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月経周期に伴う皮膚トラブル?プロゲステロン過敏症について知ろう

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

プロゲステロン過敏症は、女性ホルモンの一種であるプロゲステロンに対して過剰な反応を示す病気です。月経周期に関連して皮膚症状などが現れるのが特徴で、自己免疫疾患の一種と考えられています。

【プロゲステロン過敏症の症状 - 皮膚トラブルに要注意!】

プロゲステロン過敏症の代表的な症状は皮膚のトラブルです。具体的には、じんま疹やアトピー性皮膚炎、湿疹などが月経周期に合わせて繰り返し現れます。これらの症状は生理の中頃から始まり、生理終了とともに治まるのが一般的です。

皮膚以外にも、呼吸器症状や消化器症状を伴うこともあります。喘息やアレルギー性鼻炎、吐き気などが月経に関連して起こる場合は、プロゲステロン過敏症の可能性を疑う必要があるでしょう。

プロゲステロン過敏症は症状が非特異的なため、見逃されやすい疾患だと考えられます。月経周期に伴って繰り返す皮膚症状や呼吸器症状などがある場合は、積極的に検査を受けることをおすすめします。

【プロゲステロン過敏症の診断 - 皮膚テストと血液検査が有効】

プロゲステロン過敏症の診断には、皮膚テストと血液検査が用いられます。皮膚テストでは、プロゲステロンを皮膚に塗布または注射し、反応を調べます。即時型のアレルギー反応(I型アレルギー)が起こる場合は、プロゲステロンに対するIgE抗体の関与が示唆されます。

一方、遅延型のアレルギー反応(IV型アレルギー)が疑われる場合は、パッチテストが有効です。プロゲステロンを含む軟膏を皮膚に貼り、48時間後の反応を評価します。

血液検査では、プロゲステロンに対するIgEやIgG抗体の有無を調べます。特異的IgE抗体の測定にはELISA法が用いられ、感度の高い検査が可能となっています。

ただし、現時点ではプロゲステロン過敏症の診断基準は確立されておらず、皮膚テストや血液検査の評価方法も施設によって異なります。診断には総合的な判断が必要とされています。

【プロゲステロン過敏症と皮膚との関係 - ホルモンバランスの重要性】

プロゲステロン過敏症が皮膚に与える影響は大きいと考えられています。プロゲステロンは炎症を抑える働きを持つホルモンですが、過敏症ではこの働きが十分に発揮されません。その結果、炎症性サイトカインの産生が亢進し、皮膚の炎症が引き起こされると考えられています。

女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンのバランスも重要なポイントです。エストロゲンは細胞性免疫を抑制する働きを持ち、プロゲステロンと拮抗します。プロゲステロン過敏症ではこのバランスが崩れ、皮膚の免疫応答に影響を及ぼすと考えられています。

プロゲステロン過敏症は稀な疾患ですが、皮膚に関連する症状を呈する女性には念頭に置くべき病気と言えるでしょう。症状や診断について正しい知識を持ち、適切な治療を受けることが大切です。気になる症状がある場合は、早めに皮膚科専門医に相談することをおすすめします。

参考文献:

1. Foer D, Buchheit KM. Presentation and natural history of progestogen hypersensitivity. Ann Allergy Asthma Immunol. 2019;122(2):156-159. doi:10.1016/j.anai.2018.10.023

2. Front Allergy. 2024 Apr 24;5:1384140. doi: 10.3389/falgy.2024.1384140. eCollection 2024.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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