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「スリムクラブ」真栄田、ラグビーを“一発屋”にしないために

中西正男芸能記者
たぎるようなラグビーへの思いをぶちまけた「スリムクラブ」真栄田

昨年、最も注目を集めたスポーツといえば、ラグビー。芸能界にもラグビー経験者は多いですが、沖縄県代表で国体にも出場するなど、抜群の実績を残しているのがお笑いコンビ「スリムクラブ」の真栄田賢さん(39)です。「我を貫くよりも、チームが勝つ喜びを感じる“ラグビーあたま”が『アメトーーク!』とか、今の仕事でもメチャメチャ役立っています」と言葉に力を込めます。また、2019年のラグビーワールドカップ日本大会に向けて考える“恩返し”とは。尽きることのないラグビー愛を語りました。

高校1年で184cm115kg

僕がラグビーを始めたのは高校1年からで、先輩に誘われたのがきっかけでした。今でも85kgはあるんですけど、当時はね、とにかく、デカかったんです。高校入学の時で、身長は今と変わらず184cm。体重は115kgあったんです。中学の時は野球と柔道をしてはいたんですけど、そこまで鍛えていたわけではなく、さらに、ラグビーなんてやったこともない。でも、高校のラグビー部の先輩が熱心に誘ってくれて、練習に行ったら、見よう見まねで相手にぶち当たるだけで、先輩が「いいよ!!お前がいてくれたら、本当に助かるんだけどなぁ」とメチャメチャ褒めてくれるんです。「こうやって当たるだけで、そんな風に言ってもらえるんだ。そして、人のためにもなれるんだ」となって、ラグビー部に入ることにしたんです。

ラグビーをやったのは高校3年間でしたけど、今になればなるほど、ラグビーをやってて本当によかったなと感じています。今の仕事にも通じること、役立つことを山ほど教えてもらっていたなと。

試合で、長い時間攻防が続いていると、走りっぱなしですから、とにかくしんどい…。でも、グラウンドの向こうで味方がつかまっている。足が動かない。何なら、その場でへたり込みたい。でも、助けに行く。絶望的にしんどい中で、人のために何かをする。すると、不思議なくらい、そこでいいことがあるんです。つかまっている味方をサポートしてボールをバックスに出し、それが決定的なトライになったり。敵が焦って反則をしてこちらがペナルティーをもらえたり。そこの「しんどい…。でも、ここだ!!」という感覚が染みついているのは、今の仕事でもすごく役立ってるなと。

「アメトーーク!」でも役立つ“ラグビーあたま”

あと、1チーム15人という大人数でのチームプレーですから。「アメトーーク!」(テレビ朝日系)とかに出してもらっても感じるんですけど、結局は足並みがそろってないと、勝てないんですよね。特に、ケンドーコバヤシさん。自分と同じようにラグビーをやってきた人だから、より僕がそう感じるのかもしれませんけど、明らかに“パスをしてみんなで試合をする”という感覚をお持ちなんですよね。そういう“プレー”は間違いなくウケるんです。

大事なのは、その番組がウケること。番組というチームが勝つこと。自分が1回だけ独走しても、結果、チームが50対10で負けたら仕方がない。勝つために自分が何をすべきか。周りに対して何ができるのか。それって、ホント、ラグビーなんですよね。

もともと、僕、ラグビーの時は(フォワードの中心となる)ナンバーエイトというポジションで、自分でボールを持ってゴリゴリ行っても、ま、悪くないポジションだったんです。だからこそ、我を貫きすぎて失敗したこともありましたし、同時に、我をおさえてチームが勝ってもっと大きな喜びを得るという考え方も勉強したんです。今でも、番組で我が出そうになる時もある。そんな時は、今一度、周りを見回して冷静になって、みんなで勝つことを考えるようにするんです。“ラグビーあたま”みたいなところが、僕の場合、すごく仕事に役立っています。

今度、1月17日に大阪・なんばグランド花月で日本代表の選手も出演する「ラグビー新喜劇」というのがあるんです。過去、何回もやっている企画なんですけど、芸人とラグビー選手が同じ舞台でコメディーをやると。これがね、選手の人たち、メチャメチャ笑いをとるんです。「チームの中で自分が何をやったらいいのか」という能力にこれでもかと長けた人たちばかりですから。全く畑違いながら、そういう部分でも、ラグビーのすごさを感じてもらえたらうれしいですね。少なくとも、うちの相方の内間(政成)よりは、皆さん、確実に笑いをとってますから(笑)。

ラグビーを“一発屋”にしないために

昨年からのラグビーの盛り上がり、当然、強く感じています。こうやって、今までになかった取材も受けてますしね!!

ま、いい面とそうでない面と両方ある言葉ですけど、間違いなく、ラグビーは“流行り”ましたよね。自分に置き換えて例えると、今までほとんどの人が自分を知らなかったのに、「M-1グランプリ」に出たことでガラッと環境が変わっていった。さらに、「エンタの神様」(日本テレビ系)でフランチェンというキャラクターをやって、ま、それまでに比べると、ドンと多くの人に顔を知ってもらえるようになったんです。同じにしたら失礼ですけど、ある日、たくさんの人から見られるようになったということにおいては、今のラグビーみたいだったなと。

そこで、僕が何を思ったかというと「この注目を失いたくない。人気を失いたくない。収入を失いたくない」ということだったんです。本来「おもしろいものが作りたい。笑ってもらいたい」ということでやってきて、その結果、見ていただけるようになったのに、目的がズレるというか、変わっちゃったんです。気持ちが迷子になるというか、どこにどう向かっているのか、自分でも分からなくなりました。

ラグビー日本代表も、芸人で言ったら、売れるために戦ったわけじゃない。勝つために、強くなるために、努力をして、結果、注目されるようになった。だから、エラそうなことを言うつもりは全くないですけど、売れるとか、注目されるなんて結果は自分でコントロールできるものではない。自分がコントロールできるのは、自分だけ。おもしろいネタを考えるとか、厳しい練習をするとか。そこだけですもんね。そこを貫いて、結果、ラグビーがさらに盛り上がる。芸人で言うと、悪い意味で、一発屋にしない。そんな方向にラグビーが進んで行ってくれたらいいなと、一ファンとして強く思います。

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あと、僕が「ラグビー、大好き!!ラグビー、最高!!」と言ったら、芸人という仕事をしていることで、ありがたいお話、少しは皆さんに届くわけじゃないですか。こういうインタビューとかで。この言葉を、例えば「B'z」の稲葉さんが言ったら、もちろん僕なんか比較にならないくらい、多くの人に届く。だからこそ、自分というスピーカーを大きくして、よりラグビーを発信していくために、もっと、もっと、もっと、売れなきゃなと(笑)。

芸人としての“恩返し”を

1つの目標として、ラグビーのワールドカップが日本で開催される2019年までに1段階でも売れておきたいというのもありますし、せっかくなんで、またラグビーをやりたいなとも思っているんです。というのは、19年に向けて、吉本のラグビー芸人や、他事務所の「サンドイッチマン」さんらにも入ってもらって、芸人ラグビーチームができないかなと。

もちろん、前座の前座でも、エキシビジョンマッチみたいに芸人チーム対女子の高校日本代表が試合をするとか。同じくラグビー経験者の「ブラックマヨネーズ」小杉(竜一)さんとかと、そんな話をしてるんです。

試合で、小杉さんがメチャメチャいいパスとか出したらおもしろいじゃないですか(笑)。「サンドイッチマン」さんが足の速い女子の代表を必死に止めたりしたら盛り上がるじゃないですか。逆に、本物の選手が、僕らをスイスイと抜いて行くという光景も、そっちはそっちで楽しんでもらえるだろうし。結果、全ては「ラグビーっておもしろい」「ラグビー、すごい!!」になってくれたらと。それだけなんですけどね。

もうみんなアラフォーのオッチャンです。ただ、人前でそんなことをやらせてもらうのに恥ずかしくないよう、体は作っておかないといけないので、最近、走り始めました。

また、この前も小杉さんや他の芸人とでラグビーの練習をしたんです。いきなりは危ないのでタックルはナシで、相手に手でタッチしたら止まるタッチフットというのを代々木公園でやったんです。ただね、今は、みんな、ビックリするほど動けないです…。だから、謎のルールが生まれまして。“本気で走ったら、ペナルティー”という(笑)。誰かが本気で走ったら、止める側も本気で走らないといけない。となると、一瞬でみんながバテて、試合にならない。ま、そこはみんな芸人ですから。空気を読みながら、最大、7割くらいのスピードで、試合を成立させてました。トレーニングしようと集まったのに、本気では走らない。この時点で、始まりからすでに愚かなんですけどね(苦笑)。

…こんな状態で、より一層、何を言うのもおこがましいんですけど、日本代表は世界一という限界を超えたハードワークをやりきって、見事な結果を残しました。もちろん、アスリートのようなハイレベルなことはできないにしても、オッチャンの体で、そして、芸人という立場で、ラグビーのために頑張れることはやりきりたいと思うんです。少しでも、恩返しをするために。

■真栄田賢(まえだ・けん)

1976年3月1日生まれ。沖縄県出身。高校時代、ラグビーに打ち込み、沖縄県代表として国体にも出場する。琉球大学で相方の内間政成と出会い、ともにコントなどに取り組む。2003年に上京して吉本興業所属となり、05年に正式にコンビ結成。10年に「M-1グランプリ」で準優勝し、一躍注目を集める。現在、朝日放送「探偵!ナイトスクープ」などに出演中。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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