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イヤホンジャックもUSB Type-Cに

津田建二国際技術ジャーナリスト・News & Chips編集長

2カ月ほど前に、「これからのPCコネクタはUSB type-Cに一本化」(参考資料1)という記事を書いた。わずかの間にUSB Type-Cコネクタの応用は、イヤホンジャックにまで及ぶようだ。つまり、アナログ時代から長い間使われてきたイヤホンジャックも、これからはUSB Type-Cコネクタに置き換わるだろう。このようなトピックスが先週米国で開催されたインテル開発者会議(IDF)で議論されたと報じられている。

実は、今年の春ごろからiPhone 7のデザインで、オーディオ用のイヤホンジャックが給電用の平べったいコネクタ(Lightningコネクタと呼ばれている)に代わるという噂があった。USB Type-Cコネクタは、アップルのライトニング(Lightning)コネクタ(図1)と似た表裏の区別なく挿して使えるものであり、アップルのiPhoneはこの意味で先行したコネクタとなっている。似たようなコネクタであるUSB Type-Cがパソコンからモバイルに使われるようになり、今回さらに3.5mm径のイヤホンジャック(オーディオ端子)までType-Cに代わろうという訳だ。

iPhoneのライントニングケーブル&コネクタ
iPhoneのライントニングケーブル&コネクタ

Type-Cはアップルのコネクタと同様、電源ラインも搭載されており、一つのコネクタで信号ラインと電源ラインを含んでいる。音楽を楽しんだりビデオを視聴したりするのも全て、一つの端子ですむなら便利になる反面、コネクタメーカーに与える影響が大きい。USB Type-C仕様のコネクタ、イヤホンジャックコネクタとの生産比率を今後変えていく必要があるだろうし、イヤホンジャック専門の生産者ならUSB Type-Cへの参入も見据えていかなければならない。

USB Type-Cコネクタには、iPhoneのイヤホンと同様、音量調節ボタンも組み込めるため、無駄な消費電力を減らすことができ、電池を長持ちさせられる。また、その厚さは2.6mmと決まっているため、オーディオのイヤホンジャックの厚さ3.5mmよりも薄くなり、よりスリムなモバイル機器を設計できるようになる。

さらにデジタルオーディオは、アナログと違い、さまざまな音に加工できる。例えば、大きなコンサートホールで聞くような音響を実現したり、あるいはジェットエンジンや大型列車のような大きな騒音を打ち消し合ったりすることもできる。このためアナログでドルビーやボーズのようなプレミアムなオーディオ会社の製品ではなくても、プレミアムな音楽を手軽に楽しめるようになる、とインテルのアーキテクトであるブラッド・サウンダーズ氏がIDFで述べたようだ。

USB Type-C規格に信号線と電源線を含めると同時に、表裏どちらに挿してもかまわないというメリットは使い勝手が極めて良い。先駆的な製品では、アップルのMacBook、HPのSpectreノートパソコン、グーグルのNexus 6P、サムスンのGalaxy Note 7ファブレット(電話を意味するPhoneと、Tabletとの造語で、画面サイズ5~6.5インチのスマホを指す)にはすでに搭載されている。

テクノロジー的には、Type-Cの電源ラインは100Wまで使えるため、急速充電が可能になる。もちろん、プロトコルの取り決めやパワーマネージメントICなどの半導体技術がモノを言う。インテルはFPGAメーカーのアルテラを2015年末に買収しており、アルテラはその前の2013年に、パワーマネジメントメーカーのエンピリオン(Enpirion)を買収して手に入れている。つまりインテルはパワーマネージメント部門も持っており、特に微細化技術が必要な高集積マイクロプロセッサやSoC、アプリケーションプロセッサに欠かせない低電圧・大電流の電源設計には絶対的な自信を持つ。インテルのUSB Type-C推進により、この先ほぼデファクトスタンダートとなろう。

(2016/08/21)

参考資料

1. これからのPCコネクタはUSB Type-Cに一本化(2016/06/25)

国際技術ジャーナリスト・News & Chips編集長

国内半導体メーカーを経て、日経マグロウヒル(現日経BP)、リードビジネスインフォメーションと技術ジャーナリストを30数年経験。その間、Nikkei Electronics Asia、Microprocessor Reportなど英文誌にも執筆。リードでSemiconductor International日本版、Design News Japanなどを創刊。海外の視点で日本を見る仕事を主体に活動。

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