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パリ同時多発テロ フランスの新聞はどう報じたか

小林恭子ジャーナリスト
パリの数か所で、多発テロが発生した(写真:ロイター/アフロ)

13日夜に発生したパリの同時多発テロで、120人を超える死者が出た。オランド仏大統領は6か所でのテロ行為を「『イスラム国(IS)』による攻撃」と述べた。

フランスの新聞はこのテロをどのように報じたのだろうか。

BBCニュースのサイトから、一部を拾ってみた。

なぜフランスでこのようなテロが起きたのか?各紙のコメンテーターたちは、ISに対するフランスの空爆へのリアクションであった、という点では一致している。フランスがISが拠点を置くシリアで空爆を開始したのは、9月である。しかし、今回のパリ・テロで多大な数の犠牲者を出したものの、フランスが国内外のIS討伐方針を変える必要はないという見方が圧倒的だった。

フランスの新聞の1面
フランスの新聞の1面

「リベラシオン」の社説はこう書いた。「1990年代に発生した(元植民地)アルジェリア内戦(注:アルジェリア政府軍と複数のイスラム主義の反政府軍との間の武力紛争)でのし烈な戦いの最中でも、フランスは今回ほどの暴力行為を目にしたことがなかった。フランス国、その政策、国際的な役割が殺人者たちのターゲットとなった」

「このテロ事件を中東で起きている戦いと関連付けないのは不可能だ。フランスはその役割を中東で果たしている。今後も、一糸乱れずこれを全うするべきだ」

「ル・パリジャン」紙の1面には、「今度は、戦争だ」という見出しがついた。局地戦ではなく、フランス対ISという戦争が起きている、という認識であろう。

「ル・フィガロ」紙は、シャルリ・エブド事件での殺りく以降、「フランスはまたしても恐怖状態に陥った。情報当局が恐れていた、最悪のシナリオだ」。「IS討伐のための有志連合に入ってから2年が経ち、フランスは(ISが潜む)イラクへの攻撃に焦点を合わせ、12月にはペルシャ湾に原子力空母『シャルル・ド・ゴール』を配置することを決定した。この戦争宣言に、テロリストたちはこの世の終末の場面で応えたといえる」。

「ルモンド」紙は、「重い心、冷静な頭」という見出しの後に、こんな文章をつけた。「テロリストはまた攻撃を仕掛けるだろう」

「私たちは長期戦を心得る必要がある。自由で、創造的で、オープンな社会として機能することを止めてはならない」。「私たちが住む都市の生活空間を永遠に閉じてしまえば、テロリストの勝利になる。危険とともに生きることを学ぶべきだ」。

「レゼコー」紙はこう書いた。シリアへの空爆を停止するようにフランスに圧力をかけることで、「ジハディストたちは、アルカイダが2004年3月にマドリードで起こしたテロ(191人が死亡)のような結果を求めていることは明白だ。(2003年に)米国と肩を並べてイラクに軍事介入したスペインに罰を与えたように、である」。

マドリード・テロから間もなくして、スペインの社会主義政権はイラクでの軍事行動を停止することを決めた。「それ以来、スペインはテロの対象にはなっていない。これはアルカイダがそう決めたからなのか、それともスペインのテロを取り締まる捜査当局のおかげなのか、あるいは大規模な攻撃の計画が困難であるためかははっきりしない」。

フランス24の最新の報道によれば、少なくとも127人が亡くなったテロ行為は「3つのチームによって実行された」。

352人が負傷し、そのうちの99人が重傷だ。

テロ実行犯のうちで8人が当局によって殺害されたが、そのうちの3人は自爆テロ用のチョッキを着用していた。共犯者がまだパリ市内外で逃亡中の可能性があるという。

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊『なぜBBCだけが伝えられるのか 民意、戦争、王室からジャニーズまで』(光文社新書)、既刊中公新書ラクレ『英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱』。本連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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