ファミリー向けの作品であり、昨今の流れからすると致し方ないかも。不倫は表に出ないものも含めるとたくさんあるわけで、しかも当事者以外は関係がない。有名人ということを差し引いても、罰が強すぎる気がしている。ファンが迷惑をこうむるのは、納得がいかないし悲しい。
◇女性は「降板」を肯定
男性は「作品に罪はない」という考えに立ち、古谷さんへの嫌悪感はさほど感じません。対して女性陣は、嫌悪感を隠しませんし、コメントから怒りの炎がにじみでている感じです。そこらへんの記事よりも、迫力のある内容です。
30代女性(コナンには興味がない) 声優も表に出て、作品やキャラクターの看板を背負ってる以上、法律や一般的な倫理観は守ってほしい。表に出る以上、週刊誌に抜かれるのも仕方ないし、スキャンダルでの降板もやむなし。私はかなり不倫とか嫌なタイプなので、偏ってると思う。自ジャンルの声優も何件かスキャンダルを抱えているが、普通に嫌。
30代女性(安室透に入れ込んでない) 世代なので降板は普通にショック。でもやったことを考えると仕方ない。本人が(不倫を)素直に認めてるのは凄いが、スキャンダルで降板して欲しくなかった。亡くなって降板より悲しい。
30代女性(同人誌を購入するほど安室透好き) 降板と聞いて安心。ファンには申し訳ないが「痛い人」というイメージを持っていた。SNSで安室になりきった言動をしたり、金髪にしたり、キャラクターと自分の境界があいまいという印象。キャラクターの人気を、自分の人気と思うのは苦手。ただし現在、声優の露出も増え、マーケティング側も狙って声優を使っている。そして、週刊誌やSNSの反応も気持ち悪い。私の「お気持ち」は、友人には言ってしまうものの(1人では抱えられないから)、わざわざ世界に表明したり、ましてや誰かを攻撃したりするものではないと思う。
40代女性(安室透推し7年目) 安室透とサボの降板は妥当。〇〇(かつて不倫が報じられた人気声優)の時も無理でしたが、個人的に嫌悪感はそれ以上。暴力や中絶はもちろんだが、女性を喜ばせるために安室透のせりふを使ったというのが一番無理。私は、キャラと中の人を分けて考えられるし、不倫は当人たちの問題だ。しかし、キャラの人気を利用しての不倫はさすがに擁護できない。安室透の人気=古谷徹の人気では無いと思う。自分の行為がファンをどのような気持ちにさせるのか考えて欲しかった。
40代女性(声優好きでない) オタクうんぬんよりは人としてどう見るか。男性に否定派が少ないように見えるのは、同性……不倫を行った加害者側なので、被害的な気持ちは湧きにくいから。一方、女性側は不倫をされて被害を受けた側で、同性として被害的な気持ちが大きいゆえに失望している人が多いのかなと。以前、推しのバンドが不倫で騒動になったときも、まっさきに被害を受けた相手の気持ちが心配になり、推しではあるものの、行為は許せないとなった。声優はアイドルと似た職業で、トークなどの仕事もあるように「自身を売る商売」。騒動を起こしたらどうなるのかは想像できると思う。
50代女性 妻子孫までいる年齢なのに、自分がキャラのように振舞っているのが気持ち悪い。キャラ人気はあくまでもそのキャラクターであって中の人ではない。声を聞くと頭をよぎるので嫌悪感が発生すると思うから、降板はあり。そして不倫相手の女性も悪い。ファンなら結婚していることを知っているはず。安室ファンの女性だったから優越感もあったとは思うが、結果がこれ。私の周りは同じ意見の女性が多い。
50代女性(名探偵コナン好き) 「不倫で降板すべき」とは思わないが、安室の名セリフを不倫相手に言って喜ばせていたのが、ちょっと無理。今後、そのセリフを別の声優さんがしゃべったとしても、思い出してしまう。降板発表前にコナン映画の一挙放送をやっていたが、見ていたら、あのセリフのところで「わー!」となった。
◇ファンを一気に失う危険性
意見のバリエーションがあったので、女性陣のコメントを多めに掲載しました。まず、安室透のファンも多いのが分かります。そして「可愛さ余って憎さが百倍」という感じでしょうか。倫理観の欠如、安室透の声を不倫に使ったこと、ファンのことを考えるべき……など「怒りのポイント」の違いはありつつも、「裏切り」を強く感じているのも特徴です。
特に大きな違いを感じたのは、不倫で報道された「中絶」というワードへの違いでしょう。妊娠、中絶に実感のない男性はほぼ触れませんが、実感のある女性は自分ごとのようにとらえているように思えました。不倫相手の女性を批判する声もありますが、一方で心配する声がありました。
なお、女性陣からは、原作者に対する批判もありました。安室透は、古谷さんの演じたキャラクター「アムロ・レイ」と、古谷さんの名前から来ています。そして声優の池田秀一さんがモデルになったキャラ・赤井秀一の存在も挙げながら、原作者が二次創作しているのではないかと疑問視し、ファースト(初期)ファンは安室、赤井を嫌いな人は多い……という見方もありました。
いずれにしても、声優(演者)の不倫トラブルは、異性のファンを一気に失う危険性があるということでしょうか。今回の話だけではなく、コンテンツ全体に言えることなのでしょうが……。これらの反発を考えると「名探偵コナン」と「ワンピース」で、古谷さんの降板は避けられない話だったのでしょう。
世の中に男女がいる限り、色恋沙汰の話は消えませんが、ファンの支持はコンテンツの生命線ですから、関係者は改めて気をもむことになりそうです。