今年はデジタル通貨元年に
コロナ禍にあってやや注目度が薄くなった感もあるが、今年はデジタル通貨元年とも呼ぶべき年であったかと思われる。
中国は今年10月に、ハイテク都市の深センを皮切りにデジタル人民元の大規模な実証実験をスタートさせた。デジタル人民元とは、中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency、CBDC)と呼ばれるものとなり、それ自体が法定通貨となる。
そして、カンボジアの中央銀行は10月28日に、中央銀行デジタル通貨システム「バコン」の運用を開始した。このデジタル通貨は日本企業の技術を採用したものである。カンボジア国立銀行は、日本のフィンテック企業のソラミツと共同でバコンを開発し、昨年7月からカンボジア全土で試験運用を行っていた。
中央銀行デジタル通貨は、カリブ海の島国バハマでも本格的な運用が始まったと報じられている。
日銀は現時点で中央銀行デジタル通貨を発行する計画はないとしているが、決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくとしている。
そして、こちらはCBDCではないが、民間の発効するデジタル通貨についてもあらたな動きが伝えられた。
フェイスブックが主導する暗号資産「リブラ」の管理団体リブラ協会(本拠地:スイス・ジュネーブ)は12月1日に、暗号資産と団体の名称を「ディエム(Diem)」に変更し、2021年の発行を計画していることが明らかになった。
リブラからディエムに変更された際に、いくつかの修正も加わった。リブラは複数の法定通貨(USD/EUR/GBP/JPY)を担保としたバスケット型ステーブルコインとして発行される予定であったが、ディエムはバスケット型から単一型へと変更され、まずは米ドルを担保にして発行される。
発行が予定されている担保資産は米ドル(USD)に加え、ユーロ(EUR)、ポンド(GBP)、そしてシンガポールドル(SGD)が予定されているそうで、リブラの際に含まれていた日本円(JPY)は除外されている。
日本でもデジタル通貨の発行に向けた取り組みが本格化しつつあり、メガバンクやNTTグループなど30社超が組み、2022年にもデジタル通貨の共通基盤を実用化するとも報じられた。
中国やカンボジア、バハマでのCBDCの運用がどのようなものになっていくのか、実例としてその動向も注目されよう。
CBDCに対し、民間が発行するデジタル通貨に対しては各国中央銀行などが監視の目を強めているようにも思われる。マネーロンダリングなどへの利用も警戒されているとともに、デジタル通貨そのものの安全性、利便性などにも注意を払っているとみられる。
ネット社会にあってデジタルでの決済は今後さらに拡がってくることが予想され、それにはデジタル通貨が使われる可能性は確かに高いかもしれない。しかし、あくまでそれは使う人の立場が最も優先されよう。特に民間が発行するとなれば、それ相当に利益というか見返りも意識してのものとなろう。それがどのようなものであるのかも考えておく必要がある。