入院患者は対人口比率でも減少中…入院・外来率の推移(2019年時点最新版)
医療技術の進歩とともに、多様な病症への対処法が確立され、医療施設で受療が可能となり、多くの人が病院へ足を運び、治療・入院するようになった。昨今の日本における対人口比の入院・外来受療率の推移を、厚生労働省が定点観測的に実施している「患者調査」(※)の結果から確認していく。
同調査によると医療技術の進歩発展や公衆衛生の啓蒙、社会インフラの整備などを受け、入院患者総数は漸減。一方、高齢化に伴い外来患者数は高齢者の増加を原因とし、総数はほぼ横ばいに推移している。
入院・外来動向に関して総数ではなく、対人口比率で見ると外来率は横ばい、今世紀に入ってからは漸増、入院率はわずかながらも減少の動きを示している。
入院率は1990年をピークに、少しずつではあるが減少中。医療技術の進歩に伴い、入院しなくても済む、入院が必要にしても日数が少なくて済むようになったからに他ならない。他方、外来受療率はほぼ横ばい、今世紀初頭からに限れば増加の動きすら示していた。これは高い外来受療率を示す高齢者の総人口比が増加したからに他ならない。また以前は入院が不可欠だった治療も、外来で済むようになった治療もあるだろう。
これを主要年齢階層別に区分したのが次のグラフ。
実のところ高齢者においてですら、入院・外来受療率は漸減している。高齢層の外来・通院者数が漸増しているのは、その階層の総人口が増加しているからに他ならない。100人の1%は1人に過ぎなくとも、1万人の1%は100人にもなる。
気になる動きとしては、14歳までの子供においては、今世紀に入ってから外来受療率増加の動きが見えている。これは多様な可能性が考えられるが、喘息やアレルギーのように経年変化で増加している病症の治療を受ける人が増えてきたこと、過去においては病院に通うまでも無いとしていた病症に対しても保護者の意識変化により通院させるようになったことなどが考えられる。
無論入院率は14歳までの子供でも減少しているため、単純に脆弱化したわけではないことは言うまでもあるまい。
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※患者調査
直近分は2017年10月17日から19日のうち、病院毎に指定した1日(診療所は10月17日・18日・20日のうち指定した1日)において、各状況を確認したもの。歯科診療所(いわゆる歯医者さん)は外来のみの調査。患者数は調査日当日の該当人数(抽出調査のため統計値は推計)、退院患者(の在院日数)は同年9月に退院した患者の平均値。なお2011年分は震災の影響で宮城県の石巻医療圏、気仙沼医療圏および福島県が未調査のため、それらの地域の統計値は未反映。
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