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ポーランドが提供した神風ドローン「WARMATE」ウクライナでロシア軍迎撃に貢献

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

ウクライナ紛争での軍事ドローンといえばトルコの軍事企業バイカル社の「バイラクタルTB2」によるロシア軍への攻撃が目立っている。だがウクライナ製の監視ドローンや攻撃ドローンの他、アメリカや欧州諸国からも軍事支援として監視ドローンや攻撃ドローンが提供されて実戦で使用されている。

ポーランドからはポーランド企業WBエレクトロニクスが開発した攻撃ドローン「WARMATE」がウクライナ軍に提供されている。「WARMATE」は標的を探知すると弾薬を搭載した機体が突っ込んでいき爆発して標的を破壊する、いわゆる「神風ドローン」と呼ばれるタイプの攻撃ドローンである。同社では監視ドローン「FlyEye」もウクライナ軍に提供している。

ウクライナ軍ではポーランドの攻撃ドローン「WARMATE」がロシア軍の標的に突っ込んでいき爆破し、破壊した「WARMATE」の残骸を公開していた。

▼ポーランド製神風ドローン「WARMATE」

「神風ドローン」検知したらすぐに破壊

このタイプの攻撃ドローンは「Kamikaze drone(神風ドローン)」、「Suicide drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンの名前に「神風」が使用されるのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン(Kamikaze Drone)」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。今回のウクライナ紛争で「神風ドローン」は一般名詞となり定着している。

ウクライナ語では「Дрони-камікадзе」(神風ドローン)と表記されるが、ウクライナ紛争を報じる地元のニュースで耳にしたり目にしたりしない日はないくらいだ。

米国バイデン政権は2022年3月に、米国エアロバイロンメント社が開発している攻撃ドローン「スイッチブレード」を提供し、すでにウクライナ軍によって利用されている。攻撃用スイッチブレードの「Switchblade300」と「Switchblade600」も上空からドローンが標的に突っ込んでいき、戦車などを破壊することができる、いわゆる「Kamikaze drone(神風ドローン)」のタイプである。

攻撃ドローン「WARMATE」はロシア軍の迎撃にも貢献しているが、他のドローンと同様に多くが上空でロシア軍によって破壊されている。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。爆弾などを搭載していない小型の監視・偵察ドローンならばジャミングで機能停止させる"ソフトキル"で迎撃できるが、中型から大型の攻撃ドローンの場合は対空機関砲や重機関銃のような"ハードキル"で上空で爆破するのが効果的である。

弾薬を積んだ「神風ドローン」が突っ込んでくると殺傷力があり被害が大きい。破壊力も甚大であることから大きな脅威だ。とにかく上空のドローンを察知したら、すぐに機能停止させたり破壊しておく必要がある。弾薬を搭載した「神風ドローン」は機能停止させるだけでは、地上に落下して爆破する可能性もあるので"ハードキル"で上空で徹底的に破壊しておいた方が良い。

▼ウクライナ軍が公開したロシア軍の標的に突っ込んで破壊したポーランドの神風ドローン「WARMATE」

▼ロシア軍によって破壊されたポーランドの神風ドローン「WARMATE」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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