あの1998年横浜にどこまで迫れるか? 27連勝の大阪桐蔭が挑む年間公式戦無敗
今日から高校野球の近畿大会が始まった。8校が出場するなか、注目はなんといってもセンバツ優勝の大阪桐蔭だ。昨年秋から秋季大阪府大会、近畿大会、明治神宮大会、そして今年のセンバツとすべて無敗で優勝。現在、公式戦27連勝の王者である。
センバツでは、その力が圧倒的すぎた。なにしろ、準々決勝からの勝負どころ3試合すべてが二ケタ得点なのだ。5試合のうち1試合は不戦勝だから、実質4試合で51得点。ことに圧巻だったのが、大会を通じてのホームラン18本中、11本を占めた爆発力だ。
これは1984年、PL学園(大阪)が5人でマークした8本を大幅に上回る新記録で、1チームで7人がホームランを打つのも最多だ。市和歌山との準々決勝では6回、伊藤櫂人の1イニング2本を含む3本塁打。この試合のチーム6本塁打も大会2度目のタイ記録で、1試合チーム43塁打は新記録だった。
バッティングが記録ずくめなら、投げても川原嗣貴、2年生左腕の前田悠伍でチーム防御率は0.75。昨年は春は初戦、夏は2回戦敗退と、チーム初めて甲子園で負け越したのを取り返すような強さだった。そしてセンバツ後の春季大阪府大会でも、決勝でライバル・履正社を下してV。エース前田が3回に2点を先制されたが、直後に松尾汐音のソロ本塁打で追いすがるなど小刻みに点を奪い、逆転してのものだった。
「前田が打たれたなかで、野手がどうするかも見たかった。だから"打たれろ"と思っていました(笑)」
と西谷浩一監督、早くも夏を見すえているようだ。
松坂の横浜は無敗の公式戦44連勝
新チーム結成からここまで公式戦無敗となると、思い出すのが1997〜98年の横浜(神奈川))だ。
松坂大輔(元西武ほか)らが最上級生になった横浜は、ほかにも捕手・小山良男(元中日)、一塁手・後藤武敏、外野手・小池正晃(いずれも元横浜ほか)ら強力なメンバーをそろえて秋の神奈川大会、秋季関東大会、明治神宮大会、98年にはセンバツ、神奈川県大会、春季関東大会、選手権東神奈川大会、夏の甲子園をことごとく負けなしで制覇する。おまけに、地元・神奈川で開かれた国体でも優勝して、この代のチームはなんと公式戦を44勝無敗で終えたのだ。その44試合を列挙すると、
▽97年秋季県大会
11対1市ヶ尾 10対0氷取沢 14対4鶴見工 4対3藤嶺藤沢 14対0茅ヶ崎西浜 8対4東海大相模 7対1川崎北 7対1横浜商 9対0日大藤沢
▽秋季関東大会
11対1水戸商(茨城) 9対0浦和学院(埼玉) 2対1日大藤沢
▽明治神宮大会
5対1豊田西(愛知) 5対2国士舘(東京) 5対3沖縄水産
▽98年選抜高校野球大会
6対2報徳学園(兵庫) 3対0東福岡 4対0郡山(奈良) 3対2PL学園(大阪) 3対0関大一(大阪)
▽春季神奈川大会
10対0柏陽 12対2川崎北 4対0慶應 4対0横浜商 17対8東海大相模
▽春季関東大会
3対0埼玉栄 1対0八千代松蔭(千葉) 6対5坂戸西(埼玉) 1対0日大藤沢
▽選手権東神奈川大会
6対0神奈川工 10対0浅野 10対0武相 12対0鶴見工業 25対0横浜商大 14対3桐光学園
▽全国高校野球選手権大会
6対1柳ヶ浦(大分) 6対0鹿児島実 5対0星稜(石川) 9対7PL学園(南大阪) 7対6明徳義塾(高知) 3対0京都成章
▽国民体育大会
3対2日南学園(宮崎) 18対2星稜 2対1京都成章
なんとも破天荒。過去の記録は定かではないにしても、少なくとも同一チームで3大大会制覇(神宮大会と春夏連覇)を達成しているのは、過去に横浜だけである。そもそも神宮大会は、90年代終盤までは全国大会とはいえなかった。いずれにしろ、3大大会を含む公式戦無敗というのは史上唯一だ。
今後も破られそうにない……と思っていたら、あと一歩まで迫ったのが、2018年に史上初めて2度目の春夏連覇を果たした大阪桐蔭の最強世代だ。17年秋の新チームは11連勝で大阪、近畿大会を制したが、神宮大会準決勝で敗れて連勝は12止まり。それが18年になるとセンバツ、春の大阪、春の近畿大会、選手権の北大阪、そして甲子園とすべて優勝で27連勝だ。
さらに、天候不順で4校優勝だった国体も2連勝。この世代は結局公式戦41勝1敗で、もし17年秋の神宮大会も優勝していたら、横浜に続く年間無敗の4大会制覇となるところだった。
さて、2022年の大阪桐蔭。明日が初戦の春季近畿大会(3)、さらに夏の大阪大会(7)、夏の甲子園(5〜6)、国体(3〜4)を無敗ですべて優勝したら、それぞれの試合数はカッコ内のように想定される。上積みされる白星は18〜20というところ。年間4冠となれば、最低でも45連勝だ。つまり98年、あの横浜の数字を超えることになる……というのは、ちょっと気が早いか。