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高校野球好きのための都市対抗の楽しみ方 2015年夏、清宮幸太郎と連続アーチを架けた打者は?

楊順行スポーツライター
(写真:rei125/イメージマート)

 いきなり質問である。清宮幸太郎(日本ハム)が早稲田実の1年だった2015年夏、三番・清宮のあとの四番を打った選手をご記憶か。答えは加藤雅樹だ。早実がベスト4まで進み、清宮フィーバーが起こったこの大会。東海大甲府との3回戦で、清宮と二者連続アーチを架けた打者だ。早稲田大を経て昨年、東京ガスに入社。1年目は社会人投手の変化球のキレに戸惑ったが、東京2次予選の第1代表決定戦で満塁弾を放つなど、今季はそのポテンシャルを発揮し、都市対抗第4日のミキハウス戦で指名打者としてスタメン出場を果たした。

 そして……第5日の今日は、ちょっとできすぎというくらい豪華なカードである。直近5大会の優勝チームのうち、推薦出場で開幕戦に組まれたHonda以外の4チームがまとめて登場するのだ。順に、19年優勝のJFE東日本、18年の大阪ガス、そして17年のNTT東日本と16年のトヨタ自動車は、初戦で激突するから、このゾーンは激戦区だ。

出場選手の出身高校トップは……

 大会を主催する毎日新聞に、興味深い記事があった。出場32チームの出身高校を分析したもので、トップは大阪桐蔭の20人。続くのが18人の東海大相模で、近年に全国制覇がある強豪が1、2位を占めた。むろん、優勝経験者も多い。東西の横綱に次いでは14人の中京大中京、さらに13人で履正社、明徳義塾、広陵と続く。

 JFE東日本の峯本匠は、最大勢力の大阪桐蔭出身。ルーキーだった19年の都市対抗では、17打数7安打4打点の活躍で若獅子賞を獲得し、優勝に大貢献した。ことに東芝との準決勝では、1点を追う10回裏2死満塁から逆転サヨナラ打。その日はちょうど落合成紀監督の誕生日で、ヒーローインタビューでは『ハッピーバースデー』を歌うなど、ノリもいい。

 もっとも、それが行きすぎる? こともある。高校時代の13年センバツ、県岐阜商との3回戦は1点を追う9回裏、2死からヒットで出て二塁まで進んだ峯本。後続のヒットで同点のホームを狙うも、捕手への体当たりが守備妨害と取られ、そのまま試合終了となってしまった。ただ、本人の名誉のために付け加えると、3年になった翌14年夏は、二番打者として22打数11安打の大当たりで優勝している。

 その夏、大阪桐蔭と準決勝で対戦したのが敦賀気比で、気比のマスクをかぶっていた岡田耕太はいま、JFEのチームメイト。19年の都市対抗では、岡田もやはりルーキーながら主力だった。ちなみに、14年夏の甲子園準決勝は15対9で桐蔭が大勝し、峯本はホームラン含む3安打3打点と大活躍している。社会人になったいま、2人はそのときの思い出話でもするのだろうか。

 また、大阪ガスのサウスポー・田中誠也は、その優勝した大阪桐蔭の2年生で、現Honda鈴鹿・福島孝輔と左右の二枚看板だった。大阪ガスではさらに、やはり大阪桐蔭出身のルーキー・三井健右もスタメンに定着している。

 ほかにも、トヨタ自動車の河合完治は、09年夏の甲子園で優勝した中京大中京の三塁手。日本文理との決勝の9回、捕れば優勝という三塁ファウルフライを捕りきれず、それが結果的に、6点リードから1点差まで追い上げられるという名勝負を演出することになる。同じトヨタの徳本健太朗は、14年に優勝した龍谷大平安のトップバッターだった。

 どうです? 都市対抗はやっぱり、高校野球好きにとっても見どころたっぷりでしょう? ぜひオンライン中継をご覧あれ。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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