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隣の国の大統領の支持率が急上昇している理由

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
新型コロナウイルスへの対応で支持率アップの文在寅大統領(出所:青瓦台)

 隣国・韓国の文在寅大統領の支持率が急上昇している。

 世論調査会社「リアルメーター」が実施してきた大統領の支持率は2月の第4週まで「支持」46.1%に対して「不支持」50.7%と、4.6%ポイントも「不支持」が上回っていた。 

 この傾向は3月の第2週(「支持」47.9%、「不支持」48.7%)まで続いていたが、第3週から状況が一変し、「支持」49.3%対「不支持」47.9%と、1.4ポイントの差ながら「支持」が「不支持」を逆転した。

 文大統領の支持率は3月の第4週の調査では52.6%(「不支持」44.1%)と、久しぶりに50%を上回り、直近の4月の第1週の調査(3月30〜4月3日)ではさらに1.1ポイント上昇し、53.7%を記録し、「不支持」43.2%を10ポイントも上回った。

 支持率上昇の要因はパンデミック(世界的大流行)となった新型コロナウイルス問題への積極果敢な取り組みが評価されていることにあるようだ。

 韓国は3月中旬までは中国、イタリア、イランに次いで世界で4番目に感染者が多かったが、現在は16番目までランクを下げ、2月29日には一日の感染者としては最多の916人を確認した感染者も3月中旬から100人台に減少し、4月は1日の101人を除くと、すべて二桁となり、直近の6日、7日はいずれも47人に留まった。

 集団感染を引き起こし、2月27日には一日で最多の741人の感染者を確認した大邱市は昨日(6日)も13人で留まり、また大邱市に続いて感染者の多い慶尚北道も昨日は1人しか確認されず、どちらも終息に向かいつつある。

 文在寅政権は4月4日に「社会的な距離」を保つ期間を4月19日まで2週間延長することを発表し、外出や集会の自粛などさらなる自制と忍耐を国民に求めたが、目標としてこの期間に一日の感染者数を50人以下に減少させることを約束していた。早くもこの2日間、一日の感染者がいずれも47人に留まっていたことでその展望も開きつつある。

 文大統領が「新型コロナ対策」で評価されているもう一つの理由は、自ら先頭に立って対策に奔走していることが挙げられている。

 新型コロナウイルスが武漢から帰国した人によって国内で感染し、感染者第1号が発生したのは日本よりも4日も遅い、1月20日であるが、6日後の26日に2人目の感染者が確認されると、文大統領は疾病管理本部部長及び国立中央医療委員長と電話会談をし、28日には新型コロナウイルス感染症対応現場である国立中央医療院を訪問し、30日には青瓦台(大統領府)で新型コロナウイルス感染症対応総合点検会議を主宰した。

             ▲武漢からの帰国者の隔離施設を訪問

 翌2月もコロナ対策に時間を割き、4日に対策閣僚会議を開き、5日にソウル市内の新型コロナウイルス感染症対応保険所を訪問し、9日には武漢からチャーター便で帰国した隔離者の臨時生活所(忠清南道牙山市)を訪問し、職員らを激励していた。また、12日にはコロナウイルス感染で影響を受けているソウルの南大門市場を視察し、市場関係者らと懇談会を開く一方で、13日には大韓商工会議所を訪れ、コロナ対応経済界懇談会に出席していた。

 韓国の感染者は2月14日の時点では日本の29人に対して28人と、ほとんど変わらなかったが、一週間後の21日にも再度対応関連緊急会議(午前)を開き、午後は市内の百貨店で内需・消費業界との懇談会(観光、ホテル、講演行事関連団体が出席)に出席していた。さらに2日後の23日も日曜休日であったが、政府庁舎で行われたコロナ政府対策会議にも出席していた。

 文大統領は大邱の新天地教会で集団感染が発生し、21日50人、22日70人、23日148人と、感染者が急増した23日には危機警報を最高段階の「深刻」に格上げし、「感染者を最大限迅速に確認し、早期治療するのは言うまでもなく、拡散を遮断しなければならない。政府と自治体、防疫当局と医療陣、強いては地域住民と全国民が混然一体となって総力を挙げて対応しなければならない」と国民向け談話を発表し、国民に対していち早く集団行事や行為を室内だけでなく、屋外でも自制するよう求めた。

               ▲集団感染の大邱を訪問

 談話発表から2日後の25日には自ら大邱に入り、丁世均総理を中央災難安全対策本部長として大邱に常駐させ、沈静化するまで現場で陣頭指揮を執らせる措置まで取った。ソウルに戻ると、与野党の首脳に会談を呼び掛け、28日に青瓦台で与野党首脳らとの会談に臨んだ。

 先月も、マスク不足が問題になると、京畿度・平澤にあるマスク生産工場を訪問(6日)し、従業員らを激励する一方で、大邱の感染者が収容されている忠清南道にある生活治療センターを訪問(12日)するなど精力的に動き回っていた。文大統領の陣頭指揮もあってマスクは3月9日から国が公的に直接供給するようになり、国民は一人につき、毎週2枚購入できるようになった。

               ▲給与を4か月間30%カット

 文大統領はまた、国民に自制を求め、苦痛を強いる以上、国民と痛みを分かち合う必要があるとの考えから3月17日には大統領以下総理、長官(閣僚)、次官級以上の公務員らの給与30%を4か月間、カットし、国に献納する措置を取った。ちなみに文大統領の年俸は2億2千5百万ウォン(100万ウォン=89966日本円)、総理は1億7千4百万、閣僚は1億2千8百万ウォン、ちなみに大統領に歩調を合わせた大邱市長の給与は1億2千万ウォンである。

 韓国は今、総選挙の最中にあり与党の「共に民主党」と最大野党の「未来統合党」が今月15日の投票日に向け競っているが、下馬評では与党は苦戦を強いられており、文大統領の支持率上昇が必ずしも与党の支持率には結びついていないようだ。仮に与党が敗北し、国会で第1党の座を野党に奪われれば、文大統領の支持率は再び下落するだろう。

(参考資料:韓国の「コロナ感染」は収束に向かう? 2週間内に一日の感染者を50人以下に!

 

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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