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北朝鮮お嬢様大学生が銅を密輸…普通なら重罪もなぜか“無罪放免

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央テレビ)

北朝鮮で、ある「お嬢様」大学生のご乱行が問題になったが、意外な幕切れとなったという。

デイリーNKの平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は4日、「平安南道(ピョンアンナムド)のある師範大学に通うある女子大生が、金儲けのため手当たり次第に非社会主義行為をしていたが、7月末になって摘発され、先月中旬には大学で開かれた思想闘争会議で吊し上げられた」と伝えた。

情報筋によると、この大学生は経済的に厳しい状況ではないにもかかわらず、密かに非社会主義行為を働いていたところ、彼女を良く思わない町の住民により通報され安全部(警察)の取り締りに遭ったという。

学生は黄海南道(ファンヘナムド)のある製錬所から横流しされた銅を、国外に密輸する裏稼業にも加担していた。この違法行為に関する通報を受けた安全部は、密輸業者の家を張り込んでいたところに大学生が現われ、逮捕に至ったという。

その後、安全部が大学生の家を家宅捜索したところ、韓流映画とドラマ、音楽、小説などが記録されたUSBメモリやSDカード、CDなどが発見された。同大学生は安全部の調査で「銅もカネになるが、南朝鮮(韓国)映像を売って得る利潤の方がはるかに大きかった」と供述したという。

(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

北朝鮮において、金塊をはじめ金属類の横流しや密輸は、国家財産の横領として厳しく罰せられる。1990年代の大飢饉「苦難の行軍」のときには、食べ物を買うカネを得ようと銅の電線類を盗んだ人々が、容赦なく処刑されている。

金属の密輸に加え、韓流コンテンツの流布まで行っていたとなれば、北朝鮮当局の基準では大悪人であり、もはや重罪は確定的だ。思想闘争会議での吊し上げなど重罰の前の「余興」にすぎない。

一般的にこのような場合には、重い法的処罰が下されるが、彼女はなんと、ほとんど無罪放免も同然で済まされた。高位職にある父親と親戚たちの庇護により、特別な法的処罰を受けることはなかったという。

これほどあからさまな非社会主義行為が見逃されたということは、彼女の親(あるいは親戚)は、金正恩総書記の側近レベルの幹部である可能性が高い。実際、過去にも韓流コンテンツの視聴で逮捕された高官の孫たちが、取り調べ中に釈放されたとする情報もあった。

情報筋は「上層部から『助けてやれ』という電話がかかってきて、非社会主義取締班は一言も抗弁できないまま法的処分を見送った」と話している。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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